[ほぼ日酒店 YOI] ハイビスカス酵母でつくった、はじめましての泡盛「hanakara」  [ほぼ日酒店 YOI] ハイビスカス酵母でつくった、はじめましての泡盛「hanakara」






  03.「hanakara」はこんなお酒です。
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これまで泡盛のことを伝えるために
全国を回ってこられたという中里さん。



「はじめての泡盛」、
「泡盛を伝えるための泡盛」は、
ご自身の中でもずっと考えてきたテーマでした。



そんな中里さんと「ほぼ日」が
どのように出会ったかについては、
「04」でもふれますが、
まずは「ほぼ日」と中里さん、
それぞれのイメージを重ねながら
つくられた「hanakara」とは、
一体、どんなお酒になったのか。



ひきつづき中里さんの言葉で
語っていただきます。
今回つくった「hanakara」の
一番のポイントは
自然の醗酵によって生まれた
「香り」と「甘み」です。



「hanakara」をグラスに注ぎ、
少し待ってから顔を寄せると、
バナナやヨーグルトのような香りが
ほんのりとします。
口に少し含むと舌の奥に
ジワッとコクの余韻、
そしてかすかな「甘み」を感じるはずです。



泡盛の香りをつかさどるのが酵母。
今回は神村酒造があつかう中でも
“最新”のハイビスカス酵母を使いました。
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「hanakara」をつくる酵母は、沖縄のハイビスカスの花の中心部分から抽出し、培養したものです。
ハイビスカス酵母は、この10年ほどで
使われるようになってきた酵母です。



華やかで覚えやすい名前ですが、
この酵母でつくられた泡盛を
ご存じの方は少ないでしょう。
理由は単純で、それほど流通していないから。
いわゆる“むずかしい酵母”なんです。



これまで、この酵母をつかって
いろいろな泡盛を作ってきましたが、
飲みやすいけど香りが出ないとか、その逆とか。
じゃじゃ馬のように安定しない。



でも、何度か試行錯誤するうちに
自分や神村酒造の蔵人たちの中でも
ハイビスカス酵母の扱い方を
つかめてきたというか。
仕込みのやり方や温度管理まで
試行錯誤して「これは!」という
泡盛をつくれるようになったのです。



今回つかった酵母は
いままで使ってきたハイビスカス酵母の
さらにその先の進化系です。
DNA解析をしてみると
「ワイン用」と出てしまうくらい。
これまでとは違う天然のエステル香という
「スキッと爽やかな香り」が
すごく出るんですよ。



「hanakara」からはバナナや
青リンゴみたいな香りがしますが、
これはハイビスカス酵母が
がんばって仕事をした証なんです。



そしてもう一つのヨーグルトのような香りは、
熟成が進んだときに生まれるもの。



このあたりの爽やかさ、甘さといった
香りのニュアンスは
「hanakara」がもつ独特の個性だと思います。



あとですね、
僕たちがつくるお酒ってなぜか甘いです。
もともと泡盛に糖分はないので、
感覚的な話ではありますが、
この泡盛も試行錯誤していくなかで、
だんだん甘みを感じるようになってきました。



そういう意味では、
神村酒造のつくり方と
新しいハイビスカス酵母が
なじんでいったのかなと。
「神村のお酒」らしさが
甘さという形で出てきた気がします。
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「甘い」といっても、べったりした甘みではありません。口に含んでいると、香りと一緒にわすかに感じるくらいです。でもこの甘さがあることで、黒糖のような甘い物とも相性がいいんですよ。
そして僕の中では大切なことですが
泡盛らしい「コク」や「余韻」も
あえて残しています。



それを消してしまうつくり方もあるんですよ。
今の技術って結構いろいろなことができるので、
極端なことを言えば、
スルスルと飲みやすくて
クセのないお酒だって
つくろうとおもえばできるんです。



ただ「泡盛らしさ」からはどんどん遠ざかります。



もし、そんなお酒を気に入ってくれて、
それこそ泡盛だと思った方が、
ほかの泡盛を飲んだとき
「あれ? ぜんぜん違う」
となってしまったら、
つくり手として、伝える者としても
さみしいです。



ですからこれを飲んでくれたら、
「ああ、泡盛らしいってこういうことなんだな」
と思ってもらえるくらい、
ベーシックな味の形を残しています。



「泡盛らしさは残したうえで、
香りがよくて甘みを感じるお酒」というのが
今回の僕のテーマだったんです。
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(つづきます)