ほぼ日 |
実際に遊んでみて思ったんですけど、
非常に操作性がいいですよね。
ゲームボーイアドバンスは横長にすることで
操作性のよさを実現しましたが
このSPは、ふたたび縦長になったにもかかわらず
非常に使いやすい。違和感がないですね。
そのあたりは、やはり、苦心したのでは? |
杉野 |
操作性をよくしていくデザインは、
いちばんしんどかった所ですよ。 |
伊吹 |
キーの感触とか、キーのレイアウトとか、
試行錯誤を繰り返しました。 |
杉野 |
単純そうに見えてね、
コンマ1ミリの違いのモデルを
何コも作るっていうやり方ですよ。 |
ほぼ日 |
キーの感触って
ボタンの触り心地のことですよね。
そのために素材からこだわったんですか? |
伊吹 |
キーの素材は今まで通りですよ。
ただ、今回、折りたたみということがあって、
閉じた時のために、
あまり出っ張っていてはいけない。
なので、なるべくストロークを小さくしてます。
ストロークを小さくしても、
従来と同等、もしくはそれ以上の
操作感を維持しようと苦心したんです。 |
ほぼ日 |
へぇーっ、なるほど。
たしかに、クリック感がありますね。 |
杉野 |
そうですね。
表に出てるキーの素材自体は
同じなんですけれど
実は、その下にあるスイッチの構造が
これまでのものとは違います。
今まではラバースイッチを使ってきましたが、
今回はタクトスイッチを使いました。 |
ほぼ日 |
おお、携帯電話とおんなじような
クリック感ですね。
ぷきぷき、って。
十字キーも、現行機にくらべて
クリック感が強いですよね。 |
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杉野 |
SPで現行の
ゲームボーイアドバンスと同様の
使いやすい操作性を
実現するのはたいへんでした。 |
伊吹 |
やっぱり最初のモデルを作ったときは、
使いにくかったですよ。
例えば僕たちボタンにメッキをかけたんですよ。
そしたら、ソフト・チームから
「滑る」と(笑)。
見た目いいけど、滑るよ、って。
そんなふうにして、
数えきれないくらいのモデルを作りましたね。 |
ほぼ日 |
数えきれない数って…? |
伊吹 |
覚えてられないくらいですよ。
例えば基本形状を3つ作るとしますよね。
その3つそれぞれの寸法違いを5種類、
6種類とかって作って。
それを全部組合わせて、
みんなにアンケート取るんですよ。
たいがい嫌がられますよ(笑)。 |
ほぼ日 |
そういう物を実際に作るっていうのは、
手作りでやるんですか? |
杉野 |
専門のところに、データを出して
つくってもらいます。 |
伊吹 |
3次元のデータを
コンピュータで作るんです。
コンピュータ・ソフトで、
まるで粘土細工をするみたいに、
完成予想に近い形をつくることができるんです。
そのデータをもとに、
つくってもらうんですよ。
でもコンマ1ミリの差を見るときは
コンマ1ミリのシールを切って、貼って、
ためして、はずして‥‥ってやってますよ。 |
ほぼ日 |
おお。 |
杉野 |
たぶんみなさんが思われるような、
デザイナーの仕事って、
「こんなかたち」とかって
スケッチ描くことでしょう?
もちろんそれが一番難しく
重要なことなんですが
僕たちの場合、それに費やす時間は
そんなに長い時間ではないんです。 |
伊吹 |
最初の段階で、やりますけれども、
それは最初のコンセプトを決める段階です。
そこにそんなに時間はかかっていない。
それよりも、その後の、
実際にそれを商品化していく段階で、
どれだけ感触が良いとか悪いとかを
確認していく作業の方が、膨大なんですよ。 |
ほぼ日 |
最初のコンセプトを決めて
スケッチを描く段階は
時間の尺で言うと
どのくらいなんですか? |
杉野 |
全体を10とすれば1くらいでしょうか。
次の試作が5ぐらいかな?
