「Why Camp?」
どうしてキャンプをするんだろう?
ほぼ日がキャンプのプロジェクトを
スタートさせるにあたって、
最初に向き合ったテーマがそれでした。
何人かの方に取材したあと、
私たちはその問いかけを抱えたまま、
実際にキャンプに行ってきました。
そこでもまた、キャンプについて話します。
今回、お届けするのは、写真家の石川直樹さんと
ゼインアーツの代表を務める小杉敬さんの対談です。
ふたりのキャンプ経験はまさに正反対。
いままで一度もキャンプ場に
来たことがないという石川直樹さんと、
キャンプ場でのキャンプをくり返し、
そこでつかうギアをつくり続けている小杉敬さん。
天候にめぐまれた五光牧場オートキャンプ場で
収録したキャンプ談義をどうぞ。
![安全と冒険の両方を。
石川直樹さんと
小杉敬さんのキャンプ談義](./img/title2_sp.jpg)
石川 直樹(いしかわ・なおき)
1977年東京都渋谷区生まれ。
東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。
人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、
辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、
作品を発表し続けている。
2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、
『POLAR』(リトルモア)により
日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。
2011年『CORONA』(青土社)により土門拳賞。
2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、
『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞。
『最後の冒険家』(集英社)により
開高健ノンフィクション賞を受賞。
小杉 敬(こすぎ・けい)
1972年新潟県生まれ。
1993年、大手アウトドア用品メーカーに就職、
数々のキャンプ道具の開発を手がける。
2018年に独立、長野県松本市を拠点に
株式会社ゼインアーツを設立した。
機能と藝術の融合をコンセプトに掲げ、
手がけたアウトドア用品は予約時点で完売、
グッドデザイン賞ベスト100にも
選出されるなど人気を博している。
![](./img/03/img01.jpg)
- 小杉
- 石川さんが登山をはじめるきっかけは
なんだったのですか?
- 石川
- 登山というか、テント泊のはじまりは、
ホテルに泊まるお金がなかったからなんです。
- 小杉
- それは、旅をしていてっていうことですか?
- 石川
- 旅、というか、
旅みたいなものからスタートしました。
16歳とか17歳のころに、
カヌーイストの野田知佑さんの本を読んで、
会ってみたいなあ、と思ったんです。
当時、野田さんは鹿児島県に住んでいて、
なんとか連絡が取れたんですけど、
「1週間後に鹿児島の磯海水浴場に来なさい」
とだけ言われて。
当時、ぼくは携帯電話も持っていなくて、
とりあえず、青春18きっぷというのをつかって、
各駅停車の電車を乗り継ぎながら
どうすればいいのかわからなかってけど、
東京から鹿児島に向かって。
- 小杉
- なんという行動力(笑)!
- 石川
- で、鹿児島に着いたはいいものの、
磯海水浴場って‥‥
けっこう広い砂浜なんですよ。
- ──
- (笑)
- 石川
- その広い砂浜にひとりで立って、
「どこに行ったら野田さんに会えるんだ」
って途方に暮れて(笑)。
お金もなくてホテルにも泊まれないから、
仕方なく何日間かその砂浜に
テントで寝ていたんです。
それで、結果的にはお会いできたんですけど。
- 小杉
- はーー、すごいですね。
本当に、必要に迫られたテント泊だったんだ。
![](./img/03/img02.jpg)
- 石川
- そういう経験もあって、
テントっていうのはお金のない人や
宿がない自然のなかに行くために、
やむを得ず泊まるものだと思ってたんです。
だから、今日、ここに来て
ショックを受けたことのひとつは、
「お金がない人はキャンプ場には来れない」
っていうことでした。
キャンプ場に使用料を払って、道具をそろえて、
というふうに、いまの日本のキャンプって、
お金がかかる趣味になっていますよね。
- 小杉
- たしかに、お金をかけようと思えば
たくさんかけられる趣味だと思います。
- 石川
- だから、やっぱり、物質的に豊かになったから、
こういう文化が生まれているんだろうなと。
ふだんの生活が便利で整っているからこそ、
自然に触れたいと思う気持ちが強くなっている。
- 小杉
- そうだと思います。
それこそバングラデシュに住んでいて、
キャンプをやってる人なんていないですし。
都会だからこそ生まれたカルチャーだと思います。
- 石川
- 都会というか、
もう日本独自のものなんじゃないですかね?
