「Why Camp?」を考えながら、
					キャンプに行ってきた。
					石川直樹、小杉敬、KIKI、こいしゆうか、
					そして、ほぼ日キャンプチーム
					With唐突描き下ろし
					和田ラヂヲのWHY CAMP?

安全と冒険の両方を。
					石川直樹さんと
					小杉敬さんのキャンプ談義

「Why Camp?」
どうしてキャンプをするんだろう?

ほぼ日がキャンプのプロジェクトを
スタートさせるにあたって、
最初に向き合ったテーマがそれでした。

何人かの方に取材したあと、
私たちはその問いかけを抱えたまま、
実際にキャンプに行ってきました。
そこでもまた、キャンプについて話します。

今回、お届けするのは、写真家の石川直樹さんと
ゼインアーツの代表を務める小杉敬さんの対談です。
ふたりのキャンプ経験はまさに正反対。
いままで一度もキャンプ場に
来たことがないという石川直樹さんと、
キャンプ場でのキャンプをくり返し、
そこでつかうギアをつくり続けている小杉敬さん。

天候にめぐまれた五光牧場オートキャンプ場で
収録したキャンプ談義をどうぞ。

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第4回失敗しながらでもいい

──
そろそろ日が暮れてきましたが、
石川さん、ここまで過ごして、
キャンプ場という場所はいかがですか?
石川
いや、どうでしょうねえ。
空気もきれいで気持ちいいんですけど‥‥。
だけど、なんだろう、
批判的な気持ちは全然ないんですけど、
ゴルフ場みたいだというか、
やっぱり、自然なんだけど、
つくりものに感じられるところはあります。
小杉
ああ、それはおっしゃるとおりで、
こういうキャンプ場って、
やっぱり人工的につくられたものです。
土を掘り起こして、平地に整えて、池を作って。
快適に自然を味わえるようにつくっている。
だから「ゴルフ場みたい」という
石川さんの感想はすごく理解できます。
──
一方で、登山などをまったくしない人、
ずっと都心で暮らしている人は、
このキャンプ場の景色を見ても、
自然を十分に感じられるような気もします。
小杉
そうなんですよね。
あるいは、自然を感じることよりも、
最初から「キャンプをする」ということ自体に
重きを置いている人たちもいますし。
ただ、キャンプの道具をつくっている
ぼくがいうのはおかしいかもしれませんが、
おしゃれなギアをそろえて
「インスタ映えさえすれば」みたいな考え方は、
本来のキャンプのたのしみ方から、
ちょっと離れてきている気がしています。
──
ゼインアーツさんのキャンプ用品に
価値を感じて購入して、
その道具をつかうこと自体に
キャンプのたのしさを見出している人も
たくさんいらっしゃいますよね。
小杉
それ自体はとてもうれしいです。
ただ、ゼインアーツとしては
「キャンプに慣れたら、
なるべく道具を減らしましょう」と、
お客さまにも日ごろからお伝えしています。
──
ああ、なるほど。
小杉
というのも、道具に頼れば頼るほど、
自力で乗り越える機会は減るんですよね。
難しい状況を、限られた道具をつかって、
知恵を働かせて乗り越えていくというのが
アウトドアの醍醐味ですから、
それを味わえないのはもったいないと思うんです。
石川
それは登山でもいっしょで、
最初から高価な道具をそろえるのではなく、
トライ&エラーをくり返しながら自分のものに
していったほうがいいと思うんですよ。
小杉
はい、そう思います。
石川
失敗しながらでもいいと思うんですよね。
ぼくも、十代の頃からさまざまな体験を通して、
必要だなあ、と思える道具を集めてきました。
中学校のときのはじめての登山は
バスケットボールシューズで行きましたから。
雨対策なんてもちろんしてなかったから、
雨が降ったら靴下にビニール袋をかぶせて。
逆に汗とかでグチャグチャになったんですけどね。
小杉
(笑)
石川
そういう経験を通して、
「靴選びは重要だな」とか、
「雨具はゴアテックスがいいなあ」とか、
ひとつひとつ学びながら、いまに至っています。
だから、キャンプ場に来る人も、
突風でテントが飛ばされそうになったとか、
たいへんな思いをするのも
いい経験になるかもしれないですね。
──
小杉さんも前回のインタビューで
「失敗してみればいい」
とおっしゃっていましたね。
小杉
はい。あまり神経質に考えずに、
1回失敗してみればいいと思うんです。
もちろん危険にならないという前提で、
まずやりたいようにやってみればいいじゃん、って。
石川
こういうキャンプ場なら危険も少ないですし。
小杉
はい、時間もたっぷりありますし。
焚き火をしてみたり、お湯を沸かしてみたり、
都会で自分がいままでやれなかったことに
チャレンジしていくと、
薪ってこういうふうに燃えるんだなとか、
こういうふうに火を起こせるんだなとか、
いろんなことが価値になっていくと思います。
時間的な余裕があるからこそ、
面倒くさいことをあえてやってみる
っていうのもいいのかなって。
石川
たしかに、こういう場所なら余裕がありますよね。
というか、車で荷物を持ち込めるだけでも
すごいことだと思います。
いや、今日は、いろいろ驚きました。
──
(笑)
石川
こういうテントサイトがあって、
お金も払って泊まるっていうのが
ほんとに人生初の体験で。
しかも最近はこれがカルチャーとして定着してる
っていうことにもびっくりしましたね。
ぼくはこれまで
車などが入れない場所に歩いて行って、
そこには当然ホテルなんかなくて、
テントで寝ざるを得ないから、
テントで寝るしかないなあ、
というような人生をずっと送ってきましたから。
──
石川さんは高校生のときに、
インドとネパールに一人旅にでかけたそうですが、
安全が保証されてないそういう場所に
いきなり飛び込めたのはなぜでしょう?
石川
それは、読書だと思いますね。
中学生ぐらいから、植村直己さんとか、
さっきも話した野田知佑さんとかの、
アウトドアや探検、旅の本を読んでいて、
そこには、山登りのたのしさとか、
野宿のおもしろさみたいなことが
書かれていたんですね。
山のなかに入って、テントで寝て、
カヌーで川下りして、川辺でテント張って、
というような話を読んで、
自分でもそういう旅をやってみたいと
自然に思うようになったというか。
小杉
ああ、なるほど。
石川
ただ、それは、こういう
キャンプ場で過ごすこととは、
ぜんぜんジャンルが違うっていうことが、
今日はよくわかりました(笑)。
小杉
どちらも重要だと思うんです。
登山とか冒険とか、そういう行動のなかには、
やっぱり生きる本質がつまっていると思うし、
キャンプ場のキャンプは安全ですけど、
やっぱり自然のなかでの
本質的な冒険なくしては語れないというか。
なんかそこは、一緒に、同時に、
考えていかなきゃいけないこと
なんじゃないかなという気がします。
──
これからも考えていきたいです。
今日は、ありがとうございました。
(次の対談につづきます)

