きのね堂のおかしができるまで。
          きのね堂の「根っこ」のはなし。
神保町の小さな通りに、
行き交う人たちが
「今日は開いてるかな?」と
密かにチェックしているという
クッキー屋さんがあります。
お店の名前は「きのね堂」。

素朴だけどしっかりした味わいの焼菓子は、
一度食べると必ずまた、
ふとしたときに「あれが食べたい」と
思い出すようなおいしさ、といいます。

そんな「きのね堂」と「ほぼ日」がいっしょに
焼菓子のセットを販売することになったので、
店主の中里 萌美(なかざと もみ)さんに、
おいしいおかしができるまでの
ストーリーを聞いてきました。

ビジネスマンのいる街がいい

2023.09.23
――
メールの通販だけだったのが、
「FOOD&COMPANY」の店頭販売が始まって、
なにか変化はありましたか?
中里
FOOD&COMPANYの反響が大きくて、
おかしの依頼が増えました。
オンライン通販も始めたので、
全国から注文してもらえるようになりました。
オンラインの常連さんは
当時からずーっと買い続けてくれる人も
いらっしゃいます。
ありがたいです。
――
きっとおやつにきのね堂のおかしがないと
満足できないんじゃないでしょうか。
くせになっている、というか‥‥。
中里
うれしいです。
だからこれもやっぱり
うれしいから続けられていることですね。
――
そこでなぜ、神保町のお店を
出そうと思われたのですか?
中里
保健所の許可って6年で切れるんです。
だったらそろそろ
恵比寿の部屋を出ようかなと考えて、
そのタイミングでこの物件と出会いました。
神保町か千鳥ヶ淵のあたりがよかったんです。
――
どうしてですか?
中里
流行り廃りを感じない、
会社も住まいもある街がいいと思っていました。
――
会社もですか?
中里
私自身が会社勤めの人との交わりが少ないのと、
会社勤めができなかったぶん
一種の憧れがあるからです。
神保町という街は、
ビジネスパーソンだけでなく、
好きなことを極める人もいるし、学生もいます。
建物もビルのフォントも可愛かったりするので好きです。
ちょっと入ると味のあるお店や通りもあるし。
なんかいいなって。
仕事するならここが合ってると思いました。
――
話は変わりますが、
中里さんは、おかしの腕を
どのような方法で磨いてきたのですか?
中里
とにかく作りました(笑)。
焼いて、焼いて、焼くたびにレシピを書き出して、
よかったレシピを残して、みたいな感じです。
――
習ったりはしなかったですか?
中里
しませんでした。
そういう場所が私は苦手で、
一回、マクロビの学校も行ったんですけど、
合わなくて(笑)。
教わるということ自体、
あんまり得意じゃないんでしょうね。
自分でやるほうが合ってる気がします。
だからとにかく焼いて、レシピを書きました。
――
「理想のおかし」みたいなものはありますか?
中里
これ! っていうものがあるわけではないです。
たまに、食べて「うわ、すごい、
今めちゃくちゃおかし焼きたい!」
という気持ちになる
おかしがあったりするんですけどね。
それも、共通するものがあるわけじゃないです。
でも「作り手がちゃんといる」と感じられる、
そんなおかしが好きなのかもしれません。
――
おかしはずっと一人で作っていたのですか?
中里
恵比寿の部屋は5年くらい借りていたのですが、
最後の1年、2年は、
たまたまそばに住んでいる友人が産休に入って、
「暇だから手伝いに行くよ」みたいな感じで
来てくれていました。
「あんまり人と働きたくないな、
一人のほうが気楽だな」
と当時、思っていたんですけど、
友人はその冬のクッキー缶の包装を
ほとんど担当してくれてとても捗りましたし、
「二人で仕事するのも楽しい!」と思いました。
――
へえ~!
中里
そこで、人と働くのも意外といいなと思いました。
その子は出産するまで手伝ってくれたんですけど、
そのあとも別の友人が手伝いに来てくれました。
その子は今も、きのね堂のスタッフです。
友人と働くと友情が壊れることもあるので
心配だったんですけど、
結果的に適材適所で仕事ができて、
「人と働くのは楽しいし有意義だな」と
思うようになりました。
――
いい距離感、いいバランスを
お互いに保てたのでしょうか。
中里
そうなんです。ここでも運がいいんです。
仕事を通して、
シンプルで当たり前なところに気づいたり、
自分のひねくれた気持ちが薄れたりします。
おいしかったら伝えるとか、
困っていたら手を差し出すとか、
そういうことを
人からたくさんもらってきたと思いますし、
自分もできるようになっていきたいと思います。
(つづきます)
2023-09-23 SAT
イラスト:ZUCK
商品写真:有賀傑

一度食べるとまた食べたくなる‥‥ きのね堂の「焼菓子セット」を
お届けします。

「ほぼ日のおかし」シリーズより
おいしい焼菓子の詰め合わせが登場します。
東京・神保町にあるクッキー屋さん、
「きのね堂」に秋にぴったりな味わいの
オリジナルの焼菓子セットを
つくっていただきました。
お店で定番人気のサブレと、
ピーナッツやクルミなどのナッツがごろごろと入った
秋らしい4種の焼菓子を組み合わせた
ここだけのセットです。
今回は特別にデザインした掛け紙に包んで
みなさまのお手もとにお届けします。
コーヒーや紅茶と合わせるのもおすすめです。
素朴だけどしっかりとした味わいのクッキーで
おやつ時間をお楽しみください。

きのね堂の焼菓子セット3,200円(税込)

2023926日(火)午前11
きのね堂の焼菓子は、ひとつひとつが手焼きのため、
生産量が限られます。
このたびの販売は、
出荷時期を「9月27日~10月31日出荷分」の間、
6回に分けてお届けいたします。
「きのね堂」の焼菓子セット
~5種類のおかしの詰め合わせ~
きのね堂の定番人気のサブレと、
秋らしい味わいのクッキーをあわせた
ここだけのセットです。
それぞれのおいしさを損なわないよう、
種類ごとに包装し、詰め合わせました。
  • メープルサブレ

    メープルサブレ
    やさしい甘みでシンプルな味わいの
    「きのね堂」定番の人気焼菓子です。
    表面にメープルシロップを塗って仕上げました。
  • アーモンドとチョコの酵母スコーン

    アーモンドとチョコの酵母スコーン
    ローストアーモンドがゴロッと入った、
    中はしっとり、外は香ばしい、
    クッキーのように「ギュッ」とした食感。
  • ヘーゼルナッツとコーヒーのサブレ

    ヘーゼルナッツとコーヒーのサブレ
    パウダー状にした
    ローストしたてのヘーゼルナッツと、
    コーヒーを合わせて焼き上げました。
    ふんわり甘く、リッチな味です。
  • ピーナッツクランチ

    ピーナッツクランチ
    ピーナッツをたっぷり味わえるクッキー。
    濃厚でざくっとした食感をおたのしみください。
    ちょこっと乗った塩がアクセント。
  • クルミのクッキー

    クルミのクッキー
    大きめに砕いたクルミをたっぷり入れて
    食感をたのしめるよう、
    ごろっと厚めに焼き上げました。

きのね堂

住所
東京都千代田区神田神保町1-32-22 1F
https://www.instagram.com/kinonedo/
イラスト:ZUCK
商品写真:有賀傑