その3

 

その2 『Olive』編集部の制服。

岡戸 わたしが白を着るのは、
下が黒か紺だからだと思いますよ。
伊藤 そういえば、スカートは黒か紺ですよね。
ジーンズとかも履かない?
岡戸 はい。チノパンは好きで、履くんですけども。
スカートの8割‥‥9割くらい、その形なんです。
伊藤 どちらのブランドですか?
岡戸 コム デ ギャルソンなんだけど、
コム デ ギャルソンに元々ある形ではなく、
元はロングスカートなんです。
それを切ってもらってるんです。
一同 ほぉー!!
岡戸 あれ? だめ(笑)?
伊藤 すごいですよ!
── そもそも、コム デ ギャルソンの
ロングスカートを切るって。
岡戸 切っちゃう。
オリジナルの形が壊れちゃうわけだから、
最初の頃は、「すみません」って、
お店で切ってもらってたんだけど、
今や、買って、家に帰って、
「このくらいだ」ってわかるから、
リフォーム屋さんで切ってもらいます。
一同 おぉー。
岡戸 あれ? なんで? それ、おかしい?
伊藤 おもしろーい。
岡戸 初めて買った時から、そうなんですよ。
「ちょっと長いな」と思って、
自分の好きに切ってもらったのね。
もちろん「コム デ ギャルソンに悪いなぁ」
って思ったんだけれど(笑)。
伊藤 でも、いいですよね。
こんなふうに、自分のものになってるなんて。
岡戸 そんなわけだから、たぶん白いシャツは、
黒と紺のスカートに合わせやすいように
多くなっていったのかもしれません。
そんなこと、今日初めて、気が付いたんですけど。
伊藤 そして、決して素足にサンダルではないんですよね。
素足にヒールの靴でもなく。
岡戸 黒いタイツが好きなんです。
なんでだろう?
伊藤 夏は、暑くないですか?
岡戸 暑いんですよ(笑)。
でもそんなこと訊くの、
伊藤さんだけですよ。
伊藤 わたし、暑がりだから。
岡戸 ストッキングが嫌いなんです。
だから、素足になりたいんだけど、
お見せするほどの自信はない。
若ければ、どうかなぁと思うけど。
伊藤 でも、ソックスじゃなくて、黒いタイツ?
岡戸 ソックスだけだと、スースーするでしょう。
伊藤 なるほど。そして必ず、
ローヒールの、ローファー。
黒い靴ももしかして何足も持っている?
岡戸 そう。よくわかりました。
伊藤 それはどれくらい持ってるんですか?
岡戸 会社を辞めたとき、本当にもう要らないと思って、
ずいぶん整理したんです。
そうしたら、履いていない茶色い靴がいっぱい。
黒ばっかり買ってたつもりで、
たまには茶色も買ってて、履いてなかった。
伊藤 え? え? 履かないんですか?
岡戸 黒いタイツに似合えば
履こうかなと思ってるんですけど。
伊藤 茶色い靴に合わせて
タイツを替える気はないんだ?
岡戸 あ、ない(笑)! ほんとね。
グレーのタイツとか、
買ったこともあるんです。
でも、冬ならまだしも、
「夏でグレーのタイツっていうのもなぁ」と。
要するに、見せたくない、いろんなものを。
そういう傾向があるんでしょうね(笑)。
伊藤 でも、それはいくつくらいからですか。
高校生の時とか?
岡戸 やっぱり『Olive』で仕事してる時からかな。
20年くらい前ですね。
それまで『Olive』の編集部では
黒いストッキング履いてる人を
見たことがありませんでした。
大人の格好してなかったじゃない?
『Olive』って、
やっぱりチノパン、ジーパンでしょう。
で、上はTシャツやシャツ、
それにセント・ジェームス(Saint James)の
ボーダーシャツ、そして、
エルベ・シャプリエ(Herve Chapelier)のバッグ。
これね。
伊藤 私もちょっとそういう格好してた覚えがある。
岡戸 してたでしょう?
エーグル(AIGLE)のブーツとか。
セント・ジェームス
ボーダーの長袖Tシャツで有名な、
フランスのカジュアルブランド。
1889年、フランス北部ノルマンディー地方にある
町の名前を冠して設立された。
地元の漁師や船乗りの仕事着をモチーフに、
実用的な定番的おしゃれを提案している。
エルベ・シャプリエ
船型のナイロンのトートバッグで知られる
フランスのかばんのメーカー。
創立者のエルベ・シャプリエが過ごした
アメリカ西海岸の空気と、
故郷のビアリッツの色彩、
フランス伝統の美をミックスしたセンスで
日本でもとても人気が高い。
エーグル
1853年創業のフランスの
アウトドアファッションブランド。
天然ゴム素材のラバーブーツは
創業時からのアイテム。
伊藤 全部持ってます!
岡戸 フルアイテム。
そういったような恰好が制服的な感じだったので、
私の中でもナチュラルな色のストッキングは
履くこともなく、
いつの間にか履けなくなっちゃって。
伊藤 ナチュラルなストッキングっていうのは、
わたしたち、確かに履く機会は、ないですよね。
岡戸 編集部は学校的な要素がすごく強かったから、
何の違和感も感じずに、私、いたんだと思いますよ。
大人っぽい格好をしてる人も、
多分いたのかもしれないけど、
なんとなくみんな、同じような格好をしてた。
みんな違ってたけど、同じようだった。
エーグルのブーツ、ゴムびきの長靴ですよね。
あれも、普段でみんな履いてたから。
── マガジンハウスって、
ファッション系出版社じゃないですか、いわば。
先輩女性編集者から、
「編集者はこういう格好をするものよ」
なんていうご教示は?
岡戸 編集部によって全部違ってたみたいでです。
たとえば『アンアン(an・an)』では、
これから来るようなものを
スタイリストさんが見つけてきて、
それを着こなしてるのを見て、
「あぁ、そうか」と。
それを自分で工夫して、人と違う格好をする。
それが『アンアン』のスタイルでしたね。
‥‥そういえばわたし、先輩編集者から、
言われたことがあります。
小っちゃいスカーフがもう大好きで、いつも巻いてたの。
そうしたら、
「スカーフ、首から生えてない?」って(笑)。
いつも白いシャツに、スカーフをしてたから。
伊藤 (笑)『Olive』向きの人が
『Olive』編集部に行けるんですか?
岡戸 そんなこともなかったんです。なんでだろう?
私なんて、『週刊平凡』っていう芸能誌にいたのに、
廃刊になっちゃったから、『Olive』に異動したんです。
「行きたい!」て言ってる人じゃなかったんですよ。
── 岡戸さんは芸能週刊誌出身なんですね!
たしかに記者っぽいですね、どっちかっていうと。
岡戸 記者ですよ、私、もうすごい。

(つづきます)


2013-03-19-TUE


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写真:有賀傑