ネパールでぼくらは。

#55学校の近くの生徒さんの家で、
のんびりした時間を過ごした。
家の中を見せていただく。
あらためて、ネパールの生活を知る。
久しぶりに泰延さんのコラムも。

石臼と山羊。

(古賀史健)

ネパールの子どもたちは、みんなかわいい。
とくにあれはなんと言うんだろう、
耳あてのついたニット帽をかぶった子どもたちが、
ほんとうにかわいい。

女の子の部屋に案内されると、
そこにはトウモロコシを挽く石臼が置かれていた。
ネパールにおいて、
家のこと全般は女性の仕事で、
たとえばこうした石臼を使ったことのある男性は、
ほとんどいないはずだとシャラドは言っていた。

続いて案内されたのは、
水牛や山羊の飼われたちいさな小屋。
「あ、ネパールでは山羊のミルクも飲むの?」
ぼくの質問にシャラドはさらりと答える。

「いえ。そんなに飲まないと思います。
 この山羊はたぶん、食用です」

ああ、当たり前のことだけど、そうだよな。
自分たちがのちに食べるための動物を、
こうやって家の敷地内で飼って、
毎日しっかり世話をして、
どこかのタイミングでそれをさばいて、
家族みんなで分け合うんだよな。

ぼくたちが「見えないところ」に
追いやってしまっているいろんなことを、
ネパールの人びとは生活の「見えるところ」に、
いまも置いているだけなんだよな。

Sleeping

(田中泰延)※コラム内の写真も撮影

ネパールでは、やたらめったらみんな寝ている。

地震のせいで瓦礫になってしまった家でも、
グーグーと寝ている家族もいた。
日本人なら
「寝てる場合ちゃうやろ。とりあえず片付けようや」
になると思うが、
「とりあえず寝る」選択をするところに好感が持てる。

なんの動物かわからないが、
「寝ている動物」で間違いない。

無防備だが、盗まれるものも持ってなければ、
みんな盗む気もなさそうだ。
だれでもそっと眠らせてくれるのがいい。

食いながらでも、寝る。

ああ、いいなぁ。移住しようかな。

明日につづきます。

2019-08-20-TUE

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