- ──
-
個人的な話で非常に恐縮なのですが、
小学校高学年くらいから、
『VOW』を愛読していたんです。
子どもでお金を持ってなかったので、
コンビニとかで、立ち読みで。
- 古矢
-
小学生じゃ、
意味わかんないネタもあったでしょ。
- ──
-
ええ。わかるのと、わかんないのと。
でも、そのころから、うすぼんやりと、
自分も、学校を出たら
『VOW』総本部の人間になるのかな、
と、思っていたんです。
- 古矢
-
ああ、当時は、
そういう小学生が多かったよね。
って、いるかよ、
「なりたい職業/『VOW』総本部の人間」
なんて小学生!
- 藪下
- それに、けっこう大変ですからね。
- 古矢
-
そうそう、総本部ったって、
2、3人しかいないんだから、常時。
- ──
-
ともあれ、それほど好きだったので、
本日は、製作総指揮を執ってらっしゃる
2代目総本部長の古矢徹さん、
そして担当編集の藪下秀樹さんという、
ある意味あこがれの先輩に、
こうして、お時間を頂戴しまして‥‥。
- 古矢
- 「ある意味」ってなんだよ(笑)。
- 藪下
-
だめですよ、こんなハゲにあこがれたら。
人生おしまいですよ。
- 古矢
-
まぁまぁ、そこまでハゲ‥‥じゃなくて
ヒゲ(卑下)しなくても。
- ──
-
思い返しますに、
なぜ『VOW』が好きだったかと言うと、
ネタのおもしろさプラス、
ネタに対して、
2代目総本部長のおつけになるコメント、
けっしてアラ探しではない、
愛あるコメントに感じ入っていたんです。
- 古矢
- 奇特な小学生だね。
- 藪下
-
あれは、ボケとツッコミの妙ですから。
まず、読者からのおかしな投稿があり、
それに対して、
古矢さんがツッコむ‥‥という形式。
- ──
-
そう、ぱっと見1秒でおもしろいネタも、
もちろんありますが、
2代目総本部長のコメントを読んで、
「ああ、このネタは、
こんなふうにおもしろがればいいのか」
と、またひとつ、
大人の階段を登らせていただいたりして。
- 古矢
- ホントかよ。
- ──
-
ああ、そのツッコミ。
2代目総本部長のコメントのよう‥‥。
- 古矢
- 2代目総本部長のコメントですがね。
- 藪下
- いちばん好きなネタを教えてください。
- ──
-
え、いちばんですか。難しいけど‥‥。
パッと思いつくので言えば、
写真ネタで「さんりお」とかですかね。
- 古矢
- ああー、傑作だね。
- ──
-
あと、テレビのテロップのまちがいで、
「長介の
スポーツでいい汁かこう!」ですとか。
- 古矢
- あったあった。ドリフ大爆笑のやつ。
- ──
-
逆に、2代目総本部長には、
思い出のネタとかって、ありますか。
- 古矢
-
「思い出の」って(笑)。
そうだね、苦しいときや辛いときに
かならず思い出す‥‥
ああ、そういう意味では、
なんか、おじいちゃんが若い主婦の
相談に乗ってるやつとか。
- ──
- あ、新聞の投書ですね。
- 古矢
-
そうそう、新聞記事で。
主婦の相談に乗ってて、うっかり‥‥。
- ──
- ええ。
- 古矢
-
「どこか公園に行き、
軽いキスをしますか」とか言ったら、
怒られちゃったっていう。
- ──
-
はい、最後に「私は愚かだった。」で
締めくくられる名投稿ですよね。
反省色の濃い投稿全体のトーンを含め、
ハッキリ覚えています。
- 古矢
-
でも、本当に好きなのは
まだ自分も『VOW』読者だったころの
「シーラ・イーストン」とかだけど、
これ、どれだけ今の若い人に通じるか。
- ──
-
初期の名作ですよね。
これは、とある音楽ライターの人が、
どちらもミュージシャンである
「シーナ・イーストン」と
「シーラ・E」を混同してしまい、
「シーラ・イーストン」
という
どこにも存在しないミュージシャンについて、
つらつらと、
まるまる1Pの記事を書いてしまい、
しかも、それが、
そのまま掲載されてしまったという。
- 藪下
-
愛読者の間では「語り草」になっている、
有名なネタです。
- 古矢
- あれには大笑いしたなあ。
- ──
-
随所に「で、誰?」と思いながら読むと、
非常に味わい深いものがあります。
- 藪下
-
きっと、よくおわかりになっていると
思いますけど、いまの例みたいに、
『VOW』ネタというのは、
狙ってやってるものじゃないですよね。
本人はウケを狙ってるわけじゃなくて、
大真面目。
つまり天然モノ、自然に生まれた‥‥。
- ──
- そこにただ、存在しているもの。
- 古矢
- そんなたいそうに言わなくても。
- ──
- そうですね。
- 古矢
-
単なるヘンな看板、おかしな投稿、
マヌケな誤植なんだから。
- 藪下
- おっしゃるとおりです。
- ──
-
そもそも、1970年代に
まだ「Voice Of Wonderland」
と言っていたころは、
街の情報コーナーみたいな感じだったと。
- 古矢
-
そう、いまみたいなスタイルは、
初代総本部長の
渡辺祐さんが確立したものなわけだけど、
ちょうど同じような時期に、
香川県の情報誌が
「笑いの文化人講座」ってコーナーで、
「読者投稿にコメントをつける」
という、同じようなことをやりはじめて。
- ──
- え、そうなんですか。同時多発的に?
- 古矢
-
オレも「笑いの文化人講座」のほうは
リアルタイムでは知らなかったけど。
- ──
-
なんでしょう、
時代の要請‥‥だったんでしょうか。
- 古矢
-
そうですね‥‥って、
そんなたいそうなもんじゃないから。
- ──
- そうですよね。
- 古矢
- ただのオマヌケなんだから。
- 藪下
- おっしゃるとおりです。
2017-09-29 FRI