アメリカにもたぶんこんな至れり尽くせりな
キャンプ場文化はないですよ。
- 小杉
- そうなんですよね。こういうキャンプって、
アメリカから入ってきたカルチャーだと
思ってる人が意外と多いんですけど、
アメリカにはまったく
こういった場所はないんですよね。
- 石川
- これ、日本独自のキャンプ文化ってことで
世界に広く紹介したらちょっと
おもしろいかもしれないなあ。
- 小杉
- そうですね。
![](./img/03/img03.jpg)
- 石川
- ぼく、先週、イタリア北部に行って、
アルプスの山に登っていたんです。
そこでは、日が暮れたら
どこにテントを張ってもいいんです。
もちろんお金もかかりません。
ただし、日が昇る前にはかならず
テントを撤収しなくちゃいけない。
- 小杉
- へええ。
- 石川
- それはイタリアのルールですけど、
おそらくヨーロッパって、
そういう感じのところが多かったと思います。
つまり、フィールドのなかで必要に迫られた人は
誰でもキャンプする権利がある。
もちろんお金なんてとられない。
これがスタンダードな考えかたですね。
- 小杉
- 山でテントを張らないと、
それこそ命にかかわりますしね。
- 石川
- はい。一方でアメリカは、まあ広いですし、
平地にキャンプ場はありますけど、
基本的に自然そのままというか、
ほったらかしのとこが多いですよね(笑)。
このキャンプ場みたいに水場があって、
トイレがあって、草が刈られていて、
池が人工的にレイアウトされていて、
「底のないテント」で眠れるというのは
相当すごいなあ、と。
- 小杉
- (笑)
- 石川
- だから、いまのこの日本の
キャンプを現状を海外で紹介したら、
びっくりされるはず。
日本のキャンプ文化って、世界のなかでも、
かなり特殊なものになっていると思いますね。
![](./img/03/img04.jpg)
(つづきます)
なんか、キャンプに行くといろいろ思いますよね。
ほぼ日キャンプチームも、あれこれ思うし、
誰かに話したくもなるし、写真も撮ったりするので、
そういうのを載せておくことにしました。
みんなで書くよ。外部スタッフも書くよ。
いっしょにキャンプしたらチームだからね。
ほぼ日キャンプチームも、あれこれ思うし、
誰かに話したくもなるし、写真も撮ったりするので、
そういうのを載せておくことにしました。
みんなで書くよ。外部スタッフも書くよ。
いっしょにキャンプしたらチームだからね。
ほぼ日でキャンプのプロジェクトが立ち上がって、
たくさんのキャンプ場に、
何度も取材やロケハンに出かけました。
都内からのアクセスがいい所、
炊事場で温水が出たりお風呂も併設してる所、
逆に必要最低限の水まわりのみのワイルドな所、
川や湖に面している所、などなど‥‥。
キャンプ場の好みについて人と話せば話すほど、
どんな要素が「グッとくる」かは、
人それぞれまったく違うものだ、
ということがよくわかりました。
私はどうやら、
「そこまでの道のりが気持ちいいかどうか」も、
大きな要素のひとつみたいです。
今回の「五光牧場オートキャンプ場」へ行くには、
都内から高速を走らせ下道に降り、
八ヶ岳の麓、野辺山高原へ向かって登っていきます。
キャンプ場へ近づくほどに、景色に緑が増えていき、
遠くには南アルプス、眼下には森が広がっていきます。
日常から離れた清々しさを感じさせてくれる道のりです。
そして、その森の中にぽつんとひとつ、
木々に埋もれるように佇む家が印象的でした。
さぞ静かな時間が流れているのだろうな、と。
これからひと晩、そんな森で過ごすのだと思うと、
ワクワクと少しの緊張感でドキドキして‥‥。
今夜のキャンプがよりいっそう楽しみになったのでした。
たくさんのキャンプ場に、
何度も取材やロケハンに出かけました。
都内からのアクセスがいい所、
炊事場で温水が出たりお風呂も併設してる所、
逆に必要最低限の水まわりのみのワイルドな所、
川や湖に面している所、などなど‥‥。
キャンプ場の好みについて人と話せば話すほど、
どんな要素が「グッとくる」かは、
人それぞれまったく違うものだ、
ということがよくわかりました。
私はどうやら、
「そこまでの道のりが気持ちいいかどうか」も、
大きな要素のひとつみたいです。
今回の「五光牧場オートキャンプ場」へ行くには、
都内から高速を走らせ下道に降り、
八ヶ岳の麓、野辺山高原へ向かって登っていきます。
キャンプ場へ近づくほどに、景色に緑が増えていき、
遠くには南アルプス、眼下には森が広がっていきます。
日常から離れた清々しさを感じさせてくれる道のりです。
そして、その森の中にぽつんとひとつ、
木々に埋もれるように佇む家が印象的でした。
さぞ静かな時間が流れているのだろうな、と。
これからひと晩、そんな森で過ごすのだと思うと、
ワクワクと少しの緊張感でドキドキして‥‥。
今夜のキャンプがよりいっそう楽しみになったのでした。
2023-08-24(thu)
STAFF
編集 : 金沢 俊吾
動画撮影 : 石渡 樹
撮影協力 : 植田 慧祐
動画撮影 : 石渡 樹
撮影協力 : 植田 慧祐