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永田 |
お久しぶりです! |
刈屋 |
こんにちは。 |
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永田 |
オリンピック目前、ということで、
ぜひ、刈屋さんにお話をおうかがいしたくて
おじゃましました。
よろしくお願いします。 |
刈屋 |
よろしくお願いします。
あの、今回、じつは、
20年振りのことになるんですが、
私は夏のオリンピックの開催地に行かずに
東京から情報をお伝えするんですよ。 |
永田 |
そうらしいですね。
うかがってびっくりしました。
オリンピックの番組を担当されるとか。 |
刈屋 |
ええ。深夜のハイライト番組を
担当することになっているんです。 |
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永田 |
それはそれで、楽しみでもありますが、
正直、刈屋さんの実況が聞けないというのは
さびしくもあり‥‥。 |
刈屋 |
ははははは。ま、しょうがないですね。
少し離れたところから観られるというのは
自分としてはちょっと楽しみでもあるんです。 |
永田 |
しかし、ゲン担ぎの意味ではどうですか?
「ゴールドメダルアナウンサー」が
北京に行かないと、なんらかの影響が‥‥。 |
刈屋 |
ははははは。いやー、大丈夫でしょ。
‥‥‥‥大丈夫かな? |
永田 |
ははははは。 |
刈屋 |
(笑) |
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永田 |
今日、おうかがいしたのは、ずばり、
北京オリンピックの見どころを
教えていただこうと思って。 |
刈屋 |
はい、はい。 |
永田 |
はじまる前ですから、
断言しづらいこともあるかと思いますが、
ぜひ、刈屋さんの知識と経験から
見どころを教えていただければと‥‥。 |
刈屋 |
まず、今回の北京オリンピックの
いちばんの見どころは、開会式です。 |
永田 |
うわ、もう、はじまりますか。
え? 開会式? 競技ではなく? |
刈屋 |
はい。今回のオリンピックでは
開会式が最大のポイントに
なるんじゃないかと思います。
なぜかというとですね‥‥。 |
永田 |
はい、はい。 |
刈屋 |
なぜかといいますと、
ご存じのように中国はチベットに関する問題で
世界的な批判を受けました。
また、四川省の大地震では、
10万人以上の人が被災しました。
こういった困難な状況のなかで、
はたして中国はオリンピックをどう表現するのか。
開会式をどういうふうにやるのか。
これはすごく興味深いことだと思います。 |
永田 |
あああ、なるほど。 |
刈屋 |
かつて、たとえば東京オリンピックの時代、
オリンピックというのは国威発揚の場でした。
「私たちの国はこんなに力がある」というのを
前面に押し出す開会式がふつうだったんです。
ところがこの20年くらいのあいだは、
大会ごとにいろんなテーマを持つようになった。
その象徴的な例が、1992年のバルセロナ大会です。
バルセロナ大会は、ソビエトをはじめとする
東側諸国が崩壊しつつあるなかで開催されました。
それ以前の冷戦時代には、
平和の祭典といわれるオリンピックにも、
ボイコットなどの政治問題がありましたが、
バルセロナのときには東西の関係そのものが
根本的に崩れようとしていた。
そういう状況で開催されたのが
バルセロナの開会式だったわけです。
当時、ぼくはそれをスタンドで観ていたんですが、
たいへん印象的だったのは、大きな五輪旗が、
選手、会場全体を包み込んだことでした。
つまり、東の人、西の人、あるいは宗教、政治、
そういった全部のものを、五輪旗が包んだんです。
あれが、まさにバルセロナの主張だと思うんです。
開催当時は、スペイン自体にも、
バスク地方に代表される、民族的な紛争があり、
とても安定しているとはいえない状況でした。
しかし、そういう中でも、
オリンピックを通して、世界はひとつなんだ、
宗教も民族も政治も乗り越えてひとつなんだ、
そういうことを、あの開会式は
世界にアピールしたと思うんです。 |
永田 |
はーーー。 |
刈屋 |
じゃあ、北京オリンピックはどうするのか?
中国は世界でいちばんだ、
というふうに強さをアピールするのか。
それとも災害などで苦しんでいるけれども
立ち直ろうとしている姿を見せるのか。
外に向けるのではなく、
国民を勇気づけるような演出にするのか。
そのあたりがとても気になるところです。
また、注目すべきポイントは中国側に限りません。
最近、公害問題の影響から、オーストラリアは
陸上の選手団が開会式に出ないと
言い出していると伝えられていますし、
ヨーロッパ諸国の中にも、人権問題から、
開会式に来ない国があると、報道されています。
そういった国が、ほんとに来ないのか?
