感激団、今回は『自虐の詩』です。 マンガも映画も! ‥‥あ、なんか、参加者が、 年齢層が高いぞ。 ぼくは41歳です。 |
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イエーイ! |
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42歳。えへへ。 |
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イエーイ! |
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山下です。45です。 |
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山下さん、45になったのね! |
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ええ。 |
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そうか‥‥。 |
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わたしは39です。 |
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すいません。32です。 |
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若いといってもこれだ。 |
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スガノは山下さんの奥さんと 同い年なのね。 |
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なぜ知ってるんですか! |
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ゆきえさんだっけ。 |
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『自虐の詩』の主人公と 同じ名前ですね、奥さん。 |
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ちがいます! 妻は、 み、み、み、みきえです! |
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ああ、すみません。 |
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収拾がつきません。 |
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収拾がつかないといえば この座談会を始めようと集まったら りかさんがいきなりコーヒーを テーブルにババーンとこぼして なんか『自虐の詩』にぴったりな 始まり方になりました。 |
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なってしまいました。 |
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なってしまいましたが! |
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コーヒーくさーい。 |
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あんたのせいだ。 |
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超コーヒーくさーい。 |
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それはもういいです。 さあ『自虐の詩』、 もともと原作が好きだった人や 映画で初めて触れた人や、 いろいろいると思うんですが、 僕は原作を大分前に読んでまして、 大好きなマンガなんです。 |
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ふ〜ん。 |
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で、今回、映画版を見てきました。 りかさんもそうでしょう。 |
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はい。 原作大好きです。 |
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スガノは? |
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私は人から薦められて 読もうとしたんですけど、 その薦めた人の薦め方が、 上手じゃなくって、 読むのをやめちゃったんです。 |
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なんで? どんなふうに薦められたの? |
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あの‥‥、いやあ、ずいぶんむかし、 男の子からね、 「男っていうのはこういうもんだから、 おまえもこれで勉強したほうがいいぞ」 (笑)。 |
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ハハハ‥‥。うわあ。 |
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すごいわー。 |
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‥‥薦め方、大切ですよね。 |
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ですよね〜。で、私、 「えっ」と思いながら、 ちょっと読んだんですけど、 その上から目線の薦め方が印象が強すぎて、 マンガが素晴らしいのは 分かったんですけど、 そのまま封印してしまいました。 記憶から消し去ってしまったんです。 |
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なんとまあ。 で、今回は? |
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マンガを読まずに映画を見ました。 |
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で、マンガは読んだんですか。 |
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まだマンガ、読んでないです。 |
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なるほど。山下さんは。 |
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僕は、業田良家さんっていう方は、 多分、デビュー作かなんかの 『ゴーダくん』っていうのを読んでて。 それ以外全然知らず、 『自虐の詩』のことも 失礼ながら存じ上げずに。 で、名作だということや、 映画化という話を聞いて、 あわてて、前日に上下巻を読んで、 その足で映画館に行きました。 |
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わあ、濃い2日間。 |
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はい。その2日間は、 『自虐の詩』にどっぷりでした。 |
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僕はけっこう前に読みました。 そのときはもう文庫本の上下巻しかなくて、 もとは全5巻だったらしいんだけれど、 それはもう絶版になっていて。 いまは、文庫版と、愛蔵版が。 それぞれ上下巻で出ているんだけど、 これが、どうやら掲載されているのが ちょっと、ちがうらしいんですよ。 文庫本のあとに愛蔵版が出てるんですけど、 愛蔵版のほうが判型が大きいので、 コマがもちろん大きい。 でもそれだけじゃなくてですね、 編集し直してあるみたいです。 元々『自虐の詩』っていうのは、 今回映画化された 幸江(ゆきえ)とイサオの 物語だけじゃなくて、 いろんな人が主人公になっている 群像劇なんだそうです。 |
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へええ。 |
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それぞれの人生が織り成す、綾なす、 壮大な物語。そういうものらしいよ。 |
