- 清水
-
不思議と、「必ずウケる人」っていうのがあるんですよ。
別に桃井さんのこと強調してないんだけど、
普通にモノマネしてもすごいウケるのよね。
あと、男の人がやる矢沢永吉さん。すごくおかしいね。
憧れがどんなに強くても、そうじゃない人でも、
おかしくなるの。不思議だなぁと思って。
- 糸井
-
それは、幼稚園に行く子どものいるお母さんが
子どものハンカチに、クマとかウサギとか
目印に描くじゃない?あれでいう、パンダだね。
- 清水
- 何それ(笑)。
- 糸井
-
パンダはものすごく記号的じゃない?(笑)。
ウサギはまあ耳を描けばわかるんだけど、
ネコとクマを描かれても違いがわからない。
でも、パンダは、わかりやすくパンダじゃない(笑)。
永ちゃんって、超パンダなんだと思う。
桃井かおりも(笑)。
- 清水
-
桃井さんも超パンダなんだ(笑)。人が集まるしね。
そうか。だから、おかしいのかな。
- 糸井
-
だってさ、永ちゃんの面白さって
とんでもないよ、やっぱり。

- 清水
-
へぇ、そう。
面白さって、笑うほうと深みの二つあるけど、
どっちの?
- 糸井
-
結局それって、一つのものだよ。
つまりね、永ちゃんは二の線じゃないんだよ、大もとは。
ひょうきんな子だったらしいんだ、やっぱり。
- 清水
- え、昔?『成りあがり』読むと違うけど(笑)。
- 糸井
-
だから、ちょっとかいつまんでんだよ、
あれは(笑)。
- 清水
- 書いた人が言うんだから間違いないか(笑)。
- 糸井
-
うん。あのね、今にして思えばやっぱり、
ジョン・レノンもそうなんだ。
それが音楽に行ったからビートルズになったわけで、
仮にセールスマンやってたとしても、
ちょっとおかしいことやってると思うよ、
ジョン・レノンは。
永ちゃんはひょうきんな子なの。
で、ひょうきんな子が二の線もやれる‥‥
そのレパートリーに入ってるんだよ。
だから、できるんです。
- 清水
- そうかな。じゃあ、笑っても全然平気なのかな。
- 糸井
- そこのあたりは、あまりにも本物なんで(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
-
「それ、おかしい?」って聞きたくなるところが、
あまりにも本物性で(笑)。
俺はね、最近また永ちゃんのことが
ものすごく好きになったんだけど、
お互いに、ないものを持ってる人って
認識をしてるらしいんだよ、向こうも。
いつもひょいと何かの拍子に電話かけてくるんだけど、
暮れにも急に電話があって。
きっかけは、昔うちで作った『Say Hello!』っていう本。
「ずっと持ってたけど、今読んだ。
糸井、面白いことしてるねえ」って。
…何年前の本だよ(笑)。
もうさ、14〜5年前の本を今見て、電話したくなったって(笑)。
- 清水
-
(笑)。
すごいうれしいですね。少年っぽい。
- 糸井
-
で、それが素直に出てきて、
「思えばおまえのやってることは、そういうことが多くて、
俺にはそういう優しさとかってのが、ないのね」って。
- 清水
- そんなことないですよね、きっと。
- 糸井
-
そう。で、「それは違うよ。
同じものをこっちから見てるかあっちから見てるかってだけで、
俺は永ちゃんに優しさをいっぱい感じるよ」って言うと、
「そうかな。うれしいよ、それは」って言ってて。
- 清水
- へぇー、いいですねぇ。

- 糸井
-
永ちゃんは、ボスの役割をしてるボスと、
それから、ときにはしもべの役割をしたり、
ただの劣等生の役割をしたり、全部してるんです。
- 清水
- そうか。
- 糸井
-
それ大体、それを全部大体俺は見てるんで、
相変わらず、業界ではもうトップ中のトップみたいな、
別格みたいになっちゃったけど、全然同じだなと思って。
また今年、じーっと見てようかなと。
『成りあがり』って本を作るために出会って、
もう長いんだけど。
- 清水
-
あ、本ありきで出会ったの?
