- 塩野
- 日本みつばちの話になったとき、糸井さんは
「日本みつばちのはちみつって、
なかなか手に入らないですよね」
とおっしゃいました。
ぼくは
「いや、いくらでも手に入りますよ」
と即答した。
なぜ即答できたかというとね、
その前の日に、大曲の花火大会で、
日本みつばちの養蜂をしている人と
いっしょに花火を見てたからなんです。
それは、藤原誠太さんって人なんだけどね。
日本在来種みつばちの会を設立した人。
- 探検隊S
- ‥‥たしか、日本にもともといる
野生の日本みつばちって、
集める蜜の量がすごく少ないんですよね。
- 塩野
- うん。
その誠太さんって人は、盛岡に住んでる。
ぼくは、盛岡で開かれる
ロックコンサートを観にいくときなんかに、
たいていそのまま盛岡に泊まるんだ。
そんな日は誠太と会うのが慣例なわけ。
いつも彼はぼくに、いろんなはちみつを食わすんだ。
「これはどうだ、あれはどうだ、
ラベンダーはこれ、サルビアはこれ」
なんて、一所懸命食わすの。
大曲の花火大会の日も、そんなかんじで
いろいろ話を聞いてた。
誠太は、希少と言われてる
日本みつばちのはちみつが、
じつはたくさんあるんだ、なんて言うんだよ。
- 探検隊S
- 日本みつばちのはちみつって、
たま~に、売ってますけど、
値段も高いし、小さい瓶しかないです。
- 塩野
- 値段は西洋みつばちの
3倍くらいするらしいんだよ。
でも、誠太の話を聞いた直後だったから、
ぼくは糸井さんに
「欲しければいくらでもあるよ」
って、すぐ言ったの。
「いくらでもって、どういうことかな?」と
彼も思ったと思うんだけど。
- 探検隊O
- 日本みつばちかぁ。
- 塩野
- 「じゃ、紹介しましょうか?」」
ということになって。
- 探検隊T
- いまぼくたちが、ここにいる、と。
- 塩野
- これから誠太のとこにも
行こうと思ってるんだよね?
- 探検隊O
- そうです。
- 塩野
- ほぼ日は「生活のたのしみ展」とか、
たのしいこと、やってるじゃん?
ソメイヨシノにせよ日本みつばちにせよ、
ああいうところで、みなさんに舐めてもらったりすると、
それはそれで、
あんづえのおじいちゃんにとっても
誠太にとっても、いいことなんじゃないかなぁと思う。
- 探検隊T
- なにか、興奮してきました。
- 探検隊S
- 私は桜のはちみつを少しいただきましたが、
花のかおりがひろがって、とてもおいしかったです。
ぜひたくさんの人に味をみてほしいです。
- 塩野
- でも、はちみつのおいしさって、
花どうしで比べようがないんだよね。
だって、味がぜんぶ違うんだから。
- 探検隊S
- たしかに、花々の香りを比べるのと同じ。
「すきずき」という感じはします。
- 塩野
- ひところ前までは、
はちみつといえばアカシアが王様で、
ソメイヨシノはそれよかぜんぜん安かった。
あんづえのおじいちゃんも、
アカシアよりソメイヨシノを
安く分けてくれてたんだよ。
- 探検隊T
- あんづえさんとは、昔からのお知り合いですか?
- 塩野
- 同じ町内です。
息子さんのほうと年が近くて、親しくしてました。
いま、息子さんとは化石仲間。
- 探検隊T
- 化石収集のお仲間。
- 塩野
- お父さんが養蜂家だったから、
「食べてみない?」と教えてくれてた。
息子さんといっしょに温泉に行くと、
帰りに「乗せていこうか?」なんて言ってくれる
お父さんだった。
かんたんに言えば、友達のお父さんです。
- 探検隊O
- なるほど。
おいくつぐらいの方なんですか?
- 塩野
- 91歳。
- 探検隊O
- 91歳。
- 塩野
- たぶん、秋田の言葉の‥‥
- 探検隊O
- はい。
- 塩野
- 古語を話されると思います。
- 探検隊S
- 古語。
- 塩野
- すぐ裏のおうちなので、
何かあったら連絡ください。
訳しに行きます。
- 探検隊T
- 「お手あげだ」となったときには、お願いします。
- 塩野
- うん。
ほぼ日で食べものをあつかうときの
いろんなルールもあると思うし、
話が複雑になってわからなくなってきたら、
ぼくを呼ぶといい。
でもさ、こういうことって複雑でさ。
簡単に進むよりは、
てまひまがかかるほうが、
生まれてくるものが大きくなる可能性があるよね。
- 探検隊S
- おっしゃるとおりですね。
- 塩野
- 「はちみつください」
「はいどうぞ」
なんてことじゃ、人間関係もなにも、
おもしろくないもの。
- 探検隊S
- 困りながらやっていこうと思います。
- 塩野
- どうやって解決するかというのも、
ほぼ日らしいじゃん?
- 探検隊O
- はい、がんばります。
それがおいしいはちみつに
たどりつくための道と思って。
- (探検隊、つづきます)
日本みつばちと
西洋みつばちの違いは?
西洋みつばちは、世界中で育てられている種。
品種改良され、蜜を採取する能力が高いので、
花の盛りの時期に一気に採蜜でき、
「単花蜜(おもに1種類の花の蜜)」を
集めることができます。
「ラベンダーの蜜」「とちの蜜」など、
花の名前がついているはちみつがそれにあたります。
日本みつばちは、日本にもともといた、
野性の在来原種です。
貯蜜能力は西洋みつばちの半分から3分の1程度で、
一定量の蜜を集めるのに時間がかかるため、
「単花蜜」はなかなかできません。
日本の風土に相性がよい蜂で、
天敵のスズメバチにも群れで立ち向かいます。
飼育がむずかしく、集める蜜が貴重なため、
高価でしたが、
近年は養蜂技術が進化して、
日本みつばちの蜜も採れるようになってきました。
(こたえ:藤原養蜂場 藤原誠太さん)
2017-10-31-TUE
© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN