細川 |
まず今年は、海岸線50kmを
林野庁が植林するので、
我々はその後ろ側のほうを
やることになると思います。
それはそうとうな面積になると思いますね。
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清順 |
そうですね。
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細川 |
それは国がやるんですから、
ちゃんとやっていくでしょう。
しかし我々は、
「100万本植えなくちゃならない」と
思っているわけじゃないんです。
今後植栽の必要な場所が
どのくらいのスピードで
あがってくるかということに
関わっているわけですね。
ですから、その間に苗を作っておこう、
ちょうど100万本、今年は作ろう、
ということなんです。
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清順 |
作った苗を、来年のしかるべき時期に
植えなかった場合、
それを養生する場所はあるんですか?
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細川 |
そうですね。そのあたりはいま
あちこちお声がけしているところです。
企業でも、自分のところで苗作りをやりたいと
おっしゃっているところもあるし。
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清順 |
あるでしょうね。
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細川 |
植木屋さんとかお花屋さんとか、
学校とか、いろんなところで、
やらせてほしいといっておられるところが
けっこうあるんですよ。
それは、ほんとにありがたいことだと思います。
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清順 |
木をあげたいとか植えたいという企業は多い。
企業はとにかく1年でも早く植えたいんです。
でも、被災地は「ありがたい話」といいながらも
国との難しい協議があったり
いろんな調整があってはじめて
苗を手にできたりします。
木をあげることはあっても、
それを実際に管理したり育てたりする人が
いないのではないか、ということが心配です。
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糸井 |
そこは清順くんの本職だから
気になるだろうね。
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清順 |
でも‥‥それがね、
いま細川さんにお話をうかがって、
ほっとしました。
これを苗作りから管理したいと言ってくれる企業が
いてるってことは、
ほんとにすばらしいことなんです。
それを聞けただけでもよかったなぁ。
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細川 |
ええ。たとえば大槌町なんかでも
ある企業がマウンドを作るのに
穴を掘って瓦礫を積んで。
そこに植栽する苗木も全部
育てていただいた。
ほかの企業でも、やりたいと名乗りを
あげていただいているところもあります。
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清順 |
いや、ほんとにね、
それがぼく、ほんとに心配で。
苗をあげたいという気持ちは
すごくありますから。
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糸井 |
善意は集まります。
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清順 |
そう。苗とか種はすぐに集まります。
ただ、そのあと管理するのがたいへんです。
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岸 |
苗を育てるって、わりと簡単なんです。
例えばこのテーブルの上に
1000粒ぐらいのどんぐりを植えて、
1年の実生を作るのは、
簡単にできちゃいます。
2年目の苗も大丈夫です。
でも、3年目はもう、ダメですね。
4年目になって数メートルになり、
引き取り手がなかったら
全部抜いて捨てるしかなくなる。
苗ってそういうものです。
苗はいくらでも作れる。
でもそれを植えた場所で、誰がどう管理をするか。
すごい人手と金がかかります。
いまプロジェクトがおっしゃってるような
自然淘汰では、むずかしいのではないでしょうか。
日当たりが悪いところはやはり
内側が枯れて、暴風雨にさらされれば
倒れてしまいますね。
帯状で幅が狭ければ、なんとかなると思います。
細川さんがおっしゃっている
「マウンド」も、とてもいい発想です。
ちいさな丸いマウンドに植えると、
360度から光が入ってきます。
ところが同じ幅を真っ平らにしちゃうと、
中心に光が入りませんから枯れますね。
植林地がでかくなればなるほど、そう。
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糸井 |
でも、ちっちゃいと堤防の意味が減ります。
そこは難しいなぁ。
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岸 |
そうですね。
幅30m~50m、高さ15mくらいであれば
いいのかなぁ。
津波の高さによっては、
それではどうしようもない地域もあるでしょうし、
そんなに大きな堤防は必要ないよ、
というところもあるでしょう。
専門家が参加して細かい検討を始めると、
「ここはいりません」
「ここはできるかもしれません」
というような話になってくるんです。
そうなると、やっぱり
何がなんでも「ベルト」ということに
こだわらないほうがいいと思います。
高台を作って、そのスカートの裾の
フリンジの部分を落葉樹も含めた広葉樹で
うまくやるといいんじゃないでしょうか。
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糸井 |
「建築家」がいて「工務店」がある。
「工務店」にあたる人のことを
計算に入れないといけませんね。
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岸 |
そうかもしれないですね。
現場、施工管理できる人。
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糸井 |
そこがじつはミソですね。
それは国が
やるわけにはいかないんでしょうか。
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岸 |
国の出先の事務所にいる、経験の豊富な人が、
発言できる環境であれば、
うまくいくと思います。
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細川 |
国の機関、林野庁でしょうけれども、
それはおそらくはじめてのケースだと
思うんですよ。
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糸井 |
そうなんですか。
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細川 |
たとえば「裾野」をやるなんてこと、
いままではあまりなかったことでしょうね。
松を植えるだけという話だったでしょうから。
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岸 |
そうですね。
ビジョンも大切ですが、
できるかどうかは、また別です。
できることはできる、というのはわかります。
その、できることの中のベストを狙う。
それにはやっぱり細川さんみたいな
政治家のセンスが必要です。
支えてくれる人たち、現場の人たち、
いろんなことの調整をしていきながら
進んでいくのだと思います。 |
(つづきます) |