第6回 ジャンプインしたいな。

清順 ぼくが30歳前半の一男子として
いろんな社会活動のプロジェクトを見て、
「どれに参加したいかな?」と考えるとします。

それはもう、めっちゃ単純で、
おもしろいか、おもしろくないか、
興味そそられるか、そそられないか。
それだけです。
逆にいえば、べつに
極論でもいいかな、とも思うんですよ。

これね、
「100万本と決めないほうがいい」と言ってた、
さっきとは違うこと言ってるって、
わかってるんです。
でも、ほんとうはつながってくることなんですよ。
おもしろくなかったら、誰も動かないから。
いまの時代、ぼくら若者って、お金ないし。
糸井 うん、若者はお金がないね。
清順 だから、シビアです。
いちいちネットで情報調べてから、
おもしろそうなところに行こうとします。
このプロジェクトは、例えばさっきの
「デザイナーと工務店」の話じゃないですけど、
宮脇昭先生という圧倒的カリスマの
デザイナーがいる、という話です。
うん、そうだ。いいね。

清順 それってすごく人を惹きよせます。
ボランティアが参加する。お客さんが来る。
宿泊する。ご飯を食べる。
お金が落ちます。
ブログにアップする。ツイートする。
広がっていく。
これ、もしかしたら
すごい復興じゃないでしょうか。
これは、正しい道だと思うんですよ。

そう考えると、ぼくらみたいな世代の人が、
「ジャンプインしたいな」と思えるようなことは
大事やと思うんです。
このプロジェクトは、
細川さんがいるから、きっと
できることが多い。
上意下達でやるんじゃなくて、
ちゃんとコーディネートされてこそ、
若者も「おもしろがり」の人も
みんな集まるんですよ。
それぞれに固有の歴史があり、
そこに集まる人の個性もある。
あちこちでやって、
おもしろくなったところをつまんで、
さらに広めていけばいいと思います。
細川 そうですね。地元にも、
それこそ植木屋さんもおられるだろうし、
景観デザイナーもおられるだろうし、
必ずしも一本化しなくてもいいと思いますよ。
例えば仙台の荒浜のあたりとかですね、
3か所ぐらいに、1kmずつぐらい、
候補を出してきていただいたらおもしろいですね。

いわゆるモデルケースですね。
細川 モデルケースです。
それがすごく大事だと思うんです。
わかります。
モデルケースがうまくいくコツは
地域の個性を尊重してできるところ。
それで、予算詰めてみるんです。
細川 そうですね。ええ。
糸井 やっぱ、そういう経験は、
岸さんはものすごく積んでらっしゃるんですね。
年中やっています。
例えば自然保護をうたう、さまざまな
運動や組織がありますけれども、
指示が上から下りてきて、
政治の力を使ってやろうとしても
自然は守れません。
それぞれの場所や人の個性って、
ものすごく複雑なので、
上から演繹的にいったって、
簡単にできるわけない。
それで、理念がみんなに認められなくなると、
一挙玉砕戦略になって、
「誰が悪者だ?」って、
企業や行政を悪者にして
引いていくんですよ。

ぼくはけっこう大規模な保全に
何か所かで係わってきましたけど、
「土地の個性にしがみつく」
基本は全部それです。
それで、時間を使ってタイミングを待つんです。
それしかできないですよ。

糸井 ようするに、無名戦みたいなもので
戦っていくわけですね。
そうですね。
無名のぶん、表面には
カッコいいことも出しますよ。
糸井 そこを配慮して、
言葉ひとつだって、考えて出していく。
清順 そうしないと、せっかくの計画や考えが
もったいないです。
おそらく、細川さんの動きに
みんなが期待しているところが、
大きいんじゃないでしょうか。
糸井 あとは、周囲の人たちも
一色になって「賛成!」ってやるだけじゃない。
「だけど、手伝い方はいろいろある」
みんながそう思えるといいですね。

細川 そういうことなんでしょうね。
糸井 みんな自由でいいんです。
「このためにいったん集まればいいじゃないか」
ぼくらのやり方はいつもそうです。
ばらけている、個性的な人たちが
集まってやるわけですからね。
細川 それはたしかに。
ばらける位置、ばらける具合を
計算してやっていくのが仕事なんですね。
糸井 おそらくそこが
細川さんのお仕事なんでしょう。
そう思います。
政治家というのはミッションを負って
まっすぐ行くのではありません。
可能なこととの中から
たえずベターを選ぶ能力がないと
政治家はできるはずがないと、思うな。

(つづきます)
2012-10-01-MON
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