糸井 |
『ミッケ!』にはウィックさんの作家性が
強く反映されているとはいえ、
実際に本を制作するときには、
たくさんのスタッフが関わるんでしょうね。
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ウィック |
そうですね。
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糸井 |
何人くらい?
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ウィック |
ええと、フルタイムのスタッフがふたり。
あと、模型づくりの専門がふたり。
それから、アシスタントとして、
衣装づくりや雑務をこなしてくれる人がふたり。
この6人で、だいたい9ヵ月くらいかけて
つくっています。
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糸井 |
やっぱり、チームが必要なんですね。
そうやってつくったものを、
写真に撮る人もいるわけでしょう?
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ウィック |
それは、私が。
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糸井 |
ん?
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ウィック |
私のほんとうの専門は、写真ですから(笑)。
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糸井 |
ああ、そうか、そうか、失礼しました(笑)。
もともとウィックさんはカメラマンでした。
いまや、本の文章も手がけてらっしゃるから
つい、忘れてましたけど。
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ウィック |
そう、だから、6人でつくったものを
ぜんぶチェックして、仕上げて、
最後に、カメラのこっち側に立つのが、私なんです。
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糸井 |
そうでしたね。
あの、『ミッケ!』がスタートしたときって、
セットをイチからつくるのではなくて、
部屋にあるふつうのものをつかって
ぜんぶつくっていたと思うんですけど、
シリーズが続くにつれて、
オリジナルのフィギュアやセットを
テーマに合わせてつるようになりましたよね。
でも、完全に新しくつくるのではなくて、
部屋にあるふつうのものも、上手に混ぜている。
その加減がとても素晴らしいなと
いつも思っているんですけど。
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ウィック |
ありがとうございます。
1冊目の『ミッケ!』から、
撮影も、なにをどんなふうに隠すかも、
私がやっているので、
『ミッケ!』でつかったものは、
じつは、ぜんぶ、残っているんですよ。
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糸井 |
あー、なるほどね。
だから、最初の本に出てきたようなものが
ずっと出てきたりするんですね。
たとえば、同じ指ぬきとか、カエルが、
いろんなところに出てきたり。
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ウィック |
そうです、そうです。
ほんとうにたくさんありますよ。
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糸井 |
(笑)
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ウィック |
そして、おっしゃったように、
それらのふつうのものをどのくらいつかって、
オリジナルのものをどのくらいつくるかっていう
バランスはほんとうに悩むところなんです。
最初の『ミッケ!』は、
ほとんど部屋にあるものでできています。
一方、さっき話に出た『こわーいよる』なんかは
ほとんどぜんぶをオリジナルでつくっています。
大切なことは、いろんなものが集まって、
こういうひとつの絵画的なもの、
ひとつの世界になっているということです。
子どもたちが見ると、たぶんファンタジックで、
自分の知らない世界のように見えるけれど、
最後に、あらためてこの絵を眺めてみると、
自分の知っているふつうのものとかオモチャが
あちこちにたくさんある。
そういうふうにしたいんです。
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糸井 |
なるほど。
『ミッケ!』という本をつくりあげるには、
ストーリーをつくる作家の要素と、
それからゲームをつくる作家の要素、
このふたつの要素がないと
つくれないと思うんですけど、
つくるときは、どちらが優先されるんでしょうか?
あるいは、バランスをとりながら?
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ウィック |
ああ、それはとても興味深い視点です。
本をつくるとき、
私は物語のつくり手としての自分と、
ゲームのつくり手としての自分に引き裂かれます。
両者はときどき対立し、そのたびに私は
どちらの立場でいるべきか悩みます。
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糸井 |
そうでしょうね。
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ウィック |
でも、はっきりしていることは、
どこになにを隠して、
どういうふうに探してもらうかという遊びは、
最終的に、ぜんぶの映像が
できあがった時点で可能になるんです。
なぜなら、テキストのなかに、
どのくらいの手がかりを残すか、
あるいはあからさまに書くか、といったことは
最初に決められないんですよ。
つまり、文章を書いて、
それを映像化することは難しいですけれど、
逆ならできるんです。
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糸井 |
あーー、なるほど。
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ウィック |
たとえば‥‥そうですね、
ハロウィーンをテーマにした
『ミッケ!』をつくるとします。
そうすると、まずは、そのシーンに
ぜひ入れたいものをリストアップしていきます。
たとえば、ハロウィーンですから、
コウモリとか、満月とか、墓石とか、
ガイコツとか、怖ろしい木だとか‥‥。
でも、それらは、ハロウィーンという
絵をつくるときに必要なエレメントであって、
絵の中に隠すエレメントではないはずですよね。
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糸井 |
そうですね。
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ウィック |
だから、最初にリストアップしたものは
あくまでも映像をつくるためのもの。
子どもたちに探してもらうエレメントは、
絵のなかから新しく見つけなければならない。
だって、「ここに満月がある」とか
「コウモリはここだ」とか、そんなの、
見つけてもおもしろくないでしょ。
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糸井 |
(笑)
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ウィック |
ですから、基本的には、まず写真です。
ときどき、わざとキーとなるアイテムを
写真のなかに入れなかったり、
あるいは、お話を進めるために
最初に提示したり、ということはしますけれど。
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糸井 |
とってもいいアイテムが見つかったら、
最初からそれを探させるつもりで
写真のなかに忍び込ませておく、
ということもなさるんでしょうね。
たとえば、絵はがきのなかに女の子が描かれていて、
その女の子が絵本を持っていて、
その絵本の表紙がアヒルだったりすると、
その絵はがきを見つけたときは、
「あ、これでアヒルを探させよう」というふうに。
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ウィック |
あります、あります。
もう、見つけたときに「これだ!」って思ったりね。
でも、その一方で、ときどきあるのが、
「これをこういうふうに隠して、
こういう文章を書こう」って思いついて、
自分が世界一賢いような気分になって、
いざ写真をとってみたら、
ぜんぜん使い物にならない、みたいなことで。
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糸井 |
ははははは。
(つづきます) |