で、どんどん好きになってったんだ。
- 糸井
-
キャロルとか見てたから、カッコいいなあと思ってて。
カッコいいっていうのと面白いなっていうのは、
当時から一緒だったのよ。
だって、今さらハンブルク時代のビートルズの
コピーバンドやってるみたいに思えたから。
- 清水
-
ああいうブームってほら、本当は脈々とあるじゃないですか。
不良が好きっていうのかな。
さすがに今の若い子たちにはないのかな。
- 糸井
-
うん、日本にはなかったよ。
キャロルがあって、ダウンタウンブギウギバンドがあった。
で、その後に『ツッパリHigh School Rock’n Roll』だとか。
あとはどんどん、キャロルに上積みしていったものです。
でも、世界的に見ると、若い頃のビートルズがやってたわけ。
若くて不良っぽいっていう人がモテたのは脈々とあると思うよ。
サッカー部のやつのほうが読書クラブのやつよりモテますよ。
- 清水
- そうだね、そりゃ(笑)。
- 糸井
-
モテない人は、つれないどころか、
大サービスしてるのに「しつこい」って言われたり(笑)。
- 清水
-
不条理よね(笑)。
永ちゃんにあって糸井さんにないものって何だと思いますか。

- 糸井
-
永ちゃんにあってぼくにないものねえ、うーん‥‥
量的にものすごく多いんだけど、責任感じゃないかな。
- 清水
- へぇー。それこそ、同じ社長としても?
- 糸井
-
学んでますよ、ぼくは。永ちゃんから学んでますよ(笑)。
やれるかやれないかのときに、
どのくらい本気になれるかとか、遮二無二走れるかとか、
それだけで言うなら‥‥そういう人はいっぱいいるからなあ‥‥。
あ、生まれつきっていうか、ボスザルとして生まれたサルと、
そうでもないサルとがいるんだよ。
そうでもないサルは、「ボス、すげえっすぅ!」みたいな
引き立て役(笑)。
- 清水
-
そうか。成りあがり、ボスだったんだ(笑)。
サル山にいそうですもんね(笑)。
- 糸井
-
チンパンジーの戦争のドキュメンタリーがあって、ボス争いがあるんだよ。
ボスっていうのを、何を基準に決めるんだろうって思わない?
どうやら、喧嘩じゃないんだよ。
- 清水
-
喧嘩じゃないの?
それ以外に何かあるの?
- 糸井
-
教えましょう。パフォーマンスなのよ。
つまり、殴られたパンチの強さとか関係ないんだよ。
- 清水
- やろうと思ったらこれだけできるよっていう。
- 糸井
-
そう、パフォーマンス(笑)。で、それを見てからますます、
永ちゃんのステージとか見てると(笑)、これは、もうできない。
大人数の人をひれ伏すようなチンパンジーたちはいっぱいいるよ、
芸能の世界にだってね。
でも、やっぱり永ちゃんのボスザル感は、すごいよね。
- 清水
-
ユーミンさんが1回、何かのインタビューで、
どうして矢沢永吉さんは自分が毎日のようにやるパフォーマンスに
飽きてないのか知りたいって、本気で言ってたけど、
どうなさってると思います?
