ネパールのおいしいコラム2ホテルの朝食、最高のオムレツ
(山田英季)※コラム内の写真も撮影

3日目の朝、
目覚まし時計のアラームではなく、
鶏の「コケコッコー!」という
リアルなアラームで目を覚まし、
朝食を食べるためにホテルの食堂へ。
僕が注文したのは、ネパールらしい朝食セット。
ロティという全粒粉を捏ねて作った
薄い円盤状のパンと
タルカリという野菜のカレーだ。
出てくるの待ちながらメニューに目をやると
「オムレツ」という文字が目に飛び込んできた。
そこにはプレーンオムレツとマサラオムレツと書かれていて、
「マサラオムレツ」というはじめてのおいしそうな響きに
絶対に食べたいと思った。
急遽、オムレツを追加してもらい待つこと数分、
僕の前に現れたのは、
想像していた楕円の丸々と太ったオムレツではなく、
薄く焼かれた薄焼きたまごだった。
「えっ、これか」と少しガッカリしながら口に入れると、
その見た目と裏腹に卵の甘みとコクが
滝壺のように舌の上を暴れ回った。
「なんだこのオムレツは?」
マサラというからには
スパイスが卵を劇的に美味しくしたのか、
はたまた僕の知らない現地のおいしい油があり、
それを絶妙な量でフライパンに
落としてから焼き上げたのか。
一瞬のうちに色々なことを考えたがどれもしっくりこない。
もうひとくち食べた時に糸口が見えた。
卵そのものがおいしいのだ。
またもうひとくち、混ざりきっていない
白身の部分を食べるとそれは確信に変わった。
白身の部分までしっかりとコクがある。
そして、僕は気づくのである。
今朝の目覚めのアラーム音、
リアルコケコッコーが産んだ卵を
今、自分が食べていることを。
なんという最高においしい伏線を
用意するホテルなんだろうか。