泡盛はいろいろな飲み方ができるお酒ですが、
この「hanakara」はどんなふうに
飲むといいでしょうか?
引き続き、長嶺さんに伺っていきます。
この「hanakara」を
いちばん最初に飲むときは、
香りがわかりやすい
ワイングラスを使うのはどうでしょう。
これで
「小さくついで香りを開かせながら飲む」
という泡盛本来のやり方を試すことができます。
ワイングラスのように
飲み口まで高さがあるグラスなら、
そこに香りが溜まるので
ご自宅にあるもので大丈夫ですよ。
また泡盛は基本的に常温で保管できます。
キッチンなどに置いていても
味はまったく劣化しませんから、
温度や湿度管理に気をつかう必要はありません。
さて、まずはご自宅にあるワイングラスに
ほんの少し泡盛を注いで、
さらに香りが立ちやすいように
同じ量のお水を加えます。
つまり、グラスの底に液体があって
上のほうは空っぽ。
その状態で待ちます。
そうですね、3分も待てば十分です。
少し待つとグラスの中に
香りが溜まってきますので、
鼻を近づけてかいでみます。
はたしてつくり手のハヤシさんが狙う
「バナナやヨーグルトの香り」を
感じられるでしょうか。
この香りや味の感覚は
個人的なものなので、
つくり手の意図とぜんぜん違ってもOKです。
僕がいちばん最初にかいだときは
「ナッツの香り」を感じました。
もちろん最初にハヤシさんから
「バナナやヨーグルトの香りだよ」
と言われて飲めば、
「そうかもな」と思うかもしれませんが、
お酒を飲むうえで
「その人がどう感じるか」は
すごく大事な部分です。
感じたこと、思ったことを口に出しながら、
お酒を飲むって楽しいですよ。
他愛のない会話を広げていく感じで
ぜひ飲んでください。
そして、飲み方はあくまでお好みですが、
今回の泡盛ならゴクゴクと飲むんじゃなく、
少量を口にふくんで、舌の真ん中から
全体に広げるように飲むといいですね。
泡盛は空気に触れるほど
いろんな味が出てくるので、
「口の中を泡盛で満たす」のではなく、
「ほんのちょっとを口の中で転がす感じ」だと
香りが鼻に抜けていきますし、
より複雑な味わいを感じられると思います。
ちなみに、こうした泡盛ならではの味は、
水割りにしても薄まらず
水っぽくならないのがポイントです。
「泡盛は伝統的なつくりかたをしていることもあって、ほかの蒸留酒に比べて香りやうま味のもとになる高級脂肪酸が圧倒的に多いことが影響しているといわれています」
昔は「蒸留酒を水で割るなんて
もったいない、味が薄まってしまう」
なんて声も聞こえてきましたが、
当時から僕は、泡盛に関してだけは
かなり水を多くしてもおいしいと
言い続けてきました。
だから、僕はお店に来てくれる
「泡盛ははじめて」という人には、
「ときどきなめて、本当に自分が
おいしいと思えるまで水を加えてね」
と伝えています。
氷を入れるのもいいですが、
温度が低すぎると香りが出にくくなるので、
この「hanakara」なら、
最初は常温の水割りで飲んでみるとか、
氷は1、2個とか少なめでも
いいかもしれません。
長嶺哲成さんと
「カラカラとちぶぐゎ~」という店のこと。
沖縄の新聞社を経て、
沖縄の泡盛と食文化を紹介する
雑誌『カラカラ』を創刊した長嶺さん。
編集者として泡盛のつくり手を
数多く取材されたあと、
2004年に「カラカラとちぶぐゎ~」を
オープンしました。
店名は、泡盛の古酒を
注ぐための酒器「カラカラ」と、
小さなおちょこ「ちぶぐゎ~」に
由来します。
お店では国内すべての泡盛蔵の
銘柄を取り揃えています。
長嶺さんは2006年につくられた資格
「泡盛マイスター」の
立ち上げにも関わられた方。
神村酒造の中里迅志さんや
陽子さんが第一期生、第二期生として、
勉強に励まれているときには、
講座の先生として
教壇に立たれていたのだとか。
そんな経緯もあって、
いまも沖縄県内の
いろいろなつくり手の方々と
つながりがあり、
泡盛のプロフェッショナル
としても知られています。
カラカラとちぶぐゎ~
https://bar.ti-da.net/
ところで、中里さんの
おすすめの飲み方は?
長嶺さんのお話ですっかり
「もう、お酒が飲みたい‥‥」
という状態になった乗組員たち。
途中から店にやってきた中里さんが
「じゃあ僕の飲み方も」というので、
みんなでhanakaraを飲みながら、
おすすめの飲み方を聞いていきます。
「hanakara」はアルコール度数が25度と、
泡盛の中では低いほうです。
この度数ですと一般的にいわれている
泡盛と水が5:5の「水割り」。
あるいは加える水を炭酸水に変えて、
「ソーダ割り」もおいしいと思います。
またこの応用として
少量の生姜シロップを加える
「ジンジャー割り」もおすすめです。
生姜シロップは手づくりしてもいいし、
市販のものを使っても結構です。
香りがさらに複雑になりますし、
お酒の甘さも引き立ちますよ。
あと、沖縄の人は水割りや
炭酸割りをつくるときには、
マドラーを使わず、
自分の指で混ぜたりします。
知り合いの本職のバーテンダーも
「こっちのほうがおいしくなる」
なんて言っていますが、どうでしょう。
ワイングラスに指を入れるのは
ドキドキしますが、
もし口の広いグラスかコップで
飲む機会があればお試しください。
(つづきます)
取材・文:鳥越達也
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