チェコ時間って、 5時ぐらいになったら、 スタッフは人形動かしてても 帰っちゃうらしいんです。 |
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え、ほんと? |
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うん、それは当然だと思う。 |
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えー。 |
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だから後は監督がコツコツ、みたいな。 |
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金曜日なんて5時どころか 12時ぐらいに出てっちゃうのよ。 |
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12時って半ドン? |
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半ドン! いいなあ。 |
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それで2年だから、 短いような気がする、私的には。 |
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しかも、お話が、 すごくわかりやすかったですよね。 チェコの人形アニメっていうと 難解だとか、ねえ? |
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シュールな感じが。 |
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シュールな部分も、あるんだけど、 ストーリーはすごい分かりやすかった。 |
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そうですね。 |
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ちなみに簡単に言うと、 悪の帝王にさらわれた、 屋根裏に住むポムネンカっていう人形を巡って 友だちたちが助けに行くという、 すごくシンプルなお話です。 |
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それが二重構造になってて、 人間が出てくると、人形はただの人形になる。 人間がいなくなると動き出す。 |
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そうそう。 |
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おもちゃのチャチャチャ。 |
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そうですね。 |
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混ざるんですよね。 |
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猫ちゃんだけが両方の世界に存在してる。 |
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あの猫って悪者? いい者? |
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あれは悪者ですね。 『不思議の国のアリス』でも、 ちょっと悪いものとして アリスを翻弄しますよね、 そういう存在かな。 |
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そして、あの悪いやつら、 もうほんとに気持ちが悪い。 |
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おっさんですよね。 胸像みたいな人。 |
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「フラヴァ」ですね。 なんで胸像なんでしょうね |
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権力の象徴なんだと思う。 かつての共産主義者の像は まさにあんな感じで、 それが町のそこら中にあった。 それって怖いよね。 民主化後に取り外されたり 壊されたりしたから 今はもうないけど‥‥だからって、 さすがにどこの家の屋根裏にも あんなものが転がってるわけじゃないよ。 |
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あの人、有名な人なんですか? |
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わたしもちょっと よく分からないんですけれども。 |
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有名なコメディ俳優だと聞きました。 |
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あの、チェコって、役者さんたちの 有名、有名じゃないっていうのが、 日本みたいな価値では測られないんですよ。 たとえば舞台役者はテレビには出ない。 テレビの役者さんはテレビだけ。 滅多に被らないんですよね。 映画とテレビと舞台。 昔、チェコは共産主義で テレビにコマーシャルが 流れなかったんですけど、 その影響でずーっとテレビも 国営放送しかなかったんですね。 で、やっと民営になって コマーシャルが入るようになって、 ある舞台俳優さんが コーヒーのコマーシャルに出たら、 そんなことまでして金がほしいのかって すごい叩かれて(笑)。 |
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へえ。 |
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私が疎いだけなのかもしれないけど、 一般的な露出度がすごく少ないので、 「フラヴァ」役のひとも コメディアンとして有名なのかもしれません。 |
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日本ではこれ、吹き替えにはならない? |
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あ、吹き替えになってます。 |
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チラシで発見してしまいました。 |
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発見しました、私も。 |
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フラヴァが、 佐野史郎さん! |
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ポムネンカが貫地谷しほりさん! |
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なるほど、フラヴァが佐野史郎さん。 |
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佐野さんがたまたますごーい チェコアニメファンなんです。 もともと、カフカが好きで、 シュールっていうか、 もともとその雰囲気をお持ちの方ですけども、 なにしろお詳しくて。 アフレコのときも貫地谷さんに いかにイジー・バルタ監督がすごい人かって すごく説明してくださって。 |
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そういう人がやってくれてよかったですね。 ところで、ぐっさんは、 舞台美術や、アニメーション、ジブリ、 シルク・ドゥ・ソレイユなど、 パフォーマンスアートに関するコンテンツは とても多いよね。 どうでしたか? |
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僕、『ウォルスとグルミット』が すごい好きなんですけど、 『ウォルスとグルミット』が ファンタジーなのに対して、 すごく現実が近いところにある世界ですよね。 現実的に置いてあるものが ほんとに動き出すっていう、 完璧に作られた世界じゃなくて、 置いてあるものが動き出すっていうところが おもしろかったなぁ。 あと、悪の、悪役のちょっとグロさが、ねえ。 |
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ああ、そうですね。 |
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悪い連中の描き方が、すごかったよね。 虫の姿をした悪いやつが ごそごそ耳に入っていくとか。 |
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そうそうそうそう。 |
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水とか、シーツが雲になるとか、 あのあたりは説明なしで気持ちよかったね。 |
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気持ちいいし、ちょっと気持ち悪いし、 |
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これ、チェコでは子どもむけなんでしょうか。 |
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子どもも観に行ってますけど、 あんまり区分けはしてないと思います。 全く世の中が子ども文化ではないというか、 子ども対象の社会ではないので。 チェコっていう国自体が。 |
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あー。 |
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ほー。 |
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全く媚びていない国なので、子どもに対して。 |
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ほー。 |
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こういうのを作るときも 子どもがこうやって観るんだろう、 みたいなところはあまり加味せずに 作るものなんですか? |
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まったく。 イジー・バルタや シュヴァンクマイエルに 代表されるアニメーションは、 彼らの芸術作品だという考えですね。 シュヴァンクマイエルは、自分のことを アニメーション作家というより シュールリアリストといってるし。 共産主義で表現が制限されていた時に、 映画制作でいちばん検閲がゆるかったのが 童話、それとアニメだったそうなんです。 で、その頃既に活躍していたのがトルンカで、 それにシュヴァンクマイエル、バルタが続いて 作家性の強いものがたくさん作られた。 今、「チェコ・アニメ」といってみんなが 思い描くようなのはこの流れですよね。 だから純粋な子供向けのアニメーション というのとは違いますね。 |
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多分、今回の作品は国内向けというよりも 海外に売ることを考えているし、 お金も海外から出てたりとかするので、 プロデューサーが必要以上に、 子どもが観ても 大丈夫なようにしてねーって。 でもやっぱりバルタは もっとグロくしたかった(笑)。 |
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へえー。 |
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あー。 |
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多分、これ、普通に観てるのよりも もっと奥が深くて、 ポムネンカをさらうフラヴァっていうのも、 もっと──。 |
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かどわかす? |
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そう。いやらしーい、のが、 やっぱり元になってて、 でもそれを前面的には出してない。 |
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あ、もうちょっと変態が? |
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そうそう、もう、そうです! |
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もっと性が入るんだ、 彼のメタファーには。 もっとどろどろしたものが、 でも童話の本質ってそこにあるよね。 |
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そうでしょうね。 後ろにすごいどろどろしたものが。 |
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グリムとかね、そうですよね。 |
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隠してありますよね、言いたいことをね。 |
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うん、うん。 |
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そういう目線で観ると、 あ、ここも何かもっと こういうことなんだなっていうのが‥‥ |
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ありそうですねー。 |
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(つづきます!) |
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2009-08-12-WED |
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(c)BIO ILLUSION s.r.o. |