ウォルター・ウィック × 糸井重里  A Pure Joy For Me  『ミッケ!』の作者と翻訳者の対談。
 
#1 ページがめくりたくなるように。
 
糸井 日本にはどのくらい滞在されるんですか?
ウィック 月曜日に来て、月曜日に帰るんです。
今日は金曜日ですから、五日目ですね。
糸井 おもになにをする七日間なんですか?
遊びに?
ウィック いえいえ(笑)、
取材を受けたりして、ほとんど遊べてません。
最初の二日間だけ、いろいろ見て回りましたが。
そう、日光に行きましたよ。
紅葉がすばらしかった。
糸井 紅葉の山なんて、『ミッケ』の題材になりそうですね。
ウィック Yeah, yeah.
糸井 いかにも、なにか隠れてそう(笑)。
(まわりのスタッフの方に)
これもう(対談として)はじまってる?
‥‥ああ、じゃあ、よろしくお願いします。
あの、ぼくのことは、わかってらっしゃるのかな?
ウィック Yes, yes(笑)!
糸井 あらためまして、はじめまして。
ウィック はじめまして!
あなたが訳してくださっているんですよね、
私のことばを。
糸井 はい。
いつも、これでいいのかなって
ちょっと心配しながら訳してます。
ウィック そうなんですか?
糸井 というのも、『ミッケ』には
とてもシンプルなことばしかないので、
なにを大事にするのかっていうことを
いつも考えながらことばを選ばなければいけない。
そのあたりを心配しているんですけど、大丈夫かな?
ウィック 私は日本語が読めないので、
できてますよって保証できないんですけど、
糸井さんは日本でとても知られてるって聞いてますし、
私はきっとうまくできてるって確信してますよ。
糸井 そうだといいんですけど。
ウィック そう、ちょっと質問があるんですけど、
英語の詩には「韻を踏む」という要素がありますよね。
でも、日本語にはそれがないでしょう?
そのあたりはどうしてらっしゃるんですか。
糸井 たしかに、語尾を同じような言い回しにそろえる、
みたいな韻の踏み方はしないんですけど、
日本語には、日本人の好む独特のリズムがあるんですね。
その「読むときのリズム」を
大事にするようにしています。
ウィック ああ、なるほど。
糸井 でも、あんまり日本固有のリズムにとらわれすぎると
古くさく見えてしまうので、やり過ぎないように。
ウィック わかります。
私が『ミッケ』のことばを書くときも、
いわゆる「詩」として、
過度に美しいことばをならべてしまうと、
読む人にとって詩として心に残ってしまって
「見つけよう!」というムードにならないので、
そのあたりは私なりに苦労して書いてます。
この本にとって、いちばん大事なのは、
隠れているものを探すことで、
ことばは、その遊びのためにあるわけですから。
糸井 まったく賛成です。
ウィック そして、『ミッケ』は物語の本でもありますので、
それぞれのことばの終わりに、
つぎにどんなことが起こるかっていう
気配とか雰囲気みたいなものが
やんわりと感じられるように、と思って、
いつもやっているんですけれども。
糸井 そう、つぎのページがめくりたくなるように。
ぼくもそう思って日本語にしています。
その意味でむずかしいのは、
ふつうの絵本って、
めくるリズムがもっとはやいですよね。
ウィック ええ。
糸井 でも、『ミッケ』は1つのページを開いて、
そこにすごく時間をかけてじっくり探してから、
ようやくつぎのページをめくるんですね。
だから、ふつうの物語の本とは
時間のつかい方がぜんぜん違う。
そこが工夫のしどころだと思っています。
ウィック おっしゃるとおりですね。
あと、子どもって、本のなかにあるものを
探して見つけてっていうことをはじめると、
もう、その遊びに夢中になってしまって、
物語や詩を全体でたのしむことなんて
どうでもよくなってきちゃうんじゃないかと
思えてくるんですけど、
糸井さんはそれについてどんなふうに感じてますか?
糸井 うーん、でも、やっぱり子どもたちは、
探す遊びをたのしみながらも、
心は、絵本の流れのなかに入ってると思うんです。
だから、遊びのヒントを出したりしながら、
じつはこれは物語なんだっていうことを感じさせるように
母親が子どもに語りかけるみたいな気持ちで
ことばを選んでいるつもりです。
ウィック はい、はい、
まさにそういうことだと思います。
糸井 あと、たまにね、応援することば、
「これはかんたんだね」とか
「どんどん行くよ」とか、
読んでいる子どもたちを応援するようなことばを
つけ加えたりしています。
だから、オリジナルの英語版よりも
日本語版の『ミッケ』のほうが
そういう応援のことばが多くなってると思う。
ウィック ああ、それはいいですね。
励ましたり勇気づけたりするようなことって
私も好きです。
(つづきます)
 
こんなものをつくってみました。 すごく時間があまってたらあそんでください。  ほぼにち ミッケ!
2013-02-26-TUE
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