「あ、はい、毎月払ってます」
「その年金ではなく、生きものの粘菌」
「菌類、ですか?」
「違います」
「細菌」
「違います」
「バイキン」
「違います」
「ねばねばした菌」
「惜しいけど、違います」
「粘菌って名前のくせに!」
おそらく、読者の皆さまに、
「粘菌を知ってますか?」と質問したら、
こんな感じの会話になるのではないかと……。
「粘菌」と、文字にすれば、
ああ、何か、菌の仲間のことかな?
とか、いろいろ想像できると思いますが、
会話の中で「ねんきん」という言葉を使ったら、
国民年金や厚生年金の「年金」をイメージしないでね、
という方が難しいかもしれません(笑)。
ここで、拙著『粘菌生活のススメ』の
カバー写真をご覧あれ。
コケに覆われた倒木です。
いちばん左の白いのが、タマツノホコリ。
真ん中の赤が、クダホコリ。
右のピンクの粒粒が、マメホコリ。
![](images/p_01/01.jpg)
・色も形も多様な粘菌
左側の白いタマツノホコリは珊瑚のような形。
真ん中の赤いクダホコリはまるで剣山。
右側のピンク色のマメホコリはまんまる。
粘菌の子実体は、色や形が多様で、
しかも、成熟するに従ってどんどん変化するので興味がつきません。
どうです?左側の白いタマツノホコリは珊瑚のような形。
真ん中の赤いクダホコリはまるで剣山。
右側のピンク色のマメホコリはまんまる。
粘菌の子実体は、色や形が多様で、
しかも、成熟するに従ってどんどん変化するので興味がつきません。
これが、粘菌です!
美しいでしょ。
名前の末尾が「~ホコリ」となっているのは、
多分、ホコリのような胞子で、子孫を残すから。
(その昔は「~ホコリカビ」という名前でした)
名前も変わっていますが、生態もすごく変わっています。
これを機に、ぜひぜひ、
粘菌のことをお見知り置きくださいませ。
本当に、美しくて、変で、面白い生物なんです!
さてさて。
粘菌は、別名、変形菌とも言い、
「菌」という名前が付けられていますが、
菌類ではなく、かといって、動物でも、植物でもなく、
アメーバ動物の一種とされています。
ちなみに、きのこやカビなど「菌類」と、
大腸菌やビフィズス菌など「細菌類」は、
名前に「菌」がついていますが、まったくの別種です。
アメーバは、皆さん、よくご存知ですよね。
すんごく小さくて、単細胞で、
伸びたり、縮んだり、常にうごめいたりしていて、
形があるような、ないような、びよ~んとしたあの生物。
粘菌は、そいつらの仲間なんです。
粘菌はきのこやコケと同じく胞子で子孫を残します。
飛散した胞子が条件ピッタリの場所に着地すると、
中からじゃじゃじゃ~んとアメーバが生まれるんです。
(これを「粘菌アメーバ」と言います)
で、アメーバは、餌を食べてどんどん大きく成長し、
(玩具のスライムのような状態で「変形体」といいます)
機が熟すると、きのこのような子実体になっちゃって、
つくりだした胞子を、世界へ向けてぶわぶわっと放出。
で、また、その胞子からアメーバが生まれる、と。
![](images/p_01/04.jpg)
・粘菌の変形体(種類不明)
粘菌の白い変形体が、餌を求めて、倒木の上を右側から左側へ移動中。
大きく「ダマ」のようになっている部分には、
餌が豊富にあると思われます。
動くスピードは時速数cm程なので、
動いているのを確認するのは難しいかも。
つまり、粘菌は、その一生のうちに、粘菌の白い変形体が、餌を求めて、倒木の上を右側から左側へ移動中。
大きく「ダマ」のようになっている部分には、
餌が豊富にあると思われます。
動くスピードは時速数cm程なので、
動いているのを確認するのは難しいかも。
アメーバのような動物的な時期があれば、
きのこのような菌類的な時期もあるんです。
めっちゃ、不思議!
