沖縄の那覇の繁華街から
少しはなれた一角に、
泡盛好きが集まる酒場
「カラカラとちぶぐゎ~」があります。
もともと泡盛や
沖縄の食文化を紹介する雑誌の
編集長だった長嶺哲成さんがはじめ、
常連には長嶺さんを慕う
泡盛のつくり手も多いお店です。
ほぼ日の泡盛好き乗組員が、
沖縄を訪れるたびこの店に通っていたご縁で、
今回のコンテンツについて
ご相談をさせていただき、
「それならば」とご紹介を受けたのが、
神村酒造の中里迅志さんでした。
これまで多くの泡盛の蔵元を
取材してこられた長嶺さんからみた
神村酒造、そして中里迅志さん
(長嶺さんは「ハヤシさん」と呼ばれます)は
どんな方なのでしょう。
わたしたちはできたばかりの
「hanakara」をもって、
「カラカラとちぶぐゎ~」の長嶺さんに
お話を伺いに行きました。
ハヤシさんと初めてお会いしたのは
20年ほど前のこと。
当時、僕は泡盛の雑誌
『カラカラ』をつくる編集者で、
札幌で開かれる「北海道泡盛同好会」の
取材をするためすすきのに行き、
“泡盛の蔵元の人”として参加していた
中里さんと飲んだんです。
そこから付き合いがはじまって、
お店を始めてからはハヤシさんが
通ってくれるようになったりして。
なにより知り合いだからとか、
そういうのは抜きにして、
僕はハヤシさんのつくる泡盛が好きなんですよ。
沖縄にはいま、泡盛の蔵元が47ありますが、
店ではそのすべての蔵の銘柄を扱っています。
そして僕は1日に2、3種の泡盛の
利き酒をするようにしているんです。
すると、だいたいひと月で
全ての泡盛の酒蔵の銘柄が飲めてしまう。
それくらいのペースで飲んでいるとね、
「おいしくしよう」としている蔵って、
わかるんですよ。
季節限定の泡盛で、
今までにないつくり方や酵母を試したり、
そこでいい結果が出ると
定番の泡盛に応用したり。
特に神村酒造はいつも試行錯誤をして、
おいしい泡盛づくりを続けています。
ずっと飲み続けているから気づくこともあります。
「最近の『守禮』おいしい、なにした?」
と聞くとハヤシさんは
「なんでわかった?」って驚くんです。
なにをしたかは教えてくないんですが(笑)。
右側が神村酒造で最も多くつくられている「守禮」です。蔵で扱うすべての泡盛のベースとなるお酒ですから、ふつうこのような主要銘柄の味の調整はめったにおこなわないのだそうです。
ほかの酒造所がやっていないことでも、
神村酒造はやります。
「一人でも多くの人に泡盛を伝えたい」
と、ずっと言い続けているし、
実際に動き続けている。
泡盛ファンとして
応援したくなる酒蔵なんです。
そういう意味では、
今回の「hanakara」は
またちょっと特別な銘柄だと思います。
最初の華やかな香りや、
二口目からじんわり感じられる甘み。
ああ、飲みやすいなと思う一方で、
「すごく泡盛らしい」んですよ。
そういう部分をあえて残した。
それが今のハヤシさんの答えなんでしょう。
「hanakara」を飲んだ人が、
別の泡盛を飲まれてもきっと違和感がない。
最初の香りこそ、
ハイビスカス酵母独自のものでも、
甘みとコクの部分は
きちんとつくられた泡盛に共通するものです。
泡盛の入り口に立つ酒だなと思います。
(つづきます)
取材・文:鳥越達也
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