現代美術作家の加賀美健さんと、
とりとめもなく、おしゃべりしました。
はたらくことや仕事の話、
アートについての加賀美さんの考え、
突然のようにはじまった
「死ぬ」についての、あれやこれや。
あったはずの「理由」や「目的」は
途中でどっかに置き忘れ、
勝手気儘なインタビューとなりました。
じつに楽しかったので、
全6回にわけて、おとどけします。
担当は「ほぼ日」奥野です。

>加賀美健さんプロフィール

加賀美健 プロフィール画像

加賀美健(かがみけん)

現代美術作家。1974年、東京都生まれ。社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、彫刻、絵画、ドローイング、映像、パフォーマンスなど、メディアを横断して発表している。2010年に、代官山にオリジナル商品などを扱う自身のお店(それ自体が作品である)ストレンジストアをオープン。 instagram:@kenkagami

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第3回 辞めずにやってたら。

──
タカ・イシイギャラリーの石井さんが、
ミルクマンのドローイングを
気に入ってくださったのがきっかけで。
加賀美
たまたま、知っててくれていたんです。
ミルクマンのこと。
たぶん、雑誌か何かに
チョロっと出たのを見てくれたんです。
──
スタイリストになるのを辞めて、
アーティストになろうって決めてから、
どれぐらいで
ミルクマンが採用になったんですか。
加賀美
スタイリストのアシスタントを辞めて
サンフランシスコに行ったんです、
1年半ぐらい、うちの奥さんと一緒に。
学生ビザを取って、
アシスタント時代に貯めていたお金で。
──
それは、あてどもなく?
加賀美
いちおう、英語の学校に入ったんです。
でも、英語が、まったくわかんないし、
たまに日本人がいたと思ったら、
なんでだか英語で話しかけてくるしで、
「イライラするなあ、もう行かねえ!」
って(笑)。
──
ははは(笑)。気持ちはわかります。
加賀美
それで、学校に行かなくなっちゃって、
毎日、サンフランシスコの
ホームレスの人がいっぱい集まってる
おもしろいところがあるんですけど。
そこで、ゴミみたいなおもちゃとか、
1ドルで買える洋服とか、
ホントにゴミとか、そういうのを
おもしろい人たちと探したりとかして、
作品をつくったりしていたんです。
──
へええ。
加賀美
思えば、そこが原点かもしれないです。
そうするなかで、サンフランシスコで
ミルクマンも生まれたんです。

──
はたらかないと食えないという思いで
ずっと、やってこられて‥‥。
加賀美
ええ。
──
これこそが自分の仕事だ‥‥みたいな
職業意識って、
いつごろから芽生えていくんですか。
「俺の仕事は、これだ」という意識は。
加賀美
最初からあったと思いますよ。なぜか。
いや、もちろん「仕事」と言ったって、
誰かが何かを頼んでくるわけでもなく、
作品だって、
そうそう売れるわけでもないから、
さっきも言ったように
バイトしながらやってたんですけどね。
──
お金を稼いでるのはアルバイトだけど、
自分の「仕事」は、アートだと。
加賀美
ちょっとずつ、ちょっとずつ、ですよ。
辞めずにやってたら、
いろんな人が見てくれるようになって、
ちょっとずつ仕事になって、
どこで知ったのかわからないけど、
海外の人が展示で呼んでくれたりとか、
そういうことの積み重ねですね。
──
急にうまいことは、いかなかった。
加賀美
そうです。若い子にもそう言ってます。
それくらいですし、ぼくが言えるのは。
どうすれば
海外から呼んでもらえるんですかとか、
若い子に聞かれることもあるけど、
そんなのは、人それぞれですもんねえ。
──
とりわけアートの場合って、
人と同じことしててもダメでしょうし。
加賀美
うん。まあ、だから
「とりあえず10年くらい続けたら?」
くらいは言うんですけどね。
でも、そうすると
「えっ、10年もですか?」って来る。
──
長いと。
加賀美
でも、10年やったら、11年めから
仕事が来るかもしれないよって
言ってみても、
「3か月後ぐらいに来ないですかね?」
みたいな子もいたりとか。

──
実際、いまの時代は
3か月後くらいに来ちゃう人なんかも
身近にいるんでしょうね。
加賀美
仮に、
3ヶ月後に「来る」方法があるとして、
流行とか社会の動きを読むとか、
そんなのとは
何にも関係ないことしてるんで、ぼく。
──
聞く人を間違えてる(笑)。
加賀美
そうそう。
──
流行り廃りとは関係ないところから、
着想を得ているんですか。
加賀美
まあ、そうですね。
たとえば、外で見かける変な人だとか。
道に落ちてるゴミとか、ウ○コとか、
そういうのをつねにチェックしていて、
そこからアイディア拾ってるつもり。
──
知る人ぞ知るあの映画ですとかでなく。
加賀美
ないない。どういう映画とか音楽、
ファッションに影響を受けましたかと
聞かれますけど、
そういうのは、ほんとないんですよね。
──
あの手書きの言葉のシリーズって、
あれ、加賀美さんそのものですもんね。
加賀美
そうですかね(笑)。
──
いや、すごくいいと思うんです。
誰もやってないし、あんなこと。
加賀美
日本語でTシャツつくったりとかも
もう10年くらいやってるけど、
やりはじめた当初は
「おもしろいけど着れないね」って、
よく言われてたんです。
──
いまや、あのTシャツは
加賀美さんの定番アイテムですけど。
加賀美
だから、さっきの話に戻りますけど、
辞めずにやってたら、
「ロゴ、加賀美さんの手書き文字で」
なんて依頼も来るようになって。
つまり、続けていれば、
それくらい「ひっくり返る」瞬間が
来ることもあるんです。
──
辞めていたら、なかった仕事ですね。
ちなみに、あの日本語のシリーズで
最初に書いたのは‥‥。
加賀美
「実家帰れ」ですね。
──
ああ(笑)、あそこからですか。
じゃあ、ずいぶん長持ちしてますね。
最初の作品。
やっぱりインパクトあるからですね。
加賀美
グラフィティのクルーに入っていて、
ぼく。海外のD.F.W.っていう。

──
えっ、あー、有名ですよね。
加賀美
日本人は、ぼくひとりだけなんです。
英語のグラフィティが並んでるなか、
1個だけ「実家帰れ」って、
絶対目立つでしょ。おもしろいなと。
──
そうやってできたんですか。
加賀美
はじめは「なんでそんなこと言うの」
とか
「せっかく、実家から出てきたのに」
とか、
「がんばっている人に失礼」とかね。
──
そんな反応もあったり(笑)。
加賀美
おもしろいねって言ってくれる人もいれば、
「実家に帰ろうと思ってる人の
背中を押してやるメッセージかもしれない」
とか
「ちきしょう、絶対に帰ってたまるか!」
とか
「たまには母ちゃんに電話してみようかな」
とかね。
反応は、いろいろですよね。やってるとね。

(つづきます)

2020-12-28-MON

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