- 清水
- これ社長室なの? これで。
- 糸井
- うん。でも、ほとんどミーティングルームだね。
- 清水
- あ、そうなってるんだ。
- 糸井
- ぼくの入ったミーティングは
ここで行われるみたいなことが多い。
で、行く場所がないときはここにいれば。
でも、それを狙って訪ねてくる人がいたりとか(笑)。
- 清水
- いいね、重厚感がなくて(笑)。風通しよさそう。
この会社、もう70人になったって?
- 糸井
- 社員は70何人。
- 清水
- バイト入れると100人以上ってこと?
- 糸井
- そうだね。こんど社員旅行に行くんだけど。
- 清水
- 100人以上でどうやるの?幹事大変ですね。
- 糸井
- そういうの、なんとかなるの、うちは。
だって旅の栞とか、もう1冊の単行本みたいに
なってるらしいよ。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- 本当に(笑)。バカだから‥‥
- 清水
- バス貸し切りってことよね。
- 糸井
- うん。仕事をする労力と同じものを遊びにかけるから、
逆にいうと仕事の練習にもなるんで。
清水さんだって、テレビで寂聴さんが
何か話してるのを見てて、
いいなあと思ったりするのは、
仕事か遊びかわかんないでしょう?(笑)
- 清水
- そうだね、おいしいなあと(笑)。
- 糸井
- おいしいなって食べてるわけだから(笑)、
多分それと同じようなことで。
ぼくもね、清水さんについては、
言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
清水さんのステージを見てる歴って俺、
ものすごい長いからね。
- 清水
- うんうん。
ジァン・ジァン(渋谷にあった小劇場)のときから
見にきてくれてましたもんね。
- 糸井
- アッコ(矢野顕子)ちゃんとは案外ね、
しゃべってることあるんだよ。
人生の深淵について語ったりしてるんだ、たまには。
- 清水
- へぇー。文字になってないだけで。
- 糸井
- うん。
例えば一緒に気仙沼から帰ってくるとき、俺が寝ちゃうから、
うちのマネージャーは縦に席取ってくれるの。
両方の隣が空いてる状態で。
で、アッコちゃんは寝ない人らしくて、
「ちょっといい?」って言ってきて。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- 隣に来て、普通にちゃんとした話をするんだ。
それこそ、音楽の技術に絡むようなタイプの話とかね。
- 清水
- そんなことも話すの?
- 糸井
- だから、例えば清水さんだったらすぐわかると思うけど、
上原ひろみさんと共演したあとに足を痛めた話って知ってる?
- 清水
- 知らないです。なんで足なの?
ペダル踏み過ぎってこと?
- 糸井
- ペダルをガンガンものすごい、普段使わないぐらいに踏むから。
それで、足の筋肉がおかしくなっちゃったみたいな。
- 清水
- カッコいい(笑)。
やっぱり言えないね、素人には。そのコメント(笑)。
- 糸井
- すごいだろ?(笑)
そんなことから、それはどういうことなのか
聞いてったりとかさ、あるいは戦略じゃないんだけど、
同じことやってるとつまんないから、
こういうこと考えてるだとか、
急に「あの本読んだ」みたいなことだとか。
- 清水
- へぇー、脈絡なく。
- 糸井
- うん。こう何ていうんだろうな、
ビジネスというよりは事業家として
発想してること、やっぱりあるよね。
“ビジネス”って言うと、誤解されがちなんだけどね。
- 清水
- うんうん、お金儲けじゃなくてね。
- 糸井
- うん。例えばサッカーやってる人が、
サッカー界をどうしていくかって
考えるじゃないですか。このチームをどう立て直すかとか。
それと同じようなことを、アッコちゃんの中では
ずいぶんと考えてるよね。
みんなはこのぐらいに思ってるだろうけど、
そんなものじゃ矢野顕子はできないよってことがよくわかるよ。
それはきっとね、清水さんから見ても
同じなんだと思うけど。
- 清水
- うんうん。とにかく汚れない人ですよね、矢野さんって。
上手に話すっていうか。
- 糸井
- 面白いなあ。
- 清水
- 意外と、石川さゆりさんと何回かやってるけど、
『天城越え』みたいなのは絶対、やらないもんね。
自分の世界観じゃないものからは、
上手に身を離すというか。
- 糸井
- そうだね。
たとえば、ボルネオのジャングルに入ったときに、
「このサルに、こういうことしちゃいけませんよ」
みたいなことは、しないよね。
- 清水
- 野性的過ぎる、たとえが(笑)。
- 糸井
- ウィ~ウィ~!(猿の鳴き真似) みたいなさ(笑)。
ムカデに刺されたらこうしましょうみたいな
手段は考えてますよね、やっぱりね。
それはやっぱりね、中学生から…いわば、
1人で生きてきたところを持ってる人だから。
- 清水
- あ、中学でしたっけ。
- 糸井
- いや、高校からです。高校からだけど、
その前が俺は絶対もうすでにあったと思う。
- 清水
- ああ。でも、中学のときに家帰って自分の世界に‥‥
宿題もやって、勉強もして、
自分の世界に没頭して詩の世界に入っていくとか、
そういう時間があったって、本に書いてありましたね。
- 糸井
- そうだと思うよ。だから、要するに親と子って、
いつどう離れるんだろうって一番難しい問題だけど、
アッコちゃんのとこは両方がもう
わかってて離れた感じがするから。
- 清水
- 親もね。
- 糸井
- 清水さんは、大学の勉強はしたの?
卒業できるぐらい。
- 清水
- うん。でも、家政科だから、
うちの田舎って短大とか大学行く以上は、
教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。
親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
- 本当とにかくうちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
「まあまあ、もう今年でやめますから」って30年もやって(笑)。
- 糸井
- 森山良子さんを見てるとき、
清水ミチコを思い浮かべるように(笑)‥‥
- 清水
- なっちゃうじゃないかと(笑)。
(つづきます)