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LIFEのBOOK ほぼ日手帳 2017

LOFT手帳部門12年連続NO.1

ほぼ日手帳 2017

手帳マン・みうらじゅんのLOVE スクラップ(&手帳ネームのすすめ)

第3回手帳ネームのすすめ

――
何かを手帳に貼ったとき、
その横に書く内容については
みうらさんはどうお考えですか。
みうら
できれば、貼ったものによって、
思い出を勝手につくるといいですね。
――
現実には体験していないことでもいいんですね。
みうら
もちろんです。
僕は中学時代、日記を自宅の本棚に入れていました。
あるとき、どうやらオカンがそれを読んでいるらしいと
気づいたんです。
僕はいい子だったので、
それからうそを書くようになりました。
オカンがよく
「あんた、デートするような女の子おらんのかいな」と
言っていたので、
本当は一人で行った映画のことを、
さもデートをしたかのように書いていた。
それを見て、オカンはなんだか喜んでいたんですよ。
そのときに、よく考えたら自分なんてどうでもよくて、
人が喜ぶことがいちばんなんだって気づいたんです。
とくに両親は喜ばせたほうがいいじゃないですか。
だから、僕は日記や手帳には
つまらないことは一切、書きません。
“見られ前”で書いてますから。
――
見られ前?
みうら
見られる前提のことですね。
家族や友人に見られたとき、
もしくは落とした手帳を誰かが拾ったときに、
「ああ、こいつ楽しそうだな」と思われたほうが
いいじゃないですか。
――
はい。
みうら
臨海学校がつまらなくても、
「すっごく面白かった」と書けば、
そんな気がしてきますから。
書くだけで、気持ちが上がりますよ。
――
それはかんたんに実践できそうです。
みうら
もっと気持ちを盛り上げるために、
中身を工夫するだけでなく、
表紙をつくるのはどうでしょうか。
ほぼ日手帳ってカバーをかけるから、
表紙はずいぶんシンプルでしょう。
ここに陽気な写真を貼ったら、
その気持ちで一年やっていくしかなくなりますよ。
――
その気になる、というのが大事なんですね。
みうら
ちょうどかっこいい写真がありますから、
貼ってみましょう。
(写真集を持ってくる)
――
写真集、切っちゃうんですか?
みうら
本来は一冊の本として鑑賞するものですが、
これくらい景気のいい写真は
めったにありませんから、
せっかくなので貼ってしまいましょう。
――
わあ、かっこいいです!
みうら
これを貼ることで、
「俺はデコトラの表紙の手帳で1年間やっていくんだ」
という決意が生まれる。
周りも、みんなこういう雰囲気の人だという目で
見るわけです。
ふだんカバーで隠れていても、
本人はわかっているわけだから。
これでもう、落ち込むことなんてないですね。
――
これはやっぱり、
一年の最初に貼るべきでしょうか。
みうら
もちろんです。
これで、その一年の方向性が見えますから。
――
表紙が大事ということは盲点でした。
みうら
表紙は大事ですね、やっぱり。
中はどうにかごまかせても、
エントランスだけはごまかせませんから。
――
迷っていてはダメですね。
みうら
そうなんですよ。
でも、こんないい写真に出会うことは
なかなか少ないですよ。
この表紙のために写真集を買うとなるときびしいです。
やっぱり1冊数千円しますから。
そこも含めた思い切りですね。
――
はい。
みうら
それから、
ほぼ日手帳には名前を書く欄がありますから、
そこにペンネームを記入してもいいかもしれません。
「大豪寺虎男」みたいな名前を書いておいたら、
1年それでやっていくわけですから、
少々の悩みは吹っ飛ばせますよ。
――
手帳を書くときのペンネームをつける?
みうら
そう。
拾ったときに「早乙女さくら」って書いてあるのと、
「大豪寺虎男」と書いてあるのでは、
やっぱり手帳の中身が変わってくるでしょう。
「日帰り温泉に行ったのだ」って書いてあっても、
大豪寺虎男の手帳か早乙女さくらの手帳かで
見えてくる景色がだいぶ変わりますよね。
――
はい(笑)。
みうら
本当の芸能人だったら芸名は簡単に変えられませんけど、
一般の人は毎年変えればいいわけですから。
「今年はこうなりたい」という雰囲気の名前を
毎年考えてつければいい。
それが10年たまったら、
自分の手帳でありながら、
いろんな人の手帳ができるわけです。
――
いろんな人の手帳(笑)。
みうら
自分である必要なんてないんです。
「今年はこの名前でやっていくぞ」というのを、
書けばいいんです。
――
等身大である必要はない?
みうら
ないですねえ。
やっぱり落としたとき、読まれたときに、
どう思われるかが重要ですよ。
だから、手帳ネームをつけることで、
自分をプロデュースするんです。
最初こそ人への説明も大変ですけど、
友達もそのうち「今年はなんて名前にしたの?」って
聞いてくるようになるでしょう。
――
手帳ネーム、いいですね!
みうら
昔、国語の授業で遭遇する
「河東碧梧桐」(俳人)とか、
どんな人かなと思ったでしょ。
「田山花袋」にもビビったじゃないですか。
カタイって名前の人が
『蒲団』って本出してんだよ。
蒲団って柔らかいですからね。
――
(笑)
みうら
そういう名前って、ずっと印象に残ってるでしょ。
やっぱり、印象に残る人になりたいですよね。
まだ若い頃は自分を偽るなんてことは
なかなかできないですが、
ほぼ日手帳を買う人は、
それくらいのセンスはあると見ましたね。
――
スクラップのことを伺おうと思ったら、
思いがけず新しい手帳の使い方が発見できて、
よかったです。
みうら
みなさん、手帳には自分のことしか
書いてはいけないと思っているでしょうが、
本当は何を書いたっていい。
自由なんですよ。
(おわります)
2017-01-18-WED