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LIFEのBOOK ほぼ日手帳 2017

LOFT手帳部門12年連続NO.1

ほぼ日手帳 2017

手帳マン・みうらじゅんのLOVE スクラップ(&手帳ネームのすすめ)

第2回貼りたいときが、貼りどき。

――
ふだんはこの場所に座ってスクラップ作業を?
みうら
以前は場所にもこだわっていましたが、
もういまはどこでも大丈夫です。
場所を選ぶのは、アマチュアです。
でも、できればひとりになれる場所がいいですね。
そのために長年事務所を借りてきたんですから。
カーッときて、貼っているときが気持ちのピークなんです。
そのとき、ちょっと人に見せられるような顔を
していないと思います。
「鶴の恩返し」じゃないけど、僕はわりと
シークレットスタイルをとってきたんですよね。
――
シークレットスタイル。
みうら
新聞や雑誌を切り取るなんて、失礼なことなので、
怒られるんじゃないか、という気持ちもありますからね。
子どもの頃は、親父が会社から帰ってくる前に
夕刊を切り抜いていました。
親父はびりびりになった新聞を広げたもんです。
「いい加減にしろ、わしが読んでから切れ」と
何回も言われたんですけど、
わしが読んでから切るのでは遅いんです。
みなさんも、
切りてーぜ、貼りてーぜ、という、
2大“テーゼ”に突き動かされた瞬間に
やらないとだめです。
なにかを「ほぼ日手帳」に貼りたいと思っても、
家に帰ってから貼るのでは、
そのパッションが手帳に移らないですよ。
――
タイミングも大事だと。
みうら
はい。貼りたいときが貼りどきなんです。
そこは、サロンパスとかと同じと思ってください。
だから、本当はほぼ日手帳に糊がついてるべきなんです。
――
ああ、手帳と一緒に糊を持ち運びできるように。
みうら
うん。アラビックヤマトの細ーいやつが
ペン差しに入っていたりね。
もしくは、中をくり抜いて、1本入るようにしてないと。
――
(笑)。
みうら
そして、意外と忘れがちなのが台紙です。
ぼくも3、4日遠出をするときに、
「貼りたくてしかたなくなったら困るから」と
リュックにいっぱい貼るネタを入れて、
ハサミと糊をもって出かけるんですけど、
夜中に貼ろうと思って気づくと、台紙がないわけです。
もういっそ、
台紙でできたTシャツを作ろうと思ったんですが、
たぶん俺しか買わないだろうから、
販売には至りませんでした。
――
残念です。台紙には気をつけます。
みうら
じゃあ、切っていきましょうか。
ほぼ日手帳は紙が薄いですから、
硬い紙のものを貼るといいですね。
この糸井さんを切ってみましょう。
(切り抜きながら)
髪の毛の部分を切るのを、
専門用語で「毛抜き」というんですけど、
ビギナーは毛抜きしやすい人を狙うべきですね。
糸井さんは毛抜きしやすい。
僕のように髪にカールがかかっていると難しいです。
そういうときは、背景を生かすのも手です。
――
輪郭ぴったりに切るのではなく、
あえてちょっと空間を残す。
みうら
そうです。
(切り抜きながら)
このね、耳が難しいんですよ。
ショートカットの人を切るとき、
耳のあたりを少し切り落としてしまうことがあります。
それはダメです。
たとえば糸井さんの顔を切っているとき、
耳が切れたら糸井さんが痛がると
考えないとダメなんですよ。
――
(笑)。
みうら
相手の身になるのがたいせつです。
――
きれいです!(拍手)
みうら
やっぱり一番難しいのは人物ですね。
風景ごと切って貼るのもいいですね。
手帳に広がりが出ます。
――
本当ですね。
みうら
スクラップの基本は、露出合わせなんです。
露出が合ってないと、リアリティが出ない。
それから、時代もあっていた方がいい。
新しい写真の横に古い写真を並べてしまうと、
やっぱりどこか変ですからね。
時代を経ても変わらないもの‥‥
今回の素材のなかでは、味噌汁くらいですかね。
みうら
ほら、これで楽しい雰囲気が出来上がりました。
――
ああ、楽しいです(笑)。
みうら
「これ、何してんだろうな」って
想像力が広がりますよね。
二人のトークショーなのかなあ、って(笑)。
――
言葉を添えたりはしないんですか?
みうら
添えますよ。
ふだんやっているエロスクラップは、
その写真とは違うところから
言葉をもってきて、添えます。
それだけで世界観が変わりますから。
言葉を切って貼るときのテクニックとして
いちばん注意しなくてはいけないのは、
裾を折ったジーパンをはかないことです。
――
ジーパン、ですか?
みうら
僕、ふだんはここであぐらをかいて
スクラップをやっているんです。
すると、切り抜いた言葉のかけらが
裾に入っていたりする。
以前、保育園に子どもをお迎えに行くときに、
それが落ちたことがあります。
すぐに僕自身が発見したからよかったものの、
それはもう、とても保育園にあってはならない
卑猥な単語が落ちていました。
だから、折り返しのあるズボンをはかないのは、
スクラッパーとしては当然の義務です。
みなさんはそんな卑猥な言葉を切り取らないとしても、
たとえば「ゲス不倫」とか書いた文字を切ってね、
何かの拍子に夫婦仲の悪い奥さんの前で落として、
「嫌味かしら」と思われたりとか、
そういう危険性もあるわけですから。
――
そうですね。
みうら
では言葉を置いてみましょうか。
小さい文字のほうが、信ぴょう性がぐっと増します。

「あれ、この方、早稲田の名誉教授なのかな?」
って思うでしょ?
――
文字の力はすごいですね。
みうら
肩にかぶせてもいいです。
みうら
もう「ああこの人、
でんぱ組に入ったんだな」と思える。
――
レイアウトが重要なんですね。
みうら
そうです。
ここまできたらあとは貼るだけです。
貼るときのコツは、
すばやく均等に糊をつけるということだけです。
ほら、小さな体に大きめの顔をつけると
ぐんと楽しくなりますね。
僕の顔は味噌汁の具にでもしておきましょう。
――
ああ、顔がひとまわり大きく。
楽しそうです。
みうら
ワクワク感がだいぶ出ましたね。
田舎でおいしい味噌汁を飲んでいる感じがします。
手帳だから、空いたところに
「今日は糸井さんと味噌汁を飲んで楽しかった」と
書くといいですね。
(つづきます)
2017-01-17-TUE