清順 |
津波のあと、陸前高田の松原へ
案内していただきました。
そこでは、海辺の松の根っこが
1mぐらい下がっていました。
あれを見ていると、松って、
あるべくしてあそこに植えられてたんだな
ということが、よくわかります。
広葉樹じゃ絶対育たないような環境です。
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細川 |
やっぱり海岸べたの、
潮風の強いところですね。
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岸 |
そうですね。
そこではたしてタブがもつかとかというと、
わからないと私は思います。
エノキなどは落葉樹ですが、
潮に強いので、大丈夫かもしれない。
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清順 |
地下水面のことも関係があります。
広葉樹は太い根っこがあって強い、というのも
それは地盤ありきだと思います。
だから、エッジのほうではやっぱり
松になるのかな、とぼくも思います。
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細川 |
地下水面は、確かに問題ですね。
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清順 |
そうなんです。
ただ、まだ松の場合は、
横に根が長く張りますから、
タブなどの広葉樹とは、違います。
そういう意味でも、松は実績があって、
美しさももちろんあってね、
信仰の対象になってきたと思うんです。
もちろん、防砂林という役割もあったし。
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岸 |
僕は黒松については、
そんなにくわしいことは知らないんですが
山の中の仕事が多いので、
赤松については付き合いが長いんです。
丘陵地のどうしようもないところに生えているのは
たいてい赤松です。
ガレ地のようなところに定着する
松の力ってすさまじい。
黒松は、海岸線に大規模に自生していたかどうか
私はわからないですけれども、
案外あったんじゃないかな、とも思います。
いま、この森の長城プロジェクトで
うたっている「潜在自然植生」についても、
植林のターゲットになっている場所に
タブその他の常緑広葉樹が
そもそもかつて極相としてあったかどうか、
学術的にも難しい問題だと思うんです。
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清順 |
その「潜在自然植生」が
何年前のことまでを指しているのか、
ぼくはちょっと疑問に思うんです。
例えば100年前、200年前にあった、
というものなのか、
1万年前からあったものを指すのか。
そこが重要だと思います。
例えば海外で調査して、
「こんなのが自生でもともと生えていたよ」
と言われるんですけれども、
それがほんとうなのか、わからない。
それがたとえ100年前から
あったものだとしても──いや、
いってみれば、世界中どこでも、
「100年前に人が植えたもの」だらけ
なんですよね。
ただたんに、そうなんです。
200年前、300年前も同じこと。
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岸 |
そのあたりは、
花粉分析という手法を使って
1000年、数千年の過去の植生を
調べる分野なんかがありますが、
調べだすと、そんなにきれいにならない
というのがわかります。
例えば関東地方の平野で
寒いところに生えていたのはほとんど
シラカシだと言われます。
しかし調べればたぶん
あっちにもこっちにも落葉樹の林があります。
当たり前の話なんですよ、
雷が落ちて山火事も起こり、
大雨で大規模な土砂崩れもあり
森の一定の割合の面積は、
確率的にいって
いつも焼け野原や荒地に決まってる。
そこが草地、雑木林と再生されるわけですから、
全部が単純な遷移の理論で予想される
極相林になることはあり得ない。
いつも「まだら」、それが当然なんですね。
だから、その地域で
「シラカシが偉くて落葉広葉樹が偉くない」
ということではないんです。
様々な条件に対応して
常緑のカシや落葉樹がすみわけ、混在してるだけ。
理論生態学の領域では、
単純な遷移説は
もうほとんど権威がないと思います。
だからこそ、いろんな意見を取り入れて
柔軟に進めてゆくのがいいですね。
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清順 |
例えば落葉樹だって、
取り入れるべきなのかもしれませんね。
落葉樹があることで、葉っぱが落ち、
土をよくして、広葉樹を強くする。
広葉樹のプロジェクトが、
落葉樹があることによって
よりいっそう強いものになるかもしれない。
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岸 |
そうですね。
300kmのベルトの長城を作るというのは
突出したビジョンとして
とてもわかりやすいですが、
細川さんがおっしゃるように、
「できるところからポイントでやる」
「場合によっては高台の
スカートの部分をやる」
「黒松でやりたいところは黒松中心に」
清順さんがおっしゃるように
「落葉樹があってもいいじゃないか」
というところがあればそうする。
そうしたモディフィケーションが加わって
いい展開になるのがいちばんいいと思います。
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糸井 |
そうだと思います。
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細川 |
ええ。林野庁のやり方と
ミックスしていけば、
そうならざるを得ないでしょうね。
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糸井 |
あと、あのあたりは
港がけっこうたくさんありますからね。
港を活かそうと思うと、
マウンドを作っている場合じゃないというのも
わかります。
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細川 |
やっぱりその場合は
コンクリートでいくというところもあるでしょう。
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糸井 |
うん、そうですね。 |
(つづきます) |