「Why Camp?」を考えながら、
					キャンプに行ってきた。
					石川直樹、小杉敬、KIKI、こいしゆうか、
					そして、ほぼ日キャンプチーム
					With唐突描き下ろし
					和田ラヂヲのWHY CAMP?

安全と冒険の両方を。
					石川直樹さんと
					小杉敬さんのキャンプ談義

「Why Camp?」
どうしてキャンプをするんだろう?

ほぼ日がキャンプのプロジェクトを
スタートさせるにあたって、
最初に向き合ったテーマがそれでした。

何人かの方に取材したあと、
私たちはその問いかけを抱えたまま、
実際にキャンプに行ってきました。
そこでもまた、キャンプについて話します。

今回、お届けするのは、写真家の石川直樹さんと
ゼインアーツの代表を務める小杉敬さんの対談です。
ふたりのキャンプ経験はまさに正反対。
いままで一度もキャンプ場に
来たことがないという石川直樹さんと、
キャンプ場でのキャンプをくり返し、
そこでつかうギアをつくり続けている小杉敬さん。

天候にめぐまれた五光牧場オートキャンプ場で
収録したキャンプ談義をどうぞ。

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第3回日本の特殊なキャンプ文化

小杉
石川さんが登山をはじめるきっかけは
なんだったのですか?
石川
登山というか、テント泊のはじまりは、
ホテルに泊まるお金がなかったからなんです。
小杉
それは、旅をしていてっていうことですか?
石川
旅、というか、
旅みたいなものからスタートしました。
16歳とか17歳のころに、
カヌーイストの野田知佑さんの本を読んで、
会ってみたいなあ、と思ったんです。
当時、野田さんは鹿児島県に住んでいて、
なんとか連絡が取れたんですけど、
「1週間後に鹿児島の磯海水浴場に来なさい」
とだけ言われて。
当時、ぼくは携帯電話も持っていなくて、
とりあえず、青春18きっぷというのをつかって、
各駅停車の電車を乗り継ぎながら
どうすればいいのかわからなかってけど、
東京から鹿児島に向かって。
小杉
なんという行動力(笑)!
石川
で、鹿児島に着いたはいいものの、
磯海水浴場って‥‥
けっこう広い砂浜なんですよ。
──
(笑)
石川
その広い砂浜にひとりで立って、
「どこに行ったら野田さんに会えるんだ」
って途方に暮れて(笑)。
お金もなくてホテルにも泊まれないから、
仕方なく何日間かその砂浜に
テントで寝ていたんです。
それで、結果的にはお会いできたんですけど。
小杉
はーー、すごいですね。
本当に、必要に迫られたテント泊だったんだ。
石川
そういう経験もあって、
テントっていうのはお金のない人や
宿がない自然のなかに行くために、
やむを得ず泊まるものだと思ってたんです。
だから、今日、ここに来て
ショックを受けたことのひとつは、
「お金がない人はキャンプ場には来れない」
っていうことでした。
キャンプ場に使用料を払って、道具をそろえて、
というふうに、いまの日本のキャンプって、
お金がかかる趣味になっていますよね。
小杉
たしかに、お金をかけようと思えば
たくさんかけられる趣味だと思います。
石川
だから、やっぱり、物質的に豊かになったから、
こういう文化が生まれているんだろうなと。
ふだんの生活が便利で整っているからこそ、
自然に触れたいと思う気持ちが強くなっている。
小杉
そうだと思います。
それこそバングラデシュに住んでいて、
キャンプをやってる人なんていないですし。
都会だからこそ生まれたカルチャーだと思います。
石川
都会というか、
もう日本独自のものなんじゃないですかね?
アメリカにもたぶんこんな至れり尽くせりな
キャンプ場文化はないですよ。
小杉
そうなんですよね。こういうキャンプって、
アメリカから入ってきたカルチャーだと
思ってる人が意外と多いんですけど、
アメリカにはまったく
こういった場所はないんですよね。
石川
これ、日本独自のキャンプ文化ってことで
世界に広く紹介したらちょっと
おもしろいかもしれないなあ。
小杉
そうですね。
石川
ぼく、先週、イタリア北部に行って、
アルプスの山に登っていたんです。
そこでは、日が暮れたら
どこにテントを張ってもいいんです。
もちろんお金もかかりません。
ただし、日が昇る前にはかならず
テントを撤収しなくちゃいけない。
小杉
へええ。
石川
それはイタリアのルールですけど、
おそらくヨーロッパって、
そういう感じのところが多かったと思います。
つまり、フィールドのなかで必要に迫られた人は
誰でもキャンプする権利がある。
もちろんお金なんてとられない。
これがスタンダードな考えかたですね。
小杉
山でテントを張らないと、
それこそ命にかかわりますしね。
石川
はい。一方でアメリカは、まあ広いですし、
平地にキャンプ場はありますけど、
基本的に自然そのままというか、
ほったらかしのとこが多いですよね(笑)。
このキャンプ場みたいに水場があって、
トイレがあって、草が刈られていて、
池が人工的にレイアウトされていて、
「底のないテント」で眠れるというのは
相当すごいなあ、と。
小杉
(笑)
石川
だから、いまのこの日本の
キャンプを現状を海外で紹介したら、
びっくりされるはず。
日本のキャンプ文化って、世界のなかでも、
かなり特殊なものになっていると思いますね。
(つづきます)

キャンプ場であれこれ思った
							ほぼ日キャンプチーム
							今日の雑感コーナー

なんか、キャンプに行くといろいろ思いますよね。
ほぼ日キャンプチームも、あれこれ思うし、
誰かに話したくもなるし、写真も撮ったりするので、
そういうのを載せておくことにしました。
みんなで書くよ。外部スタッフも書くよ。
いっしょにキャンプしたらチームだからね。

そこまでの道のりが気持ちいいか。
							今日の担当:さゆり(ほぼ日)

ほぼ日でキャンプのプロジェクトが立ち上がって、
たくさんのキャンプ場に、
何度も取材やロケハンに出かけました。
都内からのアクセスがいい所、
炊事場で温水が出たりお風呂も併設してる所、
逆に必要最低限の水まわりのみのワイルドな所、
川や湖に面している所、などなど‥‥。

キャンプ場の好みについて人と話せば話すほど、
どんな要素が「グッとくる」かは、
人それぞれまったく違うものだ、
ということがよくわかりました。

私はどうやら、
「そこまでの道のりが気持ちいいかどうか」も、
大きな要素のひとつみたいです。

今回の「五光牧場オートキャンプ場」へ行くには、
都内から高速を走らせ下道に降り、
八ヶ岳の麓、野辺山高原へ向かって登っていきます。
キャンプ場へ近づくほどに、景色に緑が増えていき、
遠くには南アルプス、眼下には森が広がっていきます。
日常から離れた清々しさを感じさせてくれる道のりです。

そして、その森の中にぽつんとひとつ、
木々に埋もれるように佇む家が印象的でした。
さぞ静かな時間が流れているのだろうな、と。
これからひと晩、そんな森で過ごすのだと思うと、
ワクワクと少しの緊張感でドキドキして‥‥。
今夜のキャンプがよりいっそう楽しみになったのでした。
2023-08-24(thu)

STAFF

編集 : 金沢 俊吾
動画撮影 : 石渡 樹
撮影協力 : 植田 慧祐