
一人でお茶を飲むとき
(浅生鴨)
今日は随分と寒い。
まだ手が悴んでいて文字が書きづらい。
みんなは朝からお寺を観に行くのだと
連れ立って出かけたから、
僕はいま一人ホテルのホールでお茶を飲んでいる。
もちろん飲んでいるのはチヤだ。
正直にいうと僕は観光地というか、
ランドマークをみんなでいっしょに見ることが
あまり好きにはなれない。
どこかにひねくれた気持ちがあって、
そういう態度をとっているのだろうけれども、
もともと人の多いところが苦手だということもあるし、
観光スポットになっている場所よりも、
その街での暮らしそのものに興味を惹かれるからでもある。
観光スポットはどちらかといえば、
僕たちによそ行きの顔を見せている気がする。
それはそれで面白いし、
その街の、その国の文化や歴史を
コンパクトにまとめて伝えてくれるわけだから、
本当はそういった場所も
積極的に訪れるほうがいいのだろうけれども、
あまり観に行こうという気にはなれないのだ。
有名な建物の前をたまたま通り過ぎるだとか、
偶然観光スポットに行き当たるとか、
家族に無理やり連れていかれるとか、
そういうことでもない限り、
ほとんどの場合には自分の意思で
わざわざ向かう気にはならない。
特に宗教的な施設には、
それが重要なものであればあるほど、
そこに集まっている人々の本気が怖くて、
僕は近寄りがたさを感じてしまうのだ。
とまあ、そんなことを言いながらも、
興味関心のある場所になら
きっと意気揚々と向かうわけで、
たぶん単にみんなと一緒に出かけるのが
ちょっと照れくさかったのだ。
中学生じゃあるまいし、
何を言っているのだろうと
自分でもバカバカしく思うのだけれども、
こんなふうに孤独を好む癖が僕にはある。
でもこれが僕には必要な時間なのだ。