私たちはちみつ探検隊は、
作家の塩野米松さんから
「訪ねてみて」と教えてもらった
あんづえのおじいちゃんの家を訪ねることにしました。
塩野さんちのほぼ真裏なので、
歩いて3分ほどの距離でした。
あんづえさんは、この土地でずっと、
桜やトチ、アカシアのはちみつを
採っていらっしゃるとのこと。
大手の会社にも納品しているけど、
自分の家にも少しだけ置いていて、
近所のみなさんがときどき買いに寄り、
とても人気があるらしい。
(それを塩野さんがてみやげに
糸井重里に持ってきてくださったことが、
はちみつ探検隊の活動のきっかけになりました)
問題は、秋田の言葉を、
ほぼ日の探検隊の3人それぞれが
あまり理解できないだろう、ということです。
おじいちゃんは昭和2年生まれ。
ディック・ブルーナさんと同じ年のはずです。
いったいどんな方なんだろう。
東京からこんな3人組がやってきて、
驚かないだろうか。
私たちは少し不安になりながら、無言で、
小雨が降る角館の道を3分歩きました。
ピンポーンという音のすぐあとに、
インターフォンごし+奥から直接、
「はいはいー」という元気な声が聞こえてきました。
見えない。
90歳代に、思・え・な・い!!!
すごくしゃんとしてて機敏で、若い!
60歳くらいの人の動きではないでしょうか。
おしゃべりも早口で反応がよくニコニコで、
もしかして、はちみつによるパワーかしら‥‥?
安心した私たちは、あんづえさんと話をしました。
しかし、ここでの会話は、
前半1時間、ひじょうに難航しました。
なぜなら私たちは
おじいちゃんの話す言葉が
覚悟していた以上にわからなかったからです。
「クリスマスはいずもでやるべ?」
いずも‥‥出雲でクリスマス?
すぐにそれは「いちご」だとわかりましたが、
あんづえのおじいちゃんの、
ものすごくお元気なお声をどうぞお聞きください。
この、おじいちゃんの声を2時間くらい、
シャワーのように浴びていると、
だんだんと言葉がわかるようになってきました。
おっしゃったことをくり返すように
「こういうことですか?」
と訊くと、「んだ」「んだ」と
あんづえさんは応えてくださいました。
そして、蜂の知識のない私たちに対して、
ていねいに教えてくださっていることが
わかりました。
最近、昆虫全体が少なくなってきていること。
花粉交配のできる虫が減っているから、
養蜂家はその役目も責任もあるということ。
あんづえさんの蜂はなるべく数を減らさないように、
環境の影響も配慮しながら、
いろんな場所に避難したり移動したりしていること。
角館の桜の季節は必ず、
この場所で花蜜を採っているから、
来年の春はぜひおいで。
自分は年を取ったから、
知っていることをみんなに教えたいんだ、と。
帰るころ、私たちはみんな、
あんづえのおじいちゃんのファンになっていました。
そして、塩野さんが持ってきてくださったのと同じ、
「角館の桜」のはちみつを、
おみやげに持たせてくださいました。
ひとなめ味をみてみたら、
ふわりと桜のかおりがひろがって、
たいへん華やかなはちみつでした。
これから私たちがはちみつに親しくなるのに、
ぴったりのかわいい味です。
白パンのトーストやヨーグルトに
よく合いそうです。
この桜のはちみつは、きっと人気者になる!
私たちはそう確信しました。
なんといっても秋田角館の、
あのみごとな桜並木のはちみつです。
でも、今年の春に採れた桜のはちみつは、
大部分を大きいはちみつの会社に納品したし、
近所の人にも配ったし、
残りは「大きな缶ふたつ」しかないとのこと。
そのふたつとも、ほぼ日が分けていただいても
いいものでしょうか?
おじいちゃんは
「ああ、いいよいいよ。残りぜんぶいいよ」
と、言ってくれました。
その貴重な桜のはちみつは、
インターネット販売はせず、
六本木ヒルズアリーナで開催する
11月15日~19日の「生活のたのしみ展」店頭だけの
限定販売となります。
きっと来年の春は、おじいちゃんといっしょに
角館でいっぱいはちみつを採って、
ほぼ日ストアでも販売できるようになるといいなぁ。
それまでに、養蜂のこともたくさん
勉強しようと思います。
あんづえさんに別れを告げ、外に出ると、
雨があがって、虹が出ました。
はちみつ探検隊にいいことがありそうな予感。
(あんづえのおじいちゃんの巻、おわり。
次は、盛岡に移動して、
蜂名人の藤原誠太さんにお会いします。
そこでは、あんづえさん以上に
はちみつパワーを感じることになる、
アドベンチャーが待っているのでした)