ウォルター・ウィック × 糸井重里  A Pure Joy For Me  『ミッケ!』の作者と翻訳者の対談。
『ミッケ!』という絵本のシリーズを知っていますか? 写真のなかに隠されているさまざまなものを 探していく、「謎解き絵本」です。 1991年にアメリカで発売されて大ヒットし、 日本でも大勢の人たちにたのしまれています。 本をつくったのは、もともとはカメラマンの ウォルター・ウィックさん。 そしてその日本語版を、シリーズ当初から ずっと翻訳しているのが糸井重里なんです。 そんなふたりが、はじめて直接挨拶を交わしました。
もくじ
#0	『ミッケ!』をご存じですか?
#1	ページがめくりたくなるように。
#2	思いのようなものが反映されている。
#3	物語のつくり手とゲームのつくり手。
#4	私にとって純粋なよろこびです。
 
#0 『ミッケ!』をご存じですか?
 


みなさんは、
『ミッケ!』という絵本をご存じですか?

もともとは、1991年にアメリカで出版された絵本なのですが、
たくさんの子どもたちを魅了して大ヒット。
翌年には日本語版も出版され、
アメリカと同様に人気を博しました。

以後、つぎつぎに続編が企画され、
ぜんぶのシリーズを合わせて
24冊の『ミッケ!』がリリースされています。

ええと、どういう本かというと、
そうですね、ページを見てもらったほうが早いかな。
たとえば、最新作の『タイムトラベル』を開くと、
こんな感じになってます。

ページの右側には、こんなふうに書いてあります。
「まず ふんすいは すぐ みつかるね。
 うまが 5とう。きつね。
 がちょう。しまりす。
 ひつじ。いぬ。
 おおきな つのの へらじか。
 ミッケ?」

ことばに導かれるように、
写真のなかに隠れているものを探します。
すると、すぐに見つかるものもあれば、
どうしても見つからないものもあり‥‥。
むむむ、へらじかってどこ‥‥?

という感じで、気がつくと、
子どもに読んであげていたはずの
お父さんやお母さんまで夢中になっている。
『ミッケ!』って、そういう絵本なんです。

本をつくったのは、
アメリカ人のウォルター・ウィックさん。
ウィックさんは、もともとはフリーのカメラマンで、
「ニューズウィーク」や「ディスカバー」など、
300もの本の表紙を手がけたそうです。
そんなウィックさんが、
ゲーム雑誌に発表した写真パズルがきっかけになって
謎解き絵本、『ミッケ!』は生まれました。

その『ミッケ!』の日本語訳を
シリーズ当初から担当しているのが、糸井重里です。
気づけば、もう、10年以上も
『ミッケ!』の翻訳を務めているのですね。

しかし、『ミッケ!』の翻訳について、
糸井はこんなふうに言います。

「翻訳なんていう、
 たいそうなことはしてないんだよ。
 もともと、すごくシンプルなことばだからね。
 翻訳という意味でいえば、
 自分の果たしたいちばんの功績は、
 いちばん最初の絵本に
 『ミッケ!』っていう
 タイトルをつけたことじゃないかな」

いちばん最初の絵本の原題は、
『I SPY』といいます。

「I SPY」‥‥私はスパイする‥‥?
なるほど、これはなかなか、
日本語ではピタッと表しづらいタイトルです。

糸井はこの原題に、
どこか懐かしくも思える日本の遊びのことば、
「ミッケ!」という三文字をあてました。
そう、かくれんぼで鬼が言う「見っけ!」です。

「ミッケ!」はタイトルだけでなく、
本のあちこちに、遊びを盛り立てるように登場します。
「ミッケ?」‥‥「ミッケ!」

たくさんの人たちに
たのしまれている『ミッケ!』ですが、
糸井が翻訳を手がけているから
ということだけではなくて、
「ほぼ日」のなかにも
ふつうにたのしんでいるファンが多いんです。

ちょっと問いかけてみたところ、
「読んでます」「うちも」「うちでも」と
手が挙がりました。さすが。
どんなふうにたのしんでいるのか、
ちょっと訊いてみましたので、お読みください。

 

うちは、3〜4歳のころの寝る前に読む絵本として、
『ミッケ!』は大活躍でした。
なかでも、『チャレンジミッケ!』6巻の、
『こわーいよる』の巻がお気に入りで、
自分で好きなのとってきていいよ、というと、
大抵、この巻を持ってきて、
うす暗い部屋の中で、布団に入って、
なんども一緒にこわいページをめくってました。

男の子だからなのか、まだ年が小さいからか、
目玉や骸骨や薄気味悪い写実的な絵でも
なんだか平気そうで、好奇心いっぱいに、
いろいろ質問していました。
(なので、なかなか寝なかったんですが‥‥)

何度も見てるので、
こどもも答えを知っているんだけど、
さも、今見つけたように答えるのが、
今から思うと、なんかかわいかった、です。
結構むずかしいページがあったりして、
親も一緒にギブアップしたら、こどもに
「しょーがないよ」となぐさめられたり。

今は6歳になって、ちょっとおにいちゃんに
なってきたので、すでに懐かしい思い出ですが、
思い出して書いていると、またこっちから誘って、
読んでみようかな、という気になってきました。

 

