ヨリス |
例えば今だと原子力のことを一生懸命ネットで見ても、
混乱するばかりで、なにもわからないんですよね。
ここにもし誰か1人、
「ゼロから自分はここを調べて
勉強しようと思います」と言って、
その過程を全部ネット上で見せてくれたら、
これは本当に今、資産になるのかなと思います。
私が今イギリスでやってる金融ブログも
たぶん、日本での原子力に対する姿勢と
ちょっと雰囲気が似ていて‥‥。
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糸井 |
ああー。
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ヨリス |
「お金は安全だと、
信用してくれと言ってたじゃないか。
あなた方がこの安心なはずの
金融システムをぶち壊しにした」という、
ものすごい怒りが‥‥。
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糸井 |
似てるわ、確かに。
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ヨリス |
で、そこで怒っちゃうと、
学べなくなっちゃうんですよね。
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糸井 |
そして、怒られたら、
立場を固くするしかないんですよね。
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ヨリス |
そうです、そうです。
例えば、軍の人に取材すると、
「いや、軍としてはこうです」
って話しか出てこないんです。
でも、軍を辞めた人に話を聞くと、
「いや、あなたの言うことも一理あります」
と、話が変わるんですよね。
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糸井 |
はいはいはい。
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ヨリス |
議論がまるで戦いみたいになっちゃう。
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糸井 |
スキを見せるとつけ込まれて、
自分が倒されるというふうにも。
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ヨリス |
そうですね。
そうなると、なにも学べない。
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糸井 |
あのう、本当は誰でもフェアプレイが好きなんです。
フェアプレイが好きで、
相手を尊重したいと思いながら議論をするってことは、
誰でもできるはずだと思うんですけどね。
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ヨリス |
今、ここで、私と糸井さんがやってるのも、
要はどういう対話をしたいかという
やり取りができてるんですよね。
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糸井 |
そうですね。
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ヨリス |
で、相手に問い詰めるような感じがまったくない。
これがいいんですよね。
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糸井 |
うん、ぼくはこういう一生を送りたいです(笑)。
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ヨリス |
私もです(笑)。
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糸井 |
ヨリスさんは、今イギリスの日刊紙で
金融の話を連載されているそうですが、
それはどのくらい続ける予定なんですか。
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ヨリス |
2年ぐらいやりたいなと思ってます。
まず2年間、私がゼロからはじめてみて、
「金融のことなら、ある程度は語れます」と
言えるぐらいまでになったら、
人を10人集めて、それぞれの人に
1テーマずつやってもらいたいなと思ってるんです。
原子力のテーマを追いかける人、
砂漠化を追いかける人、
温暖化を追いかける人。
それができたらいいなと思っています。
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糸井 |
いいですねぇ。
実現すると思いますよ。
今から1人でやろうと思ってるんじゃなくて、
もうすでに10人と言ってるところが実現性を感じる。
スーパーマンになろうとしてないじゃないですか。
だから、ノウハウを渡せるし、育てられるし。
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ヨリス |
そうなんです。
ありがとうございます。
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糸井 |
ゼロからなにかをはじめるときほど、
そういうふうに、ひとつひとつを
現実的にとらえていくことが大切なんですよね。
ぼくは、2011年の3月に
ゼロから1を作り出すワークショップというのをやったんです。
そのとき、とても似たことを考えていました。
そのワークショップでは、
たまたま前後に座った1人と1人をセットにして、
お互いを取材し合うっていうことをしたんですね。
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ヨリス |
なるほど。
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糸井 |
取材するという立場もなったことないし、
取材されるって立場もなったことないし、
両方初めてのことを交互にやってって。
で、みんなに1時間か2時間ぐらい、
どこに行ってもいいから話してきなさいと。
で、帰ってきたあと、みんなに
「その知り合った人とハグをしましょう」と言ったら、
ウワーッとなったんです(笑)。
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ヨリス |
ああ、いいですね。
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糸井 |
よかったですよ、とても。
なにを知ったかじゃなくて、
関係ができたこと自体が、
なにかはじまったってことだと思ったんです。
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ヨリス |
おもしろいですね。
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糸井 |
もうひとつ、金融と全然関係ないけど、
お金つながりってことでいうと
別のワークショップではこんなこともしました。
「