伊藤 | なぜ、そんな制服っぽいスタイルの『Olive』の中で、 コム デ ギャルソンのスカートに至ったんでしょう。 |
岡戸 | マーガレット・ハウエルや、コム デ ギャルソンは、 やっぱり当時憧れのブランドだったんです。 高かったし、素材がよかったから。 だから『Olive』では、 「憧れブランドページ」で登場してたんです。 きっとわたしも取材に行ったか見に行ったかして、 買うようになったんでしょうね。 『ハナコ(hanako)』が創刊の頃、 ちょっとそちらに移り、 1年もしないうちに、また『Olive』に戻って。 その2回目に戻った『Olive』が長かったんですけど、 その頃には黒いタイツに黒いスカートでした。 |
伊藤 | もう出来上がってた、岡戸スタイルが。 たまに、フワッとしたスカート履きたいとか、 ないんですか? |
岡戸 | あ、履いてたんですよ、そういえば! マーガレットハウエルのワンピースを! |
伊藤 | 着てたんですね。 |
岡戸 | それがまた同じ形のワンピースを、ずぅっと着てて。 |
伊藤 | それはどういう形のもの? |
岡戸 | ウエストも切り替えない。ただのストーンとした形。 夏は薄い麻だし、コットンもあるし、 冬になると、ウールになっていくの。 それが、マーガレットハウエルの定番だった。 その同じ形のワンピースを、本当によく買ってましたよ。 白いシャツの前でした。 |
伊藤 | つまり、岡戸さんは、 1回気に入ると、もうずっとそれを着る。 |
岡戸 | そう! 面倒くさいから、考えたくないから。 |
伊藤 | わかります、わかります。 |
岡戸 | いろいろ迷いたくないから 手短で済ませたいのよね。 |
伊藤 | 私も、試着とか面倒くさいから、 1枚試着して気に入ると、色違いを買ったり。 |
岡戸 | それを「違う服」って言い張るでしょう(笑)。 |
伊藤 | だってね、違う服ですもん。 |
岡戸 | そうよね、違う服よね。 |
伊藤 | そのワンピース時代が何年か続いたんですね。 「今日はワンピースにしよう」じゃなくて、 もうとにかくとにかく(笑)。 |
岡戸 | ずっとワンピース。 「岡戸さんは、100年同じ格好ね」 って言われてましたよ。 |
伊藤 | それは、食べるものとかもそうなんですか? 気に入ったら? |
岡戸 | いや、そんなことないんですよ。 たぶん格好は、早く決めたいんでしょうね、何かを。 |
伊藤 | なぜだろう? |
岡戸 | おしゃれじゃないんだと思う。 逆おしゃれだと思う。 |
伊藤 | そうかな? ここまで徹底してるっていうことは、 やっぱりおしゃれなんだと思うんですけど。 |
岡戸 | いや、違うと思う。 |
伊藤 | ていうか、おしゃれって何なんですか? |
岡戸 | ねぇ。それこそ伊藤さんに聞きたい。 どういうことがおしゃれなの? |
伊藤 | 私は何にも考えていないんですよ。 ノリで「これ着ちゃお!」ってかんじ。 |
岡戸 | 本当? でも、着ること自体、 迷うこと自体、楽しいですか? |
伊藤 | 迷う? 迷わないです。 |
岡戸 | (笑)えぇと、じゃあ、服を買う時も、 服に何を合わせようかっていう時も? |
伊藤 | あ、そんなの考えない。 |
岡戸 | 家でも? |
伊藤 | 家でも考えないですね。 |
岡戸 | 着たいもの着るだけ? |
伊藤 | そうそう(笑)。 だから、コーディネートを考えるのが面倒になって ついついワンピースを選んじゃう。 |
岡戸 | ほら。私もどっちかというとそうですよ。 |
伊藤 | あ、そうか。 |
岡戸 | 面倒くさいんですよ、 着るものについて、いろんなことを考えるのが。 |
伊藤 | この前、美容院で雑誌見てたら、 「重ね着がすごく上手い人」の 「ある日の重ね着」が紹介されていて。 私の一週間分くらいの服の量を一日で着てる。 ということは、それだけコーディネートを 考えてるってことですよね。 色合いとか、服の分量とか。 すごいなぁと。 ‥‥え? ってことは私たち、 面倒とか言ってないでもっと考えないとだめ? |
岡戸 | おしゃれじゃないっていうことよ! 楽しんでないもん(笑)。 |
伊藤 | なんかもう、 「えぇい、これ!」みたいな。 |
岡戸 | それでも伊藤さんは 「かわいいなぁ」っていう印象があるから。 |
伊藤 | それは、私が、 かわいいものが好きだということなんですよ、たぶん。 かわいいワンピースとか、リボンも好きだから。 |
岡戸 | あと、ちょっと大人できれいめな感じよ。 |
伊藤 | ふふふ、それで、みんなが騙されてる? |
岡戸 | 騙してるんだ、あなたは(笑)。 |
伊藤 | だって何もコーディネートしてないです。 岡戸さんも「服装にすごく哲学がある人だ」 みたいに思われてるけど、実は面倒くさい(笑)。 ‥‥そんなことに話持って行っちゃだめじゃない? だめだめ! もっとキリッとした、真理的なものを、 岡戸さんから発見したい。 |
岡戸 | でも、概ね正しいと思う、それで。 |
伊藤 | わたしは買い物は好きなんです。 岡戸さんはどうですか? |
岡戸 | 私はね、好きじゃないと思います。 お店は怖いし、どこのデパートも 上(高級店)のほう行ったら怖いし(笑)、 下のほうは、「え? これ、ちょっと 合わないんじゃないの?」っていうやつだし。 だから、小さな店を1人でやってます、 くらいの規模だと「そこなら行ける」と思って。 基本、「怖いなぁ」って思ってるわけですよ。 男の人はそういうこと、ないの? |
── | 男もありますよ。 デパートの上のほう怖いです。 |
伊藤 | やっぱり。 |
岡戸 | やっぱり。 |
── | たとえばスーツの売り場が2フロアあって、 上の売り場は経営者が着るスーツで、 その下の売り場は、会社員が着るスーツって、 そういうことが明確なんです。 |
岡戸 | そんなこと書いてないでしょう? |
── | 書いてないです。 |
伊藤 | でも、わかる? |
── | わかるんです。 |
岡戸 | 質が違うの? |
── | 全く違います。 とくにデパートはそういうところが明確。 |
岡戸 | 階級社会なのかな、日本も、そういう意味では。 |
── | さらに高級ヨーロッパブランドのフロアがあったり。 緊張しちゃいますよ。 それこそズッカもコム デ ギャルソンもある ごちゃまぜの楽しいフロアもあるので、 そういうところを見るのは楽しいですけれど。 |
岡戸 | だから、買い物行きたくないんですよ、もう本当に。 (つづきます) |
2013-03-20-WED
写真:有賀傑 |
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