糸井 | 気仙沼の、あの夜に、 安波山から降りてきたんですよね‥‥。 |
伊達 | はい。道路は渋滞で通行止めになってたんで、 すごい獣道みたいなところを 車がぎりぎり1台通れるくらいの道を通って‥‥ |
糸井 | 気仙沼のホテルへたどり着いた。 |
富澤 | はい。 |
伊達 | あのときは、 気仙沼だけがこういう状況なんだと思ったんです。 |
糸井 | ああ‥‥。 |
伊達 | 情報が入らなかったので。 夜中じゅうずっとホテルのフロントに 大きなラジオを置いて ボリュームをあげて、 ろうそくの灯りで聞いてました。 情報元がそれしかなくて。 |
糸井 | 停電してるんですよね。 |
富澤 | 電気はなかったです。 |
糸井 | ということは、寒い。 |
伊達 | 寒いです。 でも石油ストーブがありました。 あとはみんなに毛布が配られて。 |
糸井 | そうか、ホテルだから毛布はあった |
伊達 | はい。 ロビーには 東京からの人がけっこういたんです。 合宿で運転免許がとれるのがありますよね。 それで来てた人たちが ホテルに避難してたんです。 |
糸井 | 合宿で免許、ありますよね。 |
伊達 | で、ホテルのフロントに缶づめが売ってるんですね。 |
糸井 | 缶づめ。 |
伊達 | 缶づめ。 サンマとかサバとか。 それを買ってみんなで食べるみたいな。 なんか、そんなことしてました。 |
富澤 | 何日このままなのかわからないのに、 早めに食べちゃう。 |
糸井 | ああー(笑)。 食べちゃう。 |
富澤 | 食べちゃう。 |
糸井 | わかります、だいたいそうですよね。 腹減ってないのに食べる。 食べといた方がいい! みたいな。 |
伊達 | そうなんです(笑)。 あれなんだったんだろうなぁ‥‥食べちゃう。 |
糸井 | 食べちゃう(笑)。 |
伊達 | ぜんぜんお腹すいてないのに。 |
富澤 | 食べちゃう。 |
伊達 | なんでだろう‥‥ ああいうとき人は食べるんですねぇ。 |
糸井 | ねぇ(笑)。 |
富澤 | 食べちゃったなぁ。 |
伊達 | ホテルにレトルトのカレーの 自動販売機があって、 普段はぜったい食べないんですけど‥‥ |
糸井 | 食べちゃう(笑)。 |
富澤 | へえー、こんなのあるんだぁつって。 |
伊達 | ちょっと食べてみるかつって。 ぜんぜん腹減ってないのに。 |
富澤 | 食べちゃう。 |
伊達 | 「ん、なかなか旨い」だって。 |
一同 | (笑) |
糸井 | わかるわぁ(笑)、 なんでそんなことするんだろうねー。 |
伊達 | 食べちゃうんですよ。 |
糸井 | ぼくは気仙沼に行ったとき、 「じゃあね、おやすみ」って言う前に、 かならずコンビニに寄るんです。 夜に原稿を書いたりするんで、 その時間に食べるためのものを買うんですよ。 気仙沼だけじゃなくて、 地方のときはいつもそうですね。 |
伊達 | はい、はい。 |
糸井 | で、宿でパソコンを開いて、 仕事する前に食べ始める。 そんなに食べたくもないのに。 |
一同 | (笑) |
富澤 | あれはなんなんですかね? なんか‥‥食べちゃう。 |
伊達 | なんでだろう? ふだん家では食べないんですけどね。 |
糸井 | コッペパンにジャムとバターを塗ったのとか。 |
伊達 | わかります。 |
糸井 | カールとか、ヨーグルトとか。 |
伊達 | 買うんですよね。 |
糸井 | いつも飲まない味のファンタとか。 だいたい飲みものは1本残りますね。 キャップあけないまま人にあげたり。 |
伊達 | なんなんでしょうね、あれ(笑)。 |
糸井 | なにか本能のスイッチが入るのかなぁ‥‥。 とにかくまぁ、気仙沼の夜、 コンビニ寄らないで済んだことがない。 |
一同 | (笑) |
糸井 | コンビニで市長に会ったりする(笑)。 |
伊達 | 気仙沼市長にですか。 |
糸井 | そうそう、「ピノ」を買ってます。 |
一同 | (笑) |
伊達 | アイスの。 |
糸井 | そう。奥さんが好きなんだそうです。 「あ、どうも糸井さん。 うちのが今、車で待ってるんですけどね」 って言いながら、ピノを1個持ってるの。 |
伊達 | いいですね(笑)、なんかアットホームで。 |
糸井 | こういう話って、 今までたぶん漫才にしてないですよね。 |
伊達 | そうですね。してないです。 |
糸井 | してもいいかもね。 |
伊達 | うーん‥‥。 |
糸井 | しづらかったのはよくわかるんだけど、 なんか、こう、 自分を笑う話だったら、してほしいな。 「なんか食べちゃう」みたいな話。 |
伊達 | 確かに、その話なら面白いかもしれないですね。 |
糸井 | ぼくらも今こうやって サンドウィッチマンのおふたりと 笑いながら話してますが、 こういうことを載せる時期だと思ったんですよ。 |
伊達 | なるほど。 |
糸井 | 笑いながらですが、 ただ事実を語ってるわけですから。 追悼ですって、黙っているよりは、 「何があったの?」とか、 「今思えばどういうことを考えたの?」とか、 それを明るくやりたいなという時期なんです。 |
伊達 | はい。 |
糸井 | 「思い出しついで」をつくりたいのかもしれない。 人間はやっぱり忘れてしまうものだから。 それはちっとも否定しないんです。 だから、忘れちゃうから、 「思い出しついで」をきっかけに 「東北のあの人どうしてるかな」とか 「なにか手伝おうかな」っていうことがあれば、 ほんと、互いに元気でいられますよね。 |
伊達 | ええ‥‥。 そうですね。 (つづきます) |
2014-03-14-FRI |
伊達みきお(だて みきお)さんと、
富澤たけし(とみざわ たけし)さんによるお笑いコンビ。
ふたりとも、1974年生まれで宮城県仙台市出身です。
1998年にコンビ結成。
2005年、『エンタの神様』へ初出演。
2007年、『M-1グランプリ』の王者に輝き、
一躍人気者に。
宮城県仙台市の出身で、東北との関わりは深く、
現在は下記の役職をつとめています。
・みなと気仙沼大使
・みやぎ絆大使
・東北楽天ゴールデンイーグルス応援大使
・ベガルタ仙台仙台市民後援会名誉会員
・喜久福親善大使
・宮城ラグビー親善大使
・松島町観光親善大使
サンドイッチマンのテレビ出演情報などは、
おふたりの事務所、
「グレープカンパニー」のサイトでご確認を!
伊達みきおさんのブログ
「もういいぜ!」
富澤たけしさんのブログ
「名前だけでも覚えて帰ってください」