きのね堂のおかしができるまで。
          きのね堂の「根っこ」のはなし。
神保町の小さな通りに、
行き交う人たちが
「今日は開いてるかな?」と
密かにチェックしているという
クッキー屋さんがあります。
お店の名前は「きのね堂」。

素朴だけどしっかりした味わいの焼菓子は、
一度食べると必ずまた、
ふとしたときに「あれが食べたい」と
思い出すようなおいしさ、といいます。

そんな「きのね堂」と「ほぼ日」がいっしょに
焼菓子のセットを販売することになったので、
店主の中里 萌美(なかざと もみ)さんに、
おいしいおかしができるまでの
ストーリーを聞いてきました。

仕事帰りの「今日のおやつ」

2023.09.24
――
目標にしていなかったとおっしゃっていた、
対面式のお店を構えたのはどうしてですか?
中里
そうなんです、
お店をやりたい気持ちはそんなになかったので、
ここも最初はアトリエにと思っていたんですよ。
――
では、ほんとに恵比寿の部屋の代わりで。
中里
そうです。たまたま物件が路面店だったというだけで。
ここの内装をしてくれた
設計事務所「STUDIO DOUGHNUTS」のおふたりは、
恵比寿のときからずっとお世話になっている人たちで、
ほんとに想像以上のものをつくってくださったので、
「これ、お店開けないとな」と思って(笑)。
――
閉じとくのはもったいないと。
中里
そうなんです。
さらにこの家具も、
「MOBLEY WORKS」の
鰤岡(力也)さんにお願いしたいなと
私はずっと思っていたんですけど、
最初にイメージを伝えてあとはおまかせしたら
こちらが‥‥。
――
すてきです。
中里
それまでは、店を開くと言っても、
不定期で「アトリエ公開日」みたいな感じで
開けようかなと思っていたんです。
でもこの家具が入ったときに、
これはちゃんとやらなきゃ、と思って。
――
では、ややなりゆき、みたいなところも
あるんですね。
中里
そうです(笑)。
それで実際にちょっと開けてみたら、
思いもよらないくらいお客さんが来てくださって。
そこでもう「あ、ちゃんとしよう」と思いました。
と言っても、
できることにどうしても限りがあるので、
今も開けられて週1回とかなんですけどね。
――
お店が開く日は常に
お客さんが並んでいる状態ですよね。
中里
はじめは、
そんなにたくさん作らなくてもと
思ってたんですよ。
並んでくださることは想像していなかったので。
――
たくさんのお客さんに、驚きましたか?
中里
びっくりしました。
「列の整備をどうしよう」と困ってたら、
目の前の花屋さんが紹介してくださって、
向かいのビルのオーナーさんが、
二つ返事で私有地の道を貸してくださいました。
「いいよ、使いなよ!」って。
「車道だから渡るときに気をつけてね。
それだけは頼むよ!」って言われてるんですけど。
ほんとにこれも運が良かったです。
――
お客さまはどんな方が多いですか?
中里
「福岡からたまたま来てて」とか、
遠方から寄ってくださる人もいますけど、
この辺の人も多いです。
近所の出版社の方とか、営業の方とか。
今日食べるおかしを買ってってくださるんです。
――
ああ、みなさん「その日のおやつ」って感じなんですね。
中里
はい。たくさん買ってくださる方もいますが、
近所の方は「今日のため」という感じで
買ってくださいます。
仕事帰りの時間帯は特にそうで、
「家族におみやげ」とか、
閉店間際にお勤め帰りのお父さんがふたりで
「なんかクッキー屋さんができたって聞いて」って、
きれいに買い取ってくださったりとか(笑)。
なんかこの辺のみなさん、仲がいいんですよね。
クッキー屋に会社の同僚と買いに来て、
店の前で「じゃあ、おつかれさま」みたいな。
会社帰りに近所のクッキー屋に
わざわざ寄ってくれるのはうれしくなります。
――
へええ。すごくいいなぁ。
毎週水曜日と、あとは不定期でオープンしていますよね。
Instagramで告知して。
中里
はい。不定期の日も、みなさんよく来てくださいます。
たぶんポストに行ったりおつかいで出たときに
「今日は開けたんですね。みんなに言っとこう」
と声をかけてくれたりして。
なんか、すごくいいなぁと思います。
――
下町っぽくて。
中里
みなさん結構、喋ってってくれて、
この街のことを教えてくれたり。
なので、ほんとに
来てよかったなぁって思います。
――
味が人を呼んで、
人が人を呼ぶんですね。
中里
いやぁ、ありがたいです。
暑い日には焼菓子は売れないかなと
思っていたのですが、来てくださいます。
クッキーが好きな人、こんなにいるんだなと思います。
営業中、私は表に出ることが少ないのですが
厨房でも会話が聞こえるので、
うれしいなと思いながら作っています。
――
売るおかしはどんなふうに決めているのですか?
中里
定番と、ときどき新作という感じです。
私はどんどん新しくしていくことは
あまり得意じゃないし、
買う側としても「いつも同じ」が好きなので、
ひとつの味を長く続けることを大切にしたいです。
なので、「同じものをいつも買える」は
ひとつ続けていけたらいいなって思いますね。
――
定番にはどんなものがありますか?
中里
サブレは定番です。
スノーボールも、きなこはずっとあって、
もう1種類がココアか緑茶、ほうじ茶に変わります。
オレンジチョコも定番です。
あとは猫型のクッキーや、
まゆげとりのクッキーも定番です。
――
チョコレートサンドやジャムサンドは?
中里
それも定番です。
特にチョコサンドは冬に人気で、
11月から3月は
チョコサンド工場みたいになります(笑)。
みなさんサンドものはお好きですね。
――
わかります。楽しいんですよね、サンドって。
ここに来てサンドに出会えるとうれしいです(笑)。
中里
そうですよね。
サンドは閉店までに売り切れることが多いから。
――
当日焼きのスコーンも好きです。
中里
そう! あれも定着してきました。
最近はオープンのときに2種類ぐらい出せるように
がんばってます(笑)。
(つづきます。次は今回のセットの話です!)
2023-09-24 SUN
イラスト:ZUCK
商品写真:有賀傑