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はああ。 |
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それを幸江とイサオを中心に編集したのが |
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群像劇。 主人公の視点を変えていくのかな。 |
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多分そうですね。 ギャグマンガが積み重なって ストーリーマンガになってるでしょう。 四コマは一話完結じゃないですか。 そうすると、ストーリーマンガと違って、 登場人物は限られてくるものね。 誰かを主人公にした四コママンガが 連載されていく中で、 どんどん物語が成長していって、 脇役が主役になり、またそのなかの脇役が 主役になり、その人たちの昔の話が また別の四コマになり‥‥って、 そういうふうに織りなした、 大きなタペストリーなんじゃないかな。 |
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なるほど。 |
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業田さんのマンガって 割とそういうところがあってね、 最近、僕『男の操』を読んだんですけど、 売れない演歌歌手が、 男手ひとつで小学生の娘を育てるの。 お母さんが早くに死んじゃってて、 そのお母さんが残した家庭用ビデオがあって それを見ながら、 まるで三人で暮らしてるみたいに 話が進んでくんだよね。 これは四コマじゃなくて、 数ページ単位でみじかいエピソードが つらなっていく。 これも上下巻なんだけど、 下巻の途中から急に、 鳴門の渦に巻き込まれるかのように ものすごい展開をするんです。 ギャグマンガの登場人物たちにも、 おおきな、かかえきれないくらいの 人生があって、支え合って影響しあって、 いやおうなく時は過ぎていく、という。 「え、え、ええええ???」 ってなりますよ、下巻の後半。 『自虐の詩』と同じでね、 幸も不幸もない、 幸の中に不幸はあるし 不幸のなかに幸もあるみたいな。 |
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『自虐の詩』も、 途中まで‥‥というか、 基本的には、ギャグマンガなんですもんね。 |
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それが、急に来ますよね。 |
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急に来ますね。 |
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下巻は何度読んでも、泣いちゃうの。 |
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その「急に来る」部分がないと、 逆に映画化は なかったんじゃないでしょうかね。 |
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なかったかもしれないですね。 |
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マンガと映画は相似形というか、 そのまんまですよね、ある意味。 前半と後半のニュアンスのちがいとか。 シチュエーションは、 違うところがあるけど。 |
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マンガ版の舞台は どうも東京らしいんですけど、 映画では大阪の通天閣の ふもとになってますね。 さて、ストーリーについては こちらをごらんいただくことにして、 さあ、どっから何を話しましょうかね。 ‥‥泣きましたか? |
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はい。もう。途中からずっと。 |
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もう泣きすぎて頭痛くなって。 ガンッガンになっちゃって。 もう‥‥、ひどかったです。 |
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映画もマンガも前半はこう、 ゆったりしたコミックなんですよね。 ゆったりしたギャグというか。 で、どうなっちゃうのみたいに思ってると、 途中で急にギアチェンジ。 |
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ギアチェンジ。 |
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運転できないのに、 なんで車に例えようとするんですか。 |
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野球で言うと? |
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だからあ(笑)。 |
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野球で言うと‥‥。 ええとね、デッドボール? |
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そうですよ。 デッドボールのようなことで 展開が変わるんですよ。 |
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その比喩で合ってるのかなあ。 で、急に変わるんだよね。 そういう意味では 最初から最後まで息も継げない、 みたいな映画ではないんですよね。 前半がゆったりで、 後半が息をとめて涙が出つづけるみたいな 不思議な構造になってたなぁと。 それは原作も同じなんだし、 何度も読んでてよく知ってたのに、 あと、ぼくはあんまり映画で 泣かないんですけど、 後半はずっとなんだかうるうるしてました。 じっとり泣いてる感じ。 |
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原作知ってても来るんですね。 |
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来ました。 |
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へええ。 |
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そう、全然、もう。 |
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ぼくは読んだ直後ですけど、やっぱり。 |
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直後でも? |
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そうですよね(笑)。 |
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だってさぁ、話、知ってるじゃん(笑)。 |
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ストーリーに驚くというよりも、 やりきれないっていうか。 |
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やりきれないの? |
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かくもね、この‥‥。 |
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かくも? |
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かくも。 |
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かくも? |
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人を好きになるっていう気持ちは ロジックじゃなくて それぞれのものさしで計られているもので、 人からなんて言われても、 もう、関係ないわけなんだなあって。 |
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(つづきます) |
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2007-11-07-WED |
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