第18回 《 今朝の話 》 |
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“あと5分だけ…”
あれ? なんだか嫌な予感。
10:44 飛び起きた。
…いける? いけるかな?
水をパシャッと顔にかけ
さささささっと歯をみがく。
ポットに入ったコーヒーに豆乳を入れ温める。
テーブルの上の甘いパンを2口頬張って
“きのう着たけど…まあいいか”
急いで着替え タオルや下着をバッグの中へ。
あっためすぎたコーヒーを
ふーふー さまし飲みながら
次の動作はなにが正解だったっけ…
フリーズしてる場合じゃない
コートと帽子を奪うように手にとって
10:56 小走りで家を出る。
パシャーン パシャーン
起床から20分後
あたしはめでたく水の中にいた。
水泳教室に通い始めてから
早いもので2年半が経つ。
中学・高校とプールがなかったから
水着を着るのは実に20年ぶりだった。
幼稚園から小4まで水泳教室に通っていて
クロールなら いつまでもどこまでも
泳いでいられるくらい 大の得意で自信があった。
20年のブランクを考え体験レッスンでは
婦人初級クラスに入ることにしたが
正直物足りないだろうなーと思っていた。
しかし あたしは撃沈した…
文字通り 沈んだのである。
15mで立ってしまった悔しさとショックで
最初は週2で通っていたが いつしか忙しくて週1に。
それでも1年後には
婦人初級から婦人中級クラスに上がった。
小さい頃から どうしてもお尻がプカッと浮いてしまった
平泳ぎも いまではスイーッと らくに泳げるようになった。
クロールは 持久力がなく あの頃のように
いつまでもどこまでもというわけにはいかないが
フォームはずいぶんよくなってきたようだ。
今日は背泳ぎを習った。
いまの流行は小指から入水するのではなく
《水面を手の甲でパシャッと音がたつように叩き
一瞬とめてから水の中で向きを変え力強く掻く》
というものらしく その動きを特訓した。
いままで背泳ぎは呼吸がしやすいから好きだったが
この掻き方だと顔が少し潜ってしまい苦しい。
手と一緒に 息継ぎ方法も習得しなければ。
水泳にはその時々で流行がある。
こうやって新しいことを特訓し
身に付けるのは たのしくうれしい。
母と同じか それよりも年上の人たちが
陸上で見るよりも なぜかうんと若々しく
元気にみえるのは 新しいことにも挑戦する
前向きな意欲の表れなのだろうか?
それとも水面のキラキラ効果?
『お若いお方』そうよばれながら
気持ちの面ではとてもおよばない。
年を重ね 婦人クラスの皆さんくらいになった頃
負けずにキラキラしていたいから
細く長くあたしも泳ぎ続けていこう。
カットソーの袖のシミ。
シミにそって刺繍をしていたら
ヒラメのような形になっていた。
プールに入り コースロープをくぐるため
いちばん最初にするのは潜水泳法。
その時必ず思い出すのは
ヒラメが砂に身を潜める画。