一度食べるとまた食べたくなる‥‥ きのね堂の「焼菓子セット」を
お届けします。

「ほぼ日のおかし」シリーズより
おいしい焼菓子の詰め合わせが登場します。
東京・神保町にあるクッキー屋さん、
「きのね堂」に秋にぴったりな味わいの
オリジナルの焼菓子セットを
つくっていただきました。
お店で定番人気のサブレと、
ピーナッツやクルミなどのナッツがごろごろと入った
秋らしい4種の焼菓子を組み合わせた
ここだけのセットです。
今回は特別にデザインした掛け紙に包んで
みなさまのお手もとにお届けします。
コーヒーや紅茶と合わせるのもおすすめです。
素朴だけどしっかりとした味わいのクッキーで
おやつ時間をお楽しみください。

きのね堂の焼菓子セット3,200円(税込)

2023926日(火)午前11
きのね堂の焼菓子は、ひとつひとつが手焼きのため、
生産量が限られます。
このたびの販売は、
出荷時期を「9月27日~10月31日出荷分」の間、
6回に分けてお届けいたします。
「きのね堂」の焼菓子セット
~5種類のおかしの詰め合わせ~
きのね堂の定番人気のサブレと、
秋らしい味わいのクッキーをあわせた
ここだけのセットです。
それぞれのおいしさを損なわないよう、
種類ごとに包装し、詰め合わせました。
  • メープルサブレ

    メープルサブレ
    やさしい甘みでシンプルな味わいの
    「きのね堂」定番の人気焼菓子です。
    表面にメープルシロップを塗って仕上げました。
  • アーモンドとチョコの酵母スコーン

    アーモンドとチョコの酵母スコーン
    ローストアーモンドがゴロッと入った、
    中はしっとり、外は香ばしい、
    クッキーのように「ギュッ」とした食感。
  • ヘーゼルナッツとコーヒーのサブレ

    ヘーゼルナッツとコーヒーのサブレ
    パウダー状にした
    ローストしたてのヘーゼルナッツと、
    コーヒーを合わせて焼き上げました。
    ふんわり甘く、リッチな味です。
  • ピーナッツクランチ

    ピーナッツクランチ
    ピーナッツをたっぷり味わえるクッキー。
    濃厚でざくっとした食感をおたのしみください。
    ちょこっと乗った塩がアクセント。
  • クルミのクッキー

    クルミのクッキー
    大きめに砕いたクルミをたっぷり入れて
    食感をたのしめるよう、
    ごろっと厚めに焼き上げました。

きのね堂

住所
東京都千代田区神田神保町1-32-22 1F
https://www.instagram.com/kinonedo/
イラスト:ZUCK
商品写真:有賀傑