『ミッケ!』のこと、
うちの子たちは二人とも大好きで、
夜寝る前とか、家で遊んでるときとかに
本棚からもってきては
一緒に読んで探して「ミッケ!」と遊んでます。

とくに下の5歳児は、
迷路とかパズルとかの本が好きなので
5回に1回は『ミッケ!』読んで〜と持ってきます。
あれだけ読んでて家にほぼ全巻あるのに
先日、図書館からクリスマスのを借りてきたんです。
それ家にあるよ〜と言っても
「よんでない」というので見てみたら
家にあったのは普通のシリーズのクリスマス版で、
子どもが持って来たのは
持ってなかった「チャレンジミッケ!」の方だった、
ということがありました。

あと、保育園にも『ミッケ!』が置いてあって
お迎えにいったらしょっちゅう
『ミッケ!』で遊んでる子を見かけます。
弟の子どもにプレゼントしたら
「はまったからもっと送って」と
リクエストされたこともありました。

 

3歳になる娘が2歳を過ぎたあたりから、
『ちっちゃなミッケ!』に興味を示しはじめました。

ただ、いまだにルールを理解しておらず
「ひこうき」「ねこ」「ぼうし」「くるま」など
名前のわかるものを見つけたときは
嬉々として、その名前を言います。

見つけるのが、楽しいみたいです。

でも、ルールとちがうので
「見つけたら、『ミッケ!』と言うんだ。
 そういうルールなのだ」
と教えるのですが、ちっとも理解しません。

3歳児的に
「なんだかわからないもの、
 なまえをしらないもの」
を見つけたときに
「なにこれ? しらなーい」
というような低いテンションで
「ミッケ。」と言います。

ちがうとおもいます‥‥。

いまはすごく絵本が好きなのですが
それもたぶん、
子どもサイズの手でも取り回しやすい
『ちっちゃなミッケ!』で
本というのものに
まずは親しむことが出来たからじゃないかなと
うすうす思っています。

 

読み聞かせしながら、親子で探し合う。
いたってふつうだと思いますが、
うちでもたのしんでます、『ミッケ!』。

つい先日のことですが、
子どものいる友人に最新作を送ったところ、
「これまでのほかの『ミッケ!』も
 ぜんぶそろえてるから、
 とてもうれしい」
という写真つきの返事が来て、
驚いたことがあります。
あんまり子育てのことを話さない友人だったので、
ああ見えて、おとうさんとして、
子どもと絵本をたのしんでいるんだなと感じて
ちょっとうれしかったです。

 

『ミッケ!』は、まず自分で読んでから、
友人や家族にゆずってよろこばれる絵本です。
自分で読むときは、すごく真剣に探します。

プレゼントした友人の子は、
まだ文字が読めないので、
言われたものをさがすより、
本のなかにあるものを言って遊んでいるようです。
「ほうき!」とか。

妹の子どもにあげた『ちっちゃなミッケ!』は
あちこち、かじられてました。
(噛みごたえがあるのかも)
紙が厚くて丈夫なのもいいようです。

じつは、プレゼントした私が
いちばん遊んでて、いちばん喜んでるかもです。

 

娘が2、3歳のころ、
『ちっちゃなミッケ!』シリーズが好きで
自分で本棚から出しては「よんで」と持ってきたり
一人で眺めたりしていました。

その頃、家族でハワイに旅行にいきました。
まちを歩いていたら
娘が「まま、ほらあれ! みっけ! みっけ!」と
突然興奮しながら指さしています。
おなじみのアイテムの
「きいろいしょうかせん」でした。
「おおお! ほんもの!」親もちょっと感激しました。

5歳になったいまでも、娘にとって
ハワイは海とプールと
「きいろいしょうかせん」のあるところです。

 

小学生のときに、読んでました。
大好きでした。

母の友人が、アメリカ人と結婚していて、
私より4つ年下の娘がいたのですが、
アメリカに住んでいて、
あまり日本語がうまくなかったのです。
そんな彼女が夏休みに日本に来たときに、
一緒に遊ぶのに、『ミッケ!』を読んでいました。
(もしかしたら、『I SPY』だったかも‥‥)
1996〜1997年の頃のことだと思います。

 

なんだか、『ミッケ!』の魅力をほかのみんなに
だいたい言われてしまったので別なことを言うと、
読み手が参加するゲーム性のある絵本なのに、
もともと海外でつくられているせいか
「遊ばれようとする『あざとさ』がない」んです。
そこが、何度も何度もたのしめてしまう理由かも。

なんというか、
こういう不思議な雰囲気の絵本ですっていう感じで
ふつうにじっと眺めていられる。
それが、シンプルなことばで問いかけられると
どんどん「それをさがすこと」に夢中になっていく。
子どもも、オトナも。

逆の方向性のある絵本だと、いかにも
「さぁ、この謎を解いて!」っていう感じで
本屋さんでのとっつきはいいんですけど、
正直、飽きてしまうのも早い。

だから、『ミッケ!』をねだられたときは
「図書館で借りようよ」とは言わないです。

1冊1冊が個別の魅力をもっていて、
シリーズを完全にそろえたく「ならない」ところも
個人的には好きなところです。

 

‥‥というふうに、
いろんな場面でいろんな人たちを
夢中にさせている『ミッケ!』。
そんな『ミッケ!』の作者である
ウォルター・ウィックさんが、
このたび、日本へやって来ることになりました。


『ミッケ!』の作者がやってくるということで、
『ミッケ!』の翻訳者である糸井重里は、
遅まきながら、
「はじめまして」を言いに行くことにしました。

次回から、その様子をお伝えいたしますね。

(次回につづきます!)

2013-02-25-MON
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