キャンプ場であれこれ思った
							ほぼ日キャンプチーム
							今日の雑感コーナー

なんか、キャンプに行くといろいろ思いますよね。
ほぼ日キャンプチームも、あれこれ思うし、
誰かに話したくもなるし、写真も撮ったりするので、
そういうのを載せておくことにしました。
みんなで書くよ。外部スタッフも書くよ。
いっしょにキャンプしたらチームだからね。

テントの光と池に映る姿が美しくて。
							今日の担当:志田(ほぼ日)

夜。食事を終えて、
それぞれ張ったテントに戻っていく。
テントから放たれる光と
池に映る姿がとても美しくて、
昼間とはまた違った景色を見せてくれた。

テントの中で、どんな時間を過ごしているのだろう。

この「Why Camp?」を通して
自分自身にもキャンプに何を求めているか
考え続けているけれど、
まだ答えは出ないまま。

今は自然の中やテントで過ごす時間が
より心地よいものになるように、
少しずつやり方を覚えて整えていこうと思う。

どんな飯でもキャンプで食うと。
							今日の担当:植田(調理係)

私は飲食店でがっつり厨房に入っていた経験があり、
今回、調理担当。
店で当たり前に使っている調理器具たちはなく、
限られた器具で作ることの大変さを痛感。

寒かったこともあり、
温かい料理を出せて好評だったのは素直に嬉しかった。
改善点はもちろんあるが‥‥。
どんな状況でも常に
ハイパフォーマンスができるようにしないと。

ただ一つだけ言えることがある。
どんな飯もキャンプで食うと、
それはミシュランの星付きになる。
改善点、反省点とか吹っ飛ぶくらい美味くなる。
やっぱキャンプ最高。次のキャンプは何作ろうかしら。
2023-08-25(fri)

STAFF

編集 : 金沢 俊吾
動画撮影 : 石渡 樹
撮影協力 : 植田 慧祐