最初に作品を作ったのが90年代の後半だから、
かれこれ、20年近く活動してることになるのかな。
大学を出てしばらくは個人で活動していて、
なんとなく続けられたらいいなぁと思っていたのが、
だんだん仕事にもなったんです。
私が活動しているplaplaxという
アートユニットは会社でもあるのですが、
個人だと仕事を受けられないことが出てきて、
会社にした経緯がありました。
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展覧会などを見て仕事をいただくこともあるんですが、
なんだか不思議なこともあるんですよね。
たとえば、ある日、1本の電話がかかってきたんです。
「うちに展覧会ができそうなスペースがあるんですけど、
なんか展示しませんか?」っていう。
最初、その謎発注はなんなんだ?って思いましたね(笑)
個人のお宅なんでしょうけど、
「よくわからないから、とりあえずお話聞きます」って
その方のお家を見せていただいたら、
すごくおもしろいお家だったんです。
建築家の自宅で、部屋が両サイドに寄せてあって、
真ん中がズドーンと3階分くらい抜けていて、
そこに1本の木が生えているんです、屋内なのに。
そんな不思議なお家で展覧会をしたいって言われたけど、
一度に10人くらいしか中に入れないんですよ。
![](images/20150701/p_02.jpg)
その建築家のご夫婦と、いろいろ相談して
その家の照明システムを使った
パフォーマンス的なプランを考えました。
真ん中の木を中心に、照明の照度を下げていくと、
木の周囲が家の中に見えたり、
外の広場のように見えたりするんです。
昼間から夕方、そして真夜中の風景を作り、
映像と組み合せました。
1回15分ぐらいの、その家の1日の風景を見せる
予約制のパフォーマンスです。
1日5公演で、5日間ぐらいやりました。
![](images/20150701/p_03.jpg)
このイベントをたまたま見に来ていた
ゼネコンの設計の方から、
「今、病院の案件をやっていて、
一緒にやれるとおもしろいと思うんですけど」
って言われて、その後お仕事がはじまったりとか。
なんか、前置きが長くなってしまうほど、
ひょんなきっかけでお会いして、
お誘いを受けることもあるんですよね。
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私は慶應SFC(湘南藤沢キャンパス)を出ていて、
そこの2つの学部はそれぞれ専門が違うのだけど、
基本的に、コンピューターと外国語は
全員が学ぶような学校でした。
コンピューターを使ったアートや音楽の授業もあり、
教授の一人で藤幡正樹さんという
メディアアートのパイオニアの方がいて、
授業を受けたのがこの分野にふれたきっかけです。
でも、私はそもそも、
SFCに国際政治を学びに行ってたんです。
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もともと政治学を専攻していたのに、
半必修で取らなきゃいけなかった
コンピューター系の授業がおもしろくなって、
3年生の時に藤幡さんのゼミに入ったら
その世界から抜けられなくなってしまって。
当時は、アートのことはほとんど知らなかったので、
「それで、君はどういう作家が好きなの?」って
先生に聞かれても作家なんてよく知らないし、
「どうしよう、ゴッホとかしかわからない‥‥」
「この人は、なんてことを聞くんだろう」って
焦ったことをよく覚えてますね。
![](images/20150701/p_06.jpg)
私がいたのは政治経済系の学部だったので、
学んだ知識も全然違ったんです。
情報科学系の学部の人たちは、
もうちょっと芸術分野のことも勉強してたのに、
私は本当に何も知らなくて、
おもしろいと思ったのはいいけど、
無謀な路線変更でした。
作品の扱いかたもわからなかったので、
先生の荷物をちょっと動かして怒られたとか、
総合大学なんだけど美大生と
同じような感じで指導されるので、
厳しいなぁと思うこともありました。
![](images/20150701/p_07.jpg)
大学を卒業しても、まだ下地ができてないなと思い、
そのまま2年間大学院に残って、
その後も、大学の研究所などで仕事をしながら、
たまに自分の展覧会があると、
ちょっと休ませてもらったりして。
このまま続けられるといいなと思ってたら、
今みたいに仕事になっていったという感じです。
もう学生とはほど遠いはずなのに
学生みたいな徹夜をしなきゃならない時もあって、
展覧会のオープニングなのに、
みんなひどい顔でお客さまを迎える、
そんなこともあったりしますね。
![](images/20150701/p_08.jpg)
ほぼ日手帳は、使ったりやめたりしていましたが、
2011年版からはずっとWEEKSを使っています。
仕事のアイディアは大きく書きたいんで
大きなノートをメインにしてるんですけど、
それと併用できるものがいいなと思って。
やらなきゃいけないことを整理するのに
使っているぐらいで、他の人に比べると
使い方としては面白くないかもしれません。
書くことは本当にもうなんでもありで、
いまになって読み返してみると、
「これ、なんだろう?」っていうメモもあります。
![](images/20150701/p_09.jpg)
作品のアイディアを考えていたんだろうけど、
あんまりよく覚えてない‥‥。
「光によって動く虫」を作ったらおもしろいとか、
そんな感じだったと思いますけど、なんだろう‥‥。
アイディアって、必ずしもその時だけ考えるんじゃなく、
「後でどんどん膨らむかもしれないじゃない?」って、
思ってるところがあるので、
その週以外の所に書いたりすることもよくあります。
この絵は大阪府立母子保健総合医療センターという
病院の空間演出について
考えていた頃に描いたものですが、
新しく建てられる手術棟のための絵なんです。
![](images/20150701/p_10.jpg)
手術室の手前からICUまで、
広い範囲で空間演出をさせてもらいました。
建物のテーマが「町」だったので、
元気になるためにちょっと不思議な町に行って、
元気になって帰っていくことをイメージしました。
患者のお子さんたちって、
ストレッチャーに乗せられて
上方向を見る機会も多いので、
上下反転しても成立する形にしようと
いろいろなパターンを考えました。
ちょっと不思議な町の景色になるように、
山とか建物が抽象的な形をしています。
![](images/20150701/p_11.jpg)
手帳って、ふっと思いついちゃった時に
書けるものだからいいんです。
その時に、小さくて軽いっていうのはすごく大事で、
それで使っているんですよね。
あとで思い出せるかわからないんだけど、
私にとって、外部記憶装置になっています。
自分の見たものとか、心に引っかかったものを
とりあえず入れておく箱みたいなもので、
「その時やらなきゃいけないリスト」は、
短期記憶の領域を使うみたいに、
一時的に使ってあとは忘れてる。
![](images/20150701/p_12.jpg)
最近私たちが取り組んでいるのが、
人々のイメージの中にある自然をテーマにした
「イマジネイチャー」と呼んでいるプロジェクトです。
いわゆる「自然」って、
自然科学的な分類で考えがちです。
でも、もっと直感的に捉えてることってあって、
そのヒントは子どもの頃の記憶や、
心象風景の中に隠れてる。
たとえば、生き物がカッコよく見えるときに、
4本足の動物でも、6本足の昆虫でも、
足のある生き物として並べてみると
なぜカッコいいと思うのか、見えてくるかもしれない。
あるいは河原に行って、たくさんある石ころの中で、
丸くてすべすべしたお気に入りの石を見つけて
持ち帰っちゃうのはなぜ?
ってことを考えたりするんです。
宝石でもない、ただの石ころに心が魅かれ、
しかも「あぁ、わかる、わかる」って
みんなが思うのには理由があって、
そこには人類が共通に持っている
石に対するイメージがあるんじゃない?
それはなんなの? そんなことをよく考えているんです。
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