坂田さんのつくる「白物」(しろもの)、
つまり白竹をつかった細工は、たいへん美しく、
そして丈夫。
別府では「匠」のひとりとして、
とても人気の高い作家さんなんです。
伊藤さんいわく、
「坂田さんの作品は、きりっとしています」。
坂田さんのアトリエにあげていただきました。
「白といっても、
これで25年ぐらい経ってるんですよ」
と見せてくださった作品。
左が製作中のもの、右は25年を経たもの。
こんな経年変化もうつくしい。
坂田さんが最初にふれ、
竹細工の道にすすむことを決めたきっかけは、
茶道具の世界だったそう。
それは京都をベースにした、研ぎ澄まされた世界でした。
感動はしたけれど、それは自分の仕事ではない。
そう感じた坂田さんは、学校に通いながら、
ひととおりの技術を学んでいくなかで、
「日常のもの」の作り手になる決意をします。
「白竹の細工は、素材がとても大事なんです」
つまり、後で塗りをほどこすならば、
多少の傷があっても使えますが、
素材そのもののうつくしさがきわだつ白竹細工は、
素材がよいことが、まず大切。
傷のない竹を仕入れ、さらに自分で厳選して使うのです。
作家は、基本的に、「ひごづくり」から自分でします。
油抜きは専門の工場でしてもらい、
「丸竹」を「割竹」に、
そして、そこから「ひご」をつくります。
厚いひごは、じつは2つに割(さ)いていっしょに使います。
そうすることで弾力がうまれ、編みやすくなっていく。
1枚のままだと硬くて編めないひごも、
2枚にすれば、やわらかさが出て、
なおかつ、2枚を合わせることで、強度も出る。
「強い、というのは、
受けた力を分散する力もあるということです。
衝撃に強くなるんですよ」
「知恵と工夫の塊ですね!
だって、こうするのがいちばんいいっていうふうに、
古くからだんだんわかってきたわけですもんね」
これは竹を曲げる道具。
下からガスの炎で加熱し、
水に濡らした竹を、カーブにあてて、
ひっぱって、くさびで留める。
いい竹は、「しなやかさ」だけではなく、
「粘り」があるのだそうです。
かんたんには割れたり折れたりしない、
芯の強さのようなことでしょうか。
なんだかちょっと人間的ですよね。
こちらは30年ほど経ったもの。
修行時代につくったもので、
今でも、うどんやそばを入れて使っているそうです。
「100年経っても色がもうすこし付くぐらいで、
そんなに変化はないと思うんですよ。
ただ、ひごがやせていきます。
だんだん収縮するんですね」
「しなやかでいながら端正。
坂田さんの作品を初めて見た時、
そんな風に感じました。
お話を伺っている間に何度か
『ねばりがある』という言葉を耳にしました。
もしかして『ねばり強い』という言葉は、
こんなところからきたのかしら? と
30年前に編まれた
ざるを見ながらそんなことを思いました。
ねばり強く、しなやかで端正なんて、
まるで物腰やわらかだけれど芯の強い、
美人さんのようではありませんか。
美しい人が美しく年を重ねていくように、
美しい白竹でていねいに編まれたざるやかごは、
いつまで経っても色褪せない。
それどころかより
いい味わいになるものなのですね」(伊藤さん)
次回は、竹細工の材料となる
「白竹」をつくる製竹所におじゃまします。
どうぞおたのしみに!
2015-02-23-MON
写真:有賀傑 |
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