乗組員Ｃ

さて、あらためて、紹介します。
ほぼ日手帳2018の、
ビートルズカバーができました。

糸井

できましたねぇー。

乗組員Ｃ

今回、ユニバーサルさんを通して、
ビートルズの権利を持つアップルさんに
オフィシャルチェックを
ばっちりやってもらったので、
ずいぶん調整を重ねることになりましたが、
とってもいいものができたと思います！

糸井

うん、苦労した甲斐がありましたね。
ロゴや写真を簡単につかったものじゃなくて、
ほかにはないビートルズグッズに
仕上がっていると思います。

乗組員Ｃ

カバーはぜんぶで４種類。
『LOVE ME DO』、『HELP!』、
『IN MY LIFE』、『BLACKBIRD』です。

一同

（拍手）

糸井

はい。どれもいいと思います。

乗組員Ｂ

せっかくですから、
４種類のカバーにまつわる４曲について、
糸井さんの思い入れや
エピソードを教えてください。

糸井

わかりました。
じゃあ、まず、『Love Me Do』から。
言うまでもなく、これはビートルズの
記念すべきデビュー曲なわけですが、
なぜこの曲をデビュー曲に選んだんだろう？　
ということを、ぼくはよく考えるんです。

乗組員Ａ

たしかに、ちょっと異色ですよね。
いかにもビートルズ、という感じではないし、
デビュー曲というには渋すぎる気もします。

糸井

そうなんですよね。
まず、ほかのアーティストの曲ではなく、
自分たちのオリジナル曲で
デビューしたという選択はよかったと思います。
初期のビートルズは、カバー曲でも
すばらしいものをたくさん残しているわけで。

乗組員Ａ

『Twist And Shout』とか、
『Please Mister Postman』とか。

糸井

うん。

乗組員Ａ

『Baby It's You』とか
『You Really Got A Hold On Me』とか。

糸井

そうそう。

乗組員Ａ

『Roll Over Beethoven』とか
『Mr. Moonlight』とか‥‥。

糸井

もういいだろう。

乗組員Ａ

失礼しました。

糸井

そういう、知名度とクオリティーに
ある程度保証のあるカバーじゃなくて、
とらえようによっては
リズム・アンド・ブルースっぽいとも言えるような
『Love Me Do』でスタートさせたっていうのは、
たぶん、戦略的なものだったと思うんです。
ところが、おもしろいことに、
これがそれほど当たらなかったんですよね。

乗組員Ｂ

そうですね。資料によると、
イギリスのヒットチャートで
最高17位どまりだったそうです。

糸井

まあ、たしかに、
そうだろうな、という気もします。
ビートルズのシングル曲をずらっと並べてみると、
たしかにこの曲は地味です。
だから、もしもぼくが当時のイギリスにいて、
「ビートルズのデビュー曲を大ヒットさせる会議」
に出ていたとしたら、言いますよ、
「違う、この曲じゃないんだ。
キミたちはもっと遠慮しないで
どんどん売れる曲をつくりたまえ！」って。

乗組員Ｂ

いいなぁ、その役。

糸井

そして、ついでに、
「映画もつくりたまえ！　
コンサートはやめて録音に専念したまえ！
インド音楽に傾倒して、
コンセプトアルバムをつくりたまえ！
２枚組のアルバムもつくりたまえ！」
って言うでしょうね。

乗組員Ａ

未来、言い当てすぎ。

糸井

でも、真面目な話、デビュー曲が
『抱きしめたい』でもなく、
『Please Please Me』でもなく、
『Love Me Do』だったということは、
ビートルズを結果的に長持ちさせることに
つながったんじゃないかという気もするんです。

乗組員Ｂ

ああ、それはなんとなくわかります。

糸井

そういう気がするんですよね。
だから、大好きな曲の中には入らないんだけど、
ぼくは、この『Love Me Do』という曲を
ものすごく優しい目で見ています。

乗組員Ｃ

なんだか『Love Me Do』のカバーが
愛しく思えてきました。
ありがとうございます。

乗組員Ｂ

それでは、つぎの曲に行きましょう。
『Help!』については、どうでしょう？

糸井

『Help!』について、
まず、はっきりと言えることがあります。
それは、「タイトルが短い！」ということです。

乗組員Ａ

たはっ（笑）。

乗組員Ｂ

がくっ（笑）。

乗組員C

はははは。

糸井

え、なんですか、そのリアクションは。

乗組員Ａ

だって、「タイトルが短い」って（笑）。
そりゃそうですけど。

糸井

あ、ちょっと冗談だと思ってますね。
これは、ほんとうにそう思ったんですよ。
つまり、リアルタイムでビートルズを聴いてて、
新しい情報を待ち望んでた当時のファンは、
新曲のタイトルが『Help!』だと知って、
「え？　短い！」って思ったんです。

乗組員Ａ

あーーー、ほんとうに。

糸井

ほんとです、ほんとです。
『Help!』は、
映画のタイトルでもあるんですけど、
もともとのタイトルは、たしか、
『あなたを抱きしめる８本の腕
（エイト・アームズ・トゥ・ホールド・ユー）』
というふうに伝わっていたんです。
８本の腕っていうのは、
つまり、ビートルズ４人のことで、
４人があなたを抱きしめますよ、と。

乗組員Ｂ

へーーー！

糸井

ところが、いよいよ映画ができあがる
っていうときに、正式タイトルが
急に『Help!』に決まった。

乗組員Ａ

ああ、そういえば何かで読みました。
ジョンが締切ぎりぎりに
映画のテーマ曲を書き上げて、
それが『Help!』だったと。

糸井

そうなんですよ。
だからね、『Help!』というタイトルは、
いろんな意味で驚きがあったんです。
短いということもそうですし、なにより、
「そんな簡単な英語でいいんだ？」っていう
ある種の痛快さがあったんです。
すごくビートルズっぽいというか、
「これでいいのか？」「いいんだ！」
っていうかっこよさがありますよね。

乗組員Ｂ

ああ、たしかに、たしかに。

糸井

だって『Help!』だからね。
「タスケテ！」だもん。
中学生でもわかることばを
世界中が待ち望む曲のタイトルにしてしまう。
この短さが、ビートルズの持つ強さ、
大きさでもあるんですよ。
だって、なんにも凝ってないじゃないですか。
そういうことを軽々とやれるメジャーさが
すごくかっこよかったんですよ。

乗組員Ａ

はーーー、そういうことは、
ほんとにリアルタイムじゃないと
わからないですね。

乗組員Ｂ

そうですねぇ。
『Help!』のタイトルが短いなんて、
思ったこともなかったです。

糸井

あと、『Help!』っていうアルバムも
すごく名曲ぞろいですよね。
『Help!』という、タイトル曲からはじまって、
もう、ずーっといい。
ビートルズがいよいよ自由になって、
ビートルズサウンドっていうのを
いろんなジャンルから引っぱり出してきてる
っていうことを感じさせるアルバムです。
個人的にも、聴いてる回数が
かなり多いアルバムです。
たぶん、ぼくが１番聴いているのが
『Rubber Soul』だと思うんですけど、
２番が『A Hard Day's Night』で、
３番が『Help!』じゃないかな？
ああ、そう言うとウソになるかなぁ。
『Abbey Road』も聴いてるしなぁ‥‥。
あー、ウソウソ！　
どのアルバムを多く聴いてるか
という話はやめにします！

一同

（笑）

（つづきます）

2017-09-28-THU

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