ソニア | 一緒にお仕事をさせていただく前は、 糸井さんには「ほぼ日」っていう ブランドがあるし、 そこを守るためにも 「絶対これじゃなきゃいけない」っていう 感じがあるのかと思っていたんですけど、 それは違いましたね。 「もの」が新しくなっていくこととか 変化していくことに 不安を持たれていないのが印象的でした。 |
糸井 | ぼくは、もの自体にあんまり ピントを合わせてないんですよ。 もっと、受け手の「人」に合わせてるんです。 ものを使っている人の目とか、 わくわくしてくれる気持ちに対して 働きかけるほうが大事だと思っているので。 |
ソニア | あぁ、なるほど。 すごく自由でオープンな空気を感じましたし、 「ソニアさんのところもこれをやったら 楽しいでしょうし、いいじゃない?」 っていう雰囲気があって、 私もスタッフも、仕事をすごく楽しめたんです。 うちは、まだまだ小さい会社なので、 「ほぼ日」さんのオーダーをいただいたことで、 もう社内が大変なわけですよ。 |
糸井 | ははは。 |
ソニア | いや、ほんとうなんです。 英語版の本体と一緒に カバーもつくることになりましたが、 その量が多いものだから、 スタッフに 「こんなにつくる必要ないんじゃないですか」とか、 「売れなかったらどうするんですか」なんて言われて。 工場も、今までは100個、200個くらいしか つくったことがないところだから、 「えぇーっ」って驚いていましたね。 「これ、間違ってないですか」 って言われちゃうくらいに、 おおきな仕事だったんです。 |
糸井 | そうなんですか。 でも、いっしょに仕事できて おもしろかったです。 |
ソニア | もうずっとしゃべってましたもんね、私たち。 |
糸井 | やっぱりお互いの考えを揃えるほうが重要なので、 会話のキャッチボールをしている時間が 結構長いんですよね。 だって、色を決めたりすることって、 決めようと思ったら2秒で決まるじゃない。 だけど、我々は、あれでもない、 これでもないって言いながら、 延々と話をしていましたね。 近所だから、気軽に会えたし。 |
ソニア | そうですね。 |
糸井 | 会社同士のつきあいというより 直接会っている個人同士の話だったからか、 「ソニアがそんなに言うんだったら それはもうそれでいこう」 っていうこともありましたね。 |
ソニア | そうですね。 やっぱり会社単位というよりは「人」ですよね。 私もうちの会社で商品を仕入れるなら やっぱりきちんとお話をさせていただきたいし、 きちんとコミュニケーションを とりたいと思っているんです。 そうでないと、おもしろくなくなっちゃうし。 |
糸井 | うん、すごくよく分かります。 だから、ソニアさんのオフィスが うちの近所にあるっていうのも とてもよかったと思います。 インターネット上で何億人とつながっても、 実際に会って付き合っている人って 100人以内ですよね。 ネット社会になっても、 現実の世界では付き合う人の人数って、 そんなに変わらないものなんだって、 つくづく思いますね。 英語版の表紙に「手帳」って言葉があるのも、 ご近所さんがしたことだから OKになったんですよ。 離れていたら、 「いいね」とか言わないよ、きっと。 |
ソニア | (笑)近所だからですか。 |
糸井 | いやいや、近所だからっていうのは冗談ですけど、 でもソニアさんの、 これまでのスタイリストとしてのお仕事とか、 今やってらっしゃる、 ご自身のセンスで勝負しているお店とかって、 やっぱり、ぼくらにとってはずーっと、 憧れの場所でもあったわけです。 それが今回、英語版を一緒につくってくださって、 同じ場所に並んでくれたのは 僕たちにとって、誇りですね。 お世辞のように聞こえるかもしれませんが(笑)。 ほんとですよ。 |
ソニア | ありがとうございます。 私、ものをつくっているときに必ず思うのが、 お客さんは 絶対にすべて伝わってしまうということなんです。 自分たちがそのとき思ったことが、 商品にぜんぶ現れちゃう。 |
糸井 | うん、うん、 出ちゃいますねぇー。 |
ソニア | だから、見る人が見たら、 それを感じちゃうし、ごまかせない。 今回つくった英語版の手帳にも、 私たちがそのとき思っていたことが すべて現れていると思います。 だから使ってみて、 もう少し考えたほうがよかったかなって思うことが、 いろいろ出てくると思うし、 これからも改良していきたいなと思っています。 ‥‥もしかしたら、私、 途中で投げ出そうとするかもしれませんが(笑)。 |
糸井 | そんな、 まだこれからじゃないですか(笑)。 でもソニアさんは、 「自分がつくりたいものをつくる」っていう 動機がうすくなってきたころに 自分から去っていく、みたいなところが あるんでしょうね。 ぼくも似たようなタイプですけどね。 まぁ、毎年、お互いの動機を確かめ合いながら 更新していく感じでいきましょう。 なんとなくやってるって いうだけじゃつまんないと思うんで。 |
ソニア | そうですね。 自分たちがほしいものをつくる、ってことを 大事にしていきたいですね。 |
糸井 | じゃあソニアさん、 次は何をつくりましょうか。 手帳づくりが終わって、しばらくは 来年の手帳の打ち合わせをするにも早過ぎるから。 |
ソニア | うーん、手帳Tシャツとか? |
糸井 | えっ? |
ソニア | 社長だけが着る手帳T。 |
糸井 | 手帳T、いいね、2枚だけ作ろうか(笑)。 |
(ふたりの対談は、これで終了です。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。) |
2012-11-12-MON
スタイリング:林道雄 写真:三部正博 |