これは一通のメールから実現したコンテンツです。
千葉県佐倉市の「国立歴史民俗博物館」ではたらく
女性から届いたそのメールは、
中止になった企画展の図録を
「ほぼ日カルチャんWEBショップ」で
販売できないでしょうか、という内容でした。

企画展のタイトルは、「昆布とミヨク」。
ミヨク?
韓国語で「わかめ」という意味だそうです。
つまり「昆布とわかめ」。
どういう企画展が開催されるはずだったのか、
メールをくださった玄角愛さんと
企画展の担当者、松田睦彦さんにお話をうかがいました

インタビューをお読みいただく前に、呼びかけをひとつ。
「ほぼ日カルチャんWEBショップ」での
販売を希望する方の募集を、この機会にはじめます。

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インタビュー #1

この図録を、広めなければ。

───
メールではやりとりをしていましたが、
玄角さん、はじめてお目にかかります。
玄角
はじめまして、本日はありがとうございます。
───
こちらこそありがとうございます。
そしてこちらが、松田睦彦先生。
松田
はい。
どうぞよろしくお願いします。
───
よろしくお願いいたします。

───
まずは玄角さん、
メールをありがとうございました。
玄角
いえ、なんだか出しゃばってしまって‥‥。
───
いえいえ、そんな。
でもまずは、そのことについて
ご説明したほうがよろしいですね。
玄角さんはこのインタビューを
最初、ご辞退しようとされました。
玄角
はい。
───
展示を担当する先生方がいらして、
図録を作成する職員さんもいらっしゃるのに、
その方々をさしおいて
自分が出てお話をするのは申し訳ないと。
玄角
わたしは、
歴博(国立歴史民俗博物館)の事務所で
「友の会」を担当する、いちスタッフですので。
───
無理なお願いをすみませんでした。
でも、そういう方にこそ
お話をうかがいたいと思ったんです。
松田先生、
ひとつの展示を実現するためには
多くのスタッフが関わっているわけですよね。
松田
そうですね、おっしゃる通りです。
───
玄角さんのお仕事は
「友の会」のご担当ということですが、
その「友の会」というのは?
ファンクラブのようなものでしょうか。
玄角
ええ。歴博のファンクラブ的なものです。
会員になると情報が届いたりだとか、
先生方の講座を受けられたり。
それと、「友の会」の他に
ミュージアムショップも担当しています。
───
なるほど。
そのミュージアムショップで、
図録を販売しているのですね。
玄角
はい。
わたしは、「この図録を届けたい」
という思いが強いだけのスタッフで、
専門的なことはなにもわかりませんので‥‥。
───
というふうにご謙遜されるのですよ、
松田先生。
松田
(笑)。
───
そこで、専門的なところは
この企画展を担当された先生に
おうかがいしようということになりました。
松田先生、そういう流れでございます。
松田
わかりました。
───
松田先生は、
国立歴史民俗博物館の先生でいらっしゃる。
松田
そうですね、歴博の研究部に所属しています。
───
企画展、
「昆布とミヨク」のご担当者で。
松田
はい。
───
昆布とわかめを切り口に、
日本と韓国の生活文化を比較するという
その展覧会の内容に興味津々なのですが‥‥
すみません松田先生、
くわしくうかがう前に、
もうすこし、このご縁をつくってくれた
玄角さんに質問をさせてください。
松田
もちろんです、どうぞ。

───
玄角さん、
「ほぼ日刊イトイ新聞」のことは
以前からご存知だったのでしょうか。
玄角
はい。
学生の頃から
毎日のように読ませていただいています。
───
ありがとうございます。
ちなみにどういうコンテンツを?
玄角
いろいろですが‥‥
「今日もフグは。」とか。
───
ありがとうございます(笑)。
そんな「ほぼ日」がたちあげた
「ほぼ日カルチャんWEBショップ」に
メールをくださったのは、
やはりせっかくの図録がもったいない
というお気持ちからですよね。
玄角
そうですね、はい。
───
図録は、いまお手元にありますか?
玄角
はい。
これです。

───
おおー。
中身をすこし見られますか?
こう、ぱらぱらとひらいていただいて。
玄角
こうでしょうか‥‥(ぱらぱらとひらきながら)
写真がですね、とてもきれいなんですよ。

───
これは、魚?
玄角
ええと‥‥カタクチイワシ、ですか? 先生。
松田
これは、きびなごですね。
きびなごを塩で漬けたものです。
───
すごい。
たしかに写真がたっぷりですね。
玄角さんは、もう隅々まで読まれた。
玄角
ええ、隅々まで(笑)。
わたしは学術的なことはわからないんですけど、
おもしろかったです。
───
どういったおもしろさを感じたのでしょう。
玄角
そうですね‥‥
日本と韓国の違い、ということではなくて、
ええと、なんて言えばいいのか‥‥
───
はい。
玄角
‥‥たとえば、こういう海女さんの服とか。

───
海女さん。
これは日本の、どの地方の海女さんですか?
玄角
この方たちは韓国の海女さんなんです。
───
あ‥‥。
へえーーー、そうなんですか。
松田
昔の写真なので、
正確には朝鮮の海女さんですね。
現在の韓国、済州島の海女さんが
日本の海に潜ったときに撮った写真です。
この海は愛媛県です。
日本に出稼ぎに来て、当時は各地で潜っていました。
───
ぜんぜんしらなかったです。
松田
いま、房総半島の内房には
海女さんが数人しかいないんですが、
それはすべて韓国出身の方です。
───
へえーー。
玄角
海女さんの服もそうですけど、
漁の道具ですとか、食の文化とか、
いろいろな面で、
日本と韓国がお互いにいいものを
受け入れているような感じがしました。
───
図録を読んで、違いを知るというよりは、
どう影響を与えあったかがおもしろかった。
玄角
そうです。
ほんとに、いい図録なんです。
写真のきれいさ、
読みやすさ、わりやすさ。
知識が乏しいわたしでも見入ってしまうというか。
これはぜひ広めなくてはと思いました。
それで、わたしにやれることは何かと考えて‥‥
───
わたしたちにメールをくださった。
玄角
はい。
───
ぜひ、販売のお手伝いをさせてください。
玄角
ありがとうございます。

───
玄角さんは、展示を見られましたか?
玄角
残念ながらわたしは、
実際に展示を見ることができなかったんです。
───
そうでしたか。
でも、いまからでも見られるのでは‥‥。
松田
いや、それがですね、
4日ほど前に片付けてしまったんです。
───
‥‥あ。
もう、ない。
松田
ないんです。
すべて片付けました。
5月17日が、そもそもの最終日でしたので。
───
そうですか。
けっきょく、一度も開放することなく。
松田
ええ、そういうことになります。

(つづきます)

2020-06-03-WED

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    『昆布とミヨク
    潮香るくらしの日韓比較文化誌』

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