いつもどこ行っても満員でワーワー、じゃないですか。
どんなバンドも、それにちょっと飽きてしまう。
- 糸井
-
「それは矢沢が真面目だから」。
(矢沢さんの真似をしながら)
- 清水
-
(笑)
- 糸井
-
「矢沢、手は抜かない」。
多分そういうことだと思うよ。
- 清水
-
やめてもらっていいですか(笑)。
好きなんですね。
- 糸井
-
手を抜けないんだよ、多分。
抜いたら矢沢じゃなくなるって。
だから、矢沢は矢沢を全うするんですよ。
- 清水
- そうか。それはみんなのためでもあるし。
- 糸井
-
うん。さっき「責任」って言ったのはそういうようなことで、
それのちっちゃいやつはみんなが持ってるわけです。
例えば清水さんの最初の武道館だって、大勢が集まって。
- 清水
- あ、そうです、そうです。
- 糸井
-
あのときに、「私がぐずぐずしてらんない」っていうのは
きっとあったじゃないですか。なくはないですよね?
- 清水
-
そうそうそう(笑)。
あと糸井さんが、お客さんって1人を見たいんだと言ってくれて、
そうかなと思って1人でやってみたら、
やっぱり「あ、これ、いただいた」って感じがして(笑)。
- 糸井
- すごかったでしょう?(笑)
- 清水
- うん。快感でしたね。
- 糸井
-
やっぱり、「ここは私がちゃんとしないといけない」
みたいなのは、みんなちょっとずつは持ってるんですよね。
- 清水
-
そうか。そういえばその武道館、
このあいだ森山良子さんと一緒にやったんですけど、
リハーサルスタジオに行って
うちのスタッフがエレベーターに乗ったら、
「何階?」って言ってくれたのが永ちゃんで、めっちゃビックリしたって(笑)。
やっぱりいい人なんですね。そういう方なんですね。
- 糸井
-
そういう方なんです、うん。
だから、矢沢永吉としてできてる、
みんなが思ってるものを壊すのは
自分であってはいけないって気持ちがあるっていうか。
分裂してるんですよ、ある意味ではね。
みんなが思ってる矢沢永吉像と自分というのは、
やっぱり離れてると思うよ。
- 清水
- そうでしょうね。
- 糸井
- それはイチローでも何でもみんなそうですよ、とんでもない人たちは。
- 清水
- そうか、マウンドに出るときは。
- 糸井
- うん。清水ミチコはどうなんですか(笑)。
- 清水
-
私、そのままかもしれない(笑)。
できるだけそのままでいようと思うしね。
- 糸井
-
ふく人はそのままの人が多いね。
プッて自分で言ったことでふく人は、松本人志と(笑)‥‥。
- 清水
-
そうかも。だって、その人になるんだもんね、舞台上で(笑)。
自分で笑っちゃう(笑)
- 糸井
- その2人はふくね、清水ミチコと(笑)。
- 清水
- 幸せ(笑)。
- 糸井
-
それ興味ある部分なんですよね。
だから、ぼくは永ちゃんに対しては、
ずっと絶対に下につこうっていう、もう決意のように持ってますね。
もうすごい楽しいの、そのボスザルを見るのが。
そういうふうに思わせてくれる人って、
やっぱりそんなにいるもんじゃないんでね。
親しくすることもできるし、見上げることもできるしっていうのは、ありがたいことだよね。
- 清水
-
そうですね。
ちょいちょい電話かかってくるっていう
関係もいいですね、また。
- 糸井
-
ちょいちょいじゃないんだよ。何か節目なんだよ。
これからアメリカ行くんだみたいなときだとか、
こうしようと思うんだってときにかかってきて。
それはずっと意識してるからだって本人は説明するんだけど、謎だよね。

- 清水
-
矢沢さんと普通にしゃべることはできます?
ビビらずに、お電話でも対面しても。
- 糸井
- うん、それは普通。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
-
だから、俺は永ちゃんには、
もう負けてる場所にいるからっていうのも言えるし。
だから、そこは楽ですよね。
清水さんは、アッコちゃんと普通にやれるじゃないですか。
- 清水
-
いや、そうでもないです、
やっぱり(笑)。
- 糸井
- 本当?
- 清水
-
嫌われたくないっていうのがすごい強過ぎて、
よく噛みます、本当に(笑)。
(つづきます)