どういった単位でボイコットが起こるのか? |
永田 |
選手個人個人の判断もあるかもしれませんね。
たとえば、入場するときに
なにかパフォーマンスをするかもしれない。 |
刈屋 |
はい、そういった可能性も大いにあります。
そういうときに、注目したいのは、
国際映像をどうつくるのか、ということです。 |
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永田 |
あー、そうか、そうか、
各国へ放送する、国際映像というのは
たぶん中国が中心となってつくるわけですね。 |
刈屋 |
そうなんです。
たとえば、各国が入場してくるなかで、
ある国がボイコットした。
そのとき、国際映像はどこを映すのか。
まったくそれに触れない映像を
つくることだってありえます。 |
永田 |
基本的には、日本の放送局は、
国際映像を放送するんですよね。
独自に編集したVTRがあるわけではなく。 |
刈屋 |
そうなんです。
たぶん、中国の中央電視台というところが
中心となって北京オリンピック放送機構が
つくると思うんですけど
そこがどうつくるか、ですよね。
だから開会式そのものを
どう演出するのかという点がひとつ。
それを国際映像において
どう配信するのかという点がひとつ。
この2点において、開会式というのは
極めて注目すべきだと思います。
要するに、中国という国が、
オリンピックをどうとらえているのか、
ということでしょうね。 |
永田 |
よく言われることですが、
オリンピックというのはスポーツの祭典だから、
政治とは切り離すべきだという考えもあります。 |
刈屋 |
そうですね。個々の競技においては
そう考えるほうが自然です。
でも、オリンピックの開会式に関しては、
なんらかの主張というものが確実に出てきます。
いつの時代であろうとも、
それを利用しようとする人もいれば、
なんらかのアクションを起こす人もいる。
スポーツは政治とは関係なく
純粋な競技、勝負であるべきです。
でもオリンピックという
国際的なイベントになったときには、
各国がなんらかの手段で利用しようとするのは、
もうまちがいのないことなんですよ。 |
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永田 |
事実として、オリンピックの開会式には
そういったものが必ず反映されると。 |
刈屋 |
そう思います。
そして、それをどう伝えるのか、というのは
放送、報道に関わる全員が
考えなければいけないことだと思います。
我々の大先輩に
西田善夫(にしだよしお)さんという
アナウンサーの方がいらっしゃるんですが、
この方が、モントリオールオリンピックの、
閉会式の中継の最後に、
「せめて4年後はオリンピックが
開けるような世界であってほしい」
とおっしゃったんです。
あのときのオリンピックというのは、
南アフリカのアパルトヘイトに抗議して、
アフリカ諸国がボイコットしました。
また、当時、カナダは
中国と国交を結んだため、
台湾と断交してすでにアメリカまで来ていた
台湾の選手を入国させなかったんです。
モントリオールオリンピックはそんなふうに
はっきりと政治的な影響があった大会で、
しかも、4年後の開催地はモスクワで、
はじめて東側でオリンピックが開催される
というような状況だった。
だからこそ、西田さんは、
世界の不安定な情勢を予見して、
そんなふうにおっしゃったんだと思うんです。 |
永田 |
はーーーー。 |
刈屋 |
そして、その4年後、モスクワ五輪を
アメリカがボイコットするのかどうか
ということで世界が揺れていたとき、
その半年前に行われた
冬期レークプラシッド五輪の実況の中で
西田さんはこうもおっしゃいました。
「我々、日本人は、うるう年がくれば、
4年ごとにオリンピックが
開かれるもんだと思ってる。
でも、そうじゃないんだ。
国際社会がちょっとでもバランスを失ったら
オリンピックっていうのは、
あっという間に開けなくなってしまう。
だから、当然開かれるもんだと
思ってること自体が認識不足なんだ」と。
つまり、オリンピックというのは、
世界の人たちがオリンピックを開こうという
意思があってはじめて開かれるものである。
だから、そういう世界じゃないと
オリンピックは開けないし、
逆にオリンピックを開くためには、
そういう世界にしなきゃいけない。
それがオリンピックの理念じゃないか、
ということを西田さんは
実況でおっしゃったんです。 |
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永田 |
すごい‥‥。 |
刈屋 |
当時、ぼくは、まだ大学生だったので
その実況を断片的にしか覚えてなかったんです。
NHKに入ったあとに、
そのVTRを観る機会があって、
実況をじっくり聞いたら
そういうことをおっしゃっていたんです。 |
永田 |
オリンピックというのは
4年ごとに自然に開かれるもんじゃない。
開こうという世界の意思がなきゃ開けないし、
それを開くための世界でなければだめだという。 |
刈屋 |
はい。そして、21世紀に入り、
東西の冷戦は終わりました。
でも、問題はちっともなくなっていない。
民族紛争、環境問題、天災‥‥。
今回の北京では、偶然ではありますが、
そういった問題が重なって起こった。
そんななかでどういうふうに
オリンピックの幕が開くのか‥‥。 |
永田 |
はい。俄然、興味がわいてきました。 |
刈屋 |
(笑)
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|
(続きます!)
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