HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
 
お直しとか
 
横尾香央留
 
 第20回 《 一日一外出 》

今年の決めごとの1つだったのに
2日連続でやぶってしまった。
偏頭痛。ここまでひどいのはひさしぶりだった。
1日め ピーク時は左目の奥から左後頭部まで
まるで心臓が矢になって突き刺さってるみたいに脈を打つ。
『あーつらい』『あ−いたい』
身体のなかから悪いものを吐き出すイメージで
口に出していってみるも変わらない。

2日めの夕方にはだいぶよくなり
のっそりそろり起き上り 薄暗いリビングへ。
こんな時間に寝間着姿で髪もぼさぼさ 。
些細な今年の目標すら達成できない自分が
なんだかとても情けなくなり悲しくなる。
カーテンを閉め 電気より先にテレビをつける。
こんなときは教育テレビに限るのだ。

小学生の頃は 学校を休むとテレビの前に布団を敷き
午前中はうつらうつら教育テレビを見続けた。
それだけが 病弱の特権だと思っていた。
大人になってから 再び教育テレビを見始たのは
会社を辞めた直後だっただろうか。
再放送のドラマとともに日が暮れてしまった日には
“自分はダメ人間だ…”とひどく落ち込んでしまうのに
教育テレビだと なんだか許されるような気がしていた。

こんな時間に教育テレビを見ている人
他にもいるのだろうかと思っていたら
すぐ近くに高山さんがいた。
高山さんのホームページの日記には
教育テレビのことがよく書かれていた。
『電話がかかってきてしまい
 “おじゃる丸”の結末がわからなかった』
という内容の日記を読んだ日には
“答えられるのはあたししかいない!” と
得意気にメールをしたこともある。

高山さんの花柄のカーディガンには
穴があいていて そこから本体の花柄に
よく似た花を編み 咲かせた。

このカーディガン 袖を通すよりも肩にかける方が
高山さんっぽい気がするのはなぜだろう。
そうやって着ているところを見たんだっけ?
高山さんも床に伏してることが
度々日記に書かれていたからだろうか。
もしかするとそういう人に
教育テレビ好きが多いのかもしれない。

“いいなー教育テレビはー” なんてのんきにみていたら
ともだちのつくっているアニメーションが始まって
“やばい シャンとしなきゃ!”と背筋を伸ばすものの
見終わったらすぐに “まぁ 今日ぐらいいいか” と
床暖房でゴロゴロしだすのであった。
教育テレビはおもしろい。
いまはEテレなんて言うみたいだけど
まだまだそんなふうには呼べそうにない。

 
 
2012-03-05-MON
 
 
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写真:ホンマタカシ
デザイン:中村至男