で、あとの4は、
実際の金型になっていく上での、
量産に向けての問題点を、
解決していくというところでしょうね。 |
ほぼ日 |
なるほど! |
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杉野 |
量産する上で必ず、
バラつきっていうのがあるんです。
で、そのバラつきをなくすために、
どこをいじればいいのか。
逆に他のところでフォローできないか、
っていうようなところを、
検討していく作業が、
全体の半分近くなんですよ。 |
ほぼ日 |
細かなデザインのこと、
機能のことなどをもっと教えてください。
音は‥‥あ、
センタースピーカーになりましたね。
あれ? ヘッドホン端子が、ないですね。 |
伊吹 |
充電のACアダプタを
差し込む拡張コネクタに、
別売のヘッドホン変換プラグを付けると
使えるようになりますよ。 |
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ほぼ日 |
ほんとにMDプレーヤーのような
印象になりますね。
それにしても、この3色、
きれいですね。 |
伊吹 |
塗料の選択に
時間がかかってるんですよ。 |
ほぼ日 |
塗料に! |
伊吹 |
塗装はすごく薄くて、
はがれやすいものなのですが、
なるべく強度があって
発色のいい塗料を使いました。
色を出すのも、しんどかったですよ。
ある程度輝度を上げ、
素材感がちょっとアルミっぽいとか、
鉄っぽいとか、
そういう上質なメタリック感を出したかった。 |
ほぼ日 |
いいですね、金属感があって。 |
伊吹 |
3色、使っている塗料の、
ベース自体がぜんぜん違うんですよ。 |
ほぼ日 |
色が違うだけじゃないんですか! |
伊吹 |
違います。もう1コ1コ、
それ用に考えられたものなんですよ。 |
ほぼ日 |
じゃ、3種類とも、違うものを使ってるんだ。
こだわりますよね。
そういうこだわりってモノ好きとしては
たまらないんですよね。
たしかにこのブルー、きれいだ。 |
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伊吹 |
ブルーはリフレクト系の顔料です。
光ると青色とか紫になるような
顔料を使っているんです。 |
ほぼ日 |
アドバンスで金とか銀が出ましたよね。
あれとはまた? |
杉野 |
うん、あれともちょっと違う。
銀は銀ですけど、また違う色を作りました。 |
伊吹 |
粒子が細かいですからね。 |
杉野 |
そうだ、これ気づいてもらえるかな。
ネジ穴を隠してるんですよ。
今までそんなことしてない。
ネジ穴に目隠しのゴムを付けてるんです。 |
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ほぼ日 |
なるほどね!! |
杉野 |
二つに折りたたんだときの
衝撃吸収剤にもなる。 |
ほぼ日 |
そういうのが高級感につながってますね。
こんな細かいところにも配慮している。 |
杉野 |
で、これも言い出すの、
けっこう怖かったんです。 |
ほぼ日 |
そういうものなんですか。 |
杉野 |
ネジ穴を隠しましょうよということは、
メンテナンスの時とかに、
いちいちこれ、剥がさないと
いけないですよね。 |
ほぼ日 |
あー! そうか、
そこまで考えなくちゃいけないんだ。 |
杉野 |
新しい冒険には、メリットとデメリットが
絶対あるんですよね。 |
ほぼ日 |
逆に、ビスをデザイン化するみたいなことは?
カルティエの腕時計「サントス」みたいに、
ビスを出してかっこよくするみたいな。
しかしそうすると、
デザイン・コンセプト変わりますね(笑)。 |
杉野 |
「シンプルにしよう」というところから
外れてしまいますからね。 |
ほぼ日 |
隙間の合わせ目も、キレイですよね。
部品数が多く見えないですね。
あ、ここもかわってる。
ボリューム、前はダイヤルだったのが
スライドになっていますね。 |
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杉野 |
これも小型化のためです。 |
ほぼ日 |
ランプはどうして2つあるのかな。 |
伊吹 |
上は、電池が残っているときは緑、
だんだん少なくなってくると赤になって、
最後はシャットダウンします。
下の方は充電中のときに
オレンジのランプがついて、
満充電になるとランプが消えます。 |
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ほぼ日 |
閉まるときの、音もいいですね。
カチッといってから、パカッて。
開いたときも、
止まる角度が決まっていますね。 |
杉野 |
1回パッと止まるところを、
155度に設定してあります。
ただ、そこで止めてしまうと、
万が一、踏んだときなどに
壊れてしまいますから、
180度以上開くようになっていますよ。 |
ほぼ日 |
携帯ゲーム機って、
落としたり、踏んづけたり、
しそうになりますからね。
シンプルってことで言うと、
「POWER」とかって文字すら、
ないんですね。
余分な情報を極力減らしている。
閉じると‥‥Nintendoのロゴがある。
銘板(めいばん)になってるんですね。
あ! 箱もかっこいいですね。
箱も、同じチームで作ったんですか? |
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伊吹 |
そうなんです。 |
ほぼ日 |
これも変わりましたねー!
オモテには、日本語が一切ない。
潔いですね! |
杉野 |
これも、コンセプトが
シンプルっていうところにありますから。 |
伊吹 |
正方形にしたかったんです。
物自体が正方形なんで。 |
杉野 |
写真も使っていない。 |
ほぼ日 |
アドバンスと比べると、
ぜんぜん違う、印象が違う! |
杉野 |
同じ店頭で2つ並んだときに、
同じゲームボーイアドバンスだけども、
違うんだっていうことを
わかってもらいたいですし。 |
ほぼ日 |
充電池はどれくらい持つんですか? |
伊吹 |
3時間の充電で連続10時間です。
ライトをつけなければ、18時間持ちますよ。 |
ほぼ日 |
いろいろお聞きしてきましたが、
この商品には任天堂の新しい可能性を
強く感じました。
個人的で申し訳ないんですけど発売が楽しみです。
3色どれにするか今から迷ってます。
なんだか見た瞬間に欲しいと思えちゃったので。
取材も上の空だったかも・・・(反省)
発表即、見せてもらえてラッキーでした。
ありがとうございました! |