伊達 | 東北の話になると、 ほんとによく糸井さんのお名前を聞くんです。 |
富澤 | そうそう。 |
糸井 | ほんとですか。 どこで聞くんだろう。 |
伊達 | 気仙沼でもそうですし、 (立川)志の輔師匠の落語会のこととか。 あと、うちのカミさんが、 「ほぼ日」が大好きでですね。 |
糸井 | ああ、ありがとうございます。 |
富澤 | スコップ団にも、参加してらして。 |
糸井 | ええ、スコップ団も。 ぼくらはすぐに根をあげてしまいましたけど(笑)。 |
伊達 | いやぁ(笑)、 ぼくらもやりましたけど、大変ですよ。 |
糸井 | ありゃすごいですね。 |
伊達 | いやすごいです、スコップ団は。 花火大会も行かれたんですか。 |
糸井 | 行きました、行きました。 あの花火大会はよかった。 いい曇り方で(笑)。 |
富澤 | そうなんですよ(笑)。 あまり見えないな。でもやるんだと。 |
糸井 | 見えなくても誰も文句を言わない。 いい花火大会だったなぁ。 |
伊達 | はい。 |
糸井 | ぼくらもサンドウィッチマンさんの話は聞きます。 |
伊達 | そうですか。 |
糸井 | とくに気仙沼の安波山に登ると、 かならず誰かが言うんですよ。 「あの日、サンドウィッチマンがいたんです」って。 あとは、どこどこで何やってくれたとか、 みんなうれしそうに語りますよ。 |
伊達 | ああ、ぼくらもうれしいです。 震災後初めて行った時に 「お帰り」って言われたんですよ。 それですごく「あっ」と思って。 もっともっと寄り添わなくちゃいけないなと。 |
富澤 | いまでは「また来たの」って言われますからね。 |
一同 | (笑) |
糸井 | 安波山での話はさんざんしてるんでしょうけど、 どうでした? やっぱり、怖い記憶なんでしょうか。 |
伊達 | 怖かったというか‥‥ すべてがはじめて見るものですから。 沖に波が、波しぶきっていうんですか、 シャワシャワシャワっと‥‥。 あれ何なんだろうな? というのが最初ですね。 でも、そんな大きな津波ではないだろうと。 |
富澤 | そう思ってたんですよね。 |
伊達 | 近づくにつれて、すごく高いというのがわかって。 さっきまでロケをしていた場所が どんどん流されて‥‥。 |
糸井 | おふたりはよく、 すぐに判断して山の上に行きましたよね。 |
富澤 | アンカーコーヒーで取材をして、 出てきて、 前のシャークミュージアムの駐車場辺りで‥‥。 |
糸井 | この揺れはまずいと思った。 |
伊達 | 揺れの激しさと、サイレンも鳴ってましたし、 アナウンスも鳴ってたので、 「一応逃げましょうか」と。 |
糸井 | 一応。 |
富澤 | あれほどの津波がくるとは思ってないので。 |
伊達 | 高台に一応避難しましょうと。 ですから、あの日の気仙沼の映像は、 うちのカメラマンが撮った映像が多いんです。 |
糸井 | そうか。 ちゃんとしたカメラがあった。 もちろん車もあって。 |
伊達 | マイクロバスで山に登って行きました。 |
糸井 | それは何時くらいですか。 |
伊達 | そうですね、2時46分に揺れて、 意外と早かったです。 5、6分後には、もうバスに乗っていましたから。 揺れがおさまったと同時に、 気仙沼の人たちもみんな高台に向かってました。 |
糸井 | ということは、あの町の人達は、 逃げるつもりはたっぷりあったってことですね。 |
伊達 | たっぷりありました。 だからぼくは、 安波山から津波に襲われる町を見て、 全員逃げただろうと思ってたんです。 |
富澤 | ぼくらでさえ逃げてるんだから。 |
伊達 | そしたら、 あんなにたくさん亡くなってる方がいたんで。 |
糸井 | 自分の心の中に、用があった人たちですよね。 |
伊達 | そうですね。 |
糸井 | たとえば、病人がいたとか。 |
伊達 | ええ。 |
糸井 | 消防団の人とか。 |
伊達 | うちのカメラマンは 逃げる車の中でもずっとカメラを抱えて 写しながら走ってたんですけど、 途中で、すれ違う消防車が写っているんです。 |
糸井 | すれ違うってことは‥‥ |
伊達 | 逆に向かってるんです、海側に。 |
糸井 | ああ‥‥。 |
伊達 | その消防車を運転してた方が 亡くなったことをあとで聞きました。 ご家族が映像をご覧になったそうで。 「最後の勇姿が見れてよかったです」と。 |
糸井 | ‥‥いまだからその話を 落ち着いてしゃべれますけど当時は‥‥。 |
伊達 | ぜんぜん落ち着けなかったですね。 |
糸井 | 安波山から降りてきたのは? |
伊達 | 夜の9時くらいです。 |
富澤 | 気仙沼の駅前にある、 ホテルパールシティという所のロビーで。 |
伊達 | そこのロビーのソファで、ぼくらはひと晩。 |
糸井 | そこですこし落ち着けた。 |
富澤 | ただ、そこが安全かどうかも‥‥。 |
糸井 | そうか。わからないですね。 今だから、海から離れてることもわかるけど。 |
富澤 | ここにいて大丈夫なの?っていう。 停電で真っ暗で。 |
伊達 | 余震も激しいですし、空はオレンジ色で燃えてる。 |
糸井 | あの赤い色は‥‥きつかったですね。 |
伊達 | 夜なのにずっと明るいんです。 |
糸井 | そうでしたか‥‥。 ぼくらはテレビで見てただけですが‥‥ あの赤い色は怖かったです。 |
富澤 | うちの嫁さんは東京にいたんで、 あの中に旦那がいると思うと 気が気じゃなかったそうです。 |
糸井 | それはそうでしょう。 あの赤い中にいると思えば。 |
富澤 | はい。 |
糸井 | ‥‥覚えてるもんですね、やっぱり。 |
伊達 | 鮮明に覚えてます、あのときのことは。 |
糸井 | テレビでしか見てないぼくらでさえ、 あの画面をしっかりと覚えてますから。 |
伊達 | ああ、そうですか。 |
糸井 | 面積が大きすぎるんです。 ヘリコプターから中継してる映像も入って、 燃えてる場所を写すんですけど 画面にそれがぜんぶ入っていなかった。 |
伊達 | すごい面積が燃えてました。 |
富澤 | うん‥‥。 (つづきます) |
2014-03-13-THU |
伊達みきお(だて みきお)さんと、
富澤たけし(とみざわ たけし)さんによるお笑いコンビ。
ふたりとも、1974年生まれで宮城県仙台市出身です。
1998年にコンビ結成。
2005年、『エンタの神様』へ初出演。
2007年、『M-1グランプリ』の王者に輝き、
一躍人気者に。
宮城県仙台市の出身で、東北との関わりは深く、
現在は下記の役職をつとめています。
・みなと気仙沼大使
・みやぎ絆大使
・東北楽天ゴールデンイーグルス応援大使
・ベガルタ仙台仙台市民後援会名誉会員
・喜久福親善大使
・宮城ラグビー親善大使
・松島町観光親善大使
サンドイッチマンのテレビ出演情報などは、
おふたりの事務所、
「グレープカンパニー」のサイトでご確認を!
伊達みきおさんのブログ
「もういいぜ!」
富澤たけしさんのブログ
「名前だけでも覚えて帰ってください」