私は、幸江とイサオの物語より、 それより何より、 もう友情の物語が、素晴らしいと思った! |
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そうです! |
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素晴らしいです。 |
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すっかり友情に‥‥。 |
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僕はこっちだけでも 一つできるなっていう ぐらいに思いますがね。 |
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あのね、二人が、 大人になって敬語になるの。 それがすごいよかった。 おばさん同士、久しぶりに会うと なんか敬語になっちゃったり するんですよね、大人同士だから。 |
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あ、そうそう。 |
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へええ。そこは気がつかなかったです。 |
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そのリアリティに、またやられちゃうの。 わたし、もう、最後のほう、 頭どうにかなってたと思う。 入り込みすぎて。 |
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私も、もう、友情と海だとか、 夫婦で海だとか、 傷つけあうとか、でも、 あんたがいるんだよねっていう そういう2つの並んだ構図に、 もう泣けて泣けて。 で、東京行きたくないけど、 行かなくちゃいけない、 そういう瞬間ってあるじゃないですか、 人生の流れの中で。 |
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あるんですか。 あるんですね。 |
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あるのよ。 |
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でも、そうそう、 ここで二人で暮らしてきたとか、 そういう構図がもう、 よくできてるなあと思って、 いま、また思い出しちゃって うるっときちゃった。 |
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多分、どっちか片一方では 幸江は幸せにはなれないんだよね。 |
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そうですね。イサオだけでもだめだし。 |
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男だけの関係のなかで生きていくわけには いかなさそうだし、 でも親友の熊本さん、 中学卒業してから ずっと会ってない熊本さんという人がいて、 それが、彼女にとって大事なものに なってるっていうことがよかったよなあ。 |
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男との関係は日常ですけど、 友情のほうは、 ずうっとなかったものですからね。 支えとして「あるもの」ではあるけれど。 |
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あれ、たまらなかったね。 原作にもあるシーンなんだけど、 とっても好きでした。 |
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わたしが泣けたのは、 だめになった幸江ちゃんを 部屋に連れて行って、 足の爪を切ってあげるシーン。 |
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そんなこところあった? |
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あったよね。 |
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あったのは知ってるけど。 |
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ああ、あったかも。 そんなに感動した? |
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「ばっかじゃないの」ってすごい泣くの、 幸江ちゃんが。 |
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ああ。 |
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その「ばっかじゃないの」がもうね、 はあっ。すごい、本当にね。 |
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そう? |
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「愛されてる私」みたいなことですか。 それとも『愛の嵐』の シャーロット・ランプリング的な ことですか。 |
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じゃなくて! 「あたしを好きなんて、 あんた、ほんと、 ばっかじゃないの?」って思うのよ。 ああ、なんかうまくいえない。 |
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なんかリアルな話ですね。 |
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われわれの知らない りかさんがいるのではないでしょうか。 |
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知らないほうがよさそうですよ。 あ、私、足の爪、 切ってもらったことありますけどね。 |
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えっ。 |
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あっ。 |
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フフフ‥‥。 |
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それはなんで。 |
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指を怪我して切れなかったからです。 |
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一同 | なーんだ。 |
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武井さんも おなかの肉がつかえるでしょうから 切ってもらったらいかがですか。 |
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自分で切りますよ、爪は。 |
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ぼくは中谷さんの、 感情がピークのときの演技が やっぱり見ごたえがありましたね。 その、爪のシーンもそうだけど、 妊娠が分かったあとで イサオが出て行くところの 中谷さんであるとか。 |
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ああいうときの中谷さんは、 ほんとうにすごいですよね。 |
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しかし、あらためて、 ‥‥だめな男ばっかりな映画ですね。 |
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そうですね(笑)。 すごくちょっとしか出てないけど 松尾スズキさんが みごとにダメ男を演じてらしたりね。 |
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なんだろう、本当、 みんなだめなやつばっかりですね(笑)。 |
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みんな、でも、愛すべき。 |
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愛すべき。 |
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本当にね、頭が痛くなった。 くらくらしてきちゃった。 |
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そんなに泣きましたか。 |
