ネパールでぼくらは。

#19書き手が四人だと思ってませんか?
いえいえ、まだいるでしょう?
写真家にして、まっすぐな文章が、
たくさんの人の心を打ち抜く書き手。
幡野広志さんがつづった旅の断片をふたつ。
今回はとりわけ魅力的な写真とともに。

バンコクからの機内

(幡野広志)

日本からネパールへの直行便はなく、
タイを経由する。
バンコクからカトマンズに向かう機内で、
ぼくの席の前に1歳ぐらいの子どもがいた。
席と席のすき間から
ずーーーっとぼくに笑いかけてくれて、
とてもかわいい。
これが日本国内の飛行機だったら、
親が周囲に気をつかって謝ったり、
もしかしたら不快になる人もいるかもしれない。
ぼくが席のすき間から遊んであげていると、
ぼくのとなりに座っていた
ネパール人のお兄さんも一緒に遊んでくれた。
子どもが眠ったころに、
ネパール人のお兄さんがぼくに笑顔で話しかけてきたけど、
なにをいってるかまったくわからない。
なにをいってるかまったくわからないけど、
ネパールに来てよかったと入国する前に感じた。

入国する

(幡野広志)

もうすぐネパールに入国する。
ぼくは旅が好きだけど、
旅先でホームシックになるちょっとめんどうなタイプだ。
息子に会いたい気持ちをおさえて、
ビザの申請窓口に並んでいる。
手にはビザの申請費用の25ドルがある。
モノポリーの影響なのか、
アメリカドルっておもちゃっぽく感じる。
ぼくの順番がきた。
申請書類とパスポートを渡し、
カウンターにすばやくUSダラーをおく。
ネパール人の係員にカタコトの日本語で
「3000えんネ」と言われる。
「アメリカドルでもいい?」と返事すると
「イイよ」と返された。
日本語のカタコトぐあいが2歳半の息子とそっくりで、
息子に会いたくなった。
入国そうそうホームシックになってしまった。

明日につづきます。

2019-07-01-MON

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