![](images/p_01/02.jpg)
・ムラサキホコリの未熟な子実体
倒木の中で生活していた変形体は、
子実体をつくるときになると、明るく乾燥した場所へ這い出てきます。
そして、アメーバのような形態が小さな粒に分かれ、
その粒の一つひとつが上に伸び上がって、
アイスバーのような形の子実体を形成します。
「粘菌」という言葉は、倒木の中で生活していた変形体は、
子実体をつくるときになると、明るく乾燥した場所へ這い出てきます。
そして、アメーバのような形態が小さな粒に分かれ、
その粒の一つひとつが上に伸び上がって、
アイスバーのような形の子実体を形成します。
英語名 slime mold の訳語です。
「変形菌」は、姿を変える一生を送ることからの命名。
今のところ、「粘菌」も「変形菌」も、
同じくらいの頻度で使われています。
![](images/p_01/03.jpg)
・アオモジホコリの変形体(右側)と子実体(左側)
変形体は、網目のように広がって、
バクテリアや菌類などを捕食します。
餌が豊富なときは、管の太さや間隔はほぼ同じようになるそうです。
アオモジホコリは、束状にはならず、
一つひとつが独立したようなピン形の子実体を形成します。
ぼくは、何故、「変形菌」ではなく、変形体は、網目のように広がって、
バクテリアや菌類などを捕食します。
餌が豊富なときは、管の太さや間隔はほぼ同じようになるそうです。
アオモジホコリは、束状にはならず、
一つひとつが独立したようなピン形の子実体を形成します。
「粘菌」という用語を使っているかというと、
単にこちらの方が好きだからです(笑)。
![](images/p_01/05.jpg)
・3種類の粘菌が勢揃い
腐りかけてじめじめしている倒木は、
餌となるバクテリアや菌類が豊富にいるので、
粘菌たちにとって最良の生息環境。
左側の茶色いアイスバー状の粘菌はサビムラサキホコリ、
黄色い玉はヌカホコリ、白いのはエダナシツノホコリです。
腐りかけてじめじめしている倒木は、
餌となるバクテリアや菌類が豊富にいるので、
粘菌たちにとって最良の生息環境。
左側の茶色いアイスバー状の粘菌はサビムラサキホコリ、
黄色い玉はヌカホコリ、白いのはエダナシツノホコリです。
![](images/p_01/06.jpg)
・ダテコムラサキホコリの未熟な子実体
これも倒木の上。子実体の白い部分は子嚢(しのう)と呼ばれ、
ここで胞子がつくられます。
細く黒い柄に「皮膜」があるのが、
ダテコムラサキホコリの最大の特徴。
子実体はとても小さく、高さは1cmもありません。
これも倒木の上。子実体の白い部分は子嚢(しのう)と呼ばれ、
ここで胞子がつくられます。
細く黒い柄に「皮膜」があるのが、
ダテコムラサキホコリの最大の特徴。
子実体はとても小さく、高さは1cmもありません。
![](images/p_01/07.jpg)
・サビムラサキホコリの子実体
まさに、使用前、使用後、という感じですが、
左側が乾燥して胞子をたくさん蓄えている子実体で、
右側は胞子が飛散してしまって、子実体の枠組みとも言える、
細長い網状の細毛体(さいもうたい)だけが残った状態。
まさに、使用前、使用後、という感じですが、
左側が乾燥して胞子をたくさん蓄えている子実体で、
右側は胞子が飛散してしまって、子実体の枠組みとも言える、
細長い網状の細毛体(さいもうたい)だけが残った状態。
![](images/p_01/08.jpg)
・エダナシツノホコリの子実体
エダナシツノホコリは他の粘菌とは違って、
胞子を、子嚢(しのう)という袋の中にはつくらず、
成熟した子実体の外側に形成します。
写真をよくみると、子実体の1本1本に、
ホコリのような胞子がついているのが確認できます。
エダナシツノホコリは他の粘菌とは違って、
胞子を、子嚢(しのう)という袋の中にはつくらず、
成熟した子実体の外側に形成します。
写真をよくみると、子実体の1本1本に、
ホコリのような胞子がついているのが確認できます。
![](images/p_01/09.jpg)
・マンジュウドロホコリの子実体
銀色の金属光沢を持つ外皮膜が破れ、むき出しになった茶色い胞子が、
風でどんどん遠くへ飛ばされていきます。
マンジュウドロホコリの子実体は、
粒状にはならずにひとつの塊と化し、
直径10cmくらいの大きさになるものもあります。
(次回に続きます)
銀色の金属光沢を持つ外皮膜が破れ、むき出しになった茶色い胞子が、
風でどんどん遠くへ飛ばされていきます。
マンジュウドロホコリの子実体は、
粒状にはならずにひとつの塊と化し、
直径10cmくらいの大きさになるものもあります。