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私も。 そこまで泣かないだろうと思っていたので、 ハンカチを忘れていって、 ほんと、拭くとこがなくて困った。 |
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試写会場で響き渡る嗚咽。 |
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スガノは友情物語に泣いたのよね。 私はだめ男物語かもしれないね。 |
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原作では僕は友情物語のほうを 強く読み取ってて、映画は 内縁関係の男女の愛の物語として 見ていたかな。 |
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街ですれちがうおじさんおばさんとかでも、 なんかいろいろあったんだろうなみたいな 感じってあるじゃないですか。 多分、この二人も昔いろいろあって、 みたいなことがあって、 一緒にいることの凄みっていうのを、 もう一回味わう感じが 映画ではありましたね。 |
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なるほど。どうしようもない部分も ひっくるめて一緒にいる。 |
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山下さんはどうしても そこにこだわりますね(笑)。 |
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そう、どうしようもない部分(笑)。 |
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お互いに助け合い、お互い様なんです。 |
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あ、そう。お互い様です。 お互い様ですよ、本当に。 |
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幸江さんがかわいそうでね。 |
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ちゃぶ台ひっくり返す半分の罪は 幸江さんにもあるのよ。 |
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そうそうそう。うんうんうん。 |
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それを幸江さんは分かってるから、 そんなに責めないんです。 |
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で、わざと遊んだりして 見せてましたよね。 ぶり返すだろうってことを 言ったりしてましたよね。 |
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そうそう。 |
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なるほど。 ぼくは見方が浅かったです。 もう一回見たほうがいいですね。 |
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一同 | (笑)。 |
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原作ではもっと露骨に 愛情表現してますよ、幸江さんが。 |
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「愛してるって言ってよ」、何回もね。 |
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言葉がほしいのよ。 |
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わかりますよね。 |
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そう。幸江さんにはけっして イサオは暴力振るわない人なので。 |
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絶対。うん。それは。 |
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絶対振るわないですよね。 なので、あのう、それ分かってて、 もっと愛情表現してます。 甘がみ、みたいなもんです。 |
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そうか! そうですね。 |
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DVじゃないんですよ。 |
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あっ。そう、ですね。 物に当たってるんだ。 直接手を上げてないんだ。 |
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山下さんどこ見てたの? |
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山下さん、それはないよ。 |
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DVだったらちょっと この映画なりたたないでしょ。 |
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成り立たないでしょ。 |
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いや、ちゃぶ台をひっくり返す、 ってことが、かなり大きなこととして ガーンッときてたんで。 |
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もちろん、そりゃ、おっきなことですよ。 |
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イコール暴力ぐらいに思っちゃうんで、 「奥さんになんてことするんだ、 ひど〜い」と思ってたんですよ。 冷静になってみると、手は上げてないんだ。 あんなに暴力的な男だけれど。 |
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すごい喧嘩っぱやいのに。 |
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喧嘩っ早いけど、 すごく我慢してるっていう 表現のシーンもありましたよね。 |
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ちょっと立ち入ったことですが、菅野さん。 |
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なんですか。 |
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ご夫婦のその。 |
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立ち入ったな。 |
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なんですか。 |
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ご関係みたいなものを。 |
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ちゃぶ台をひっくり返されたか? |
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それはまあ。じゃなくて、 なんていうんですかね。 強さのご関係みたいなもの。 いかがでしょうか。 |
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ああ。五分五分ですよ。 あるところでは、 劣勢優勢とかありますけど、 めちゃめちゃ五分五分です。 |
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幸江とイサオもそうで、 安定しないんですよ、天秤が。 |
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そうですね。 |
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だから、惚れられてた時代は 幸江さんのほうがずっと優勢で 今は逆で。 どうしても天秤ばかりに 風が吹いちゃうんですよ。 |
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(つづきます) |
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2007-11-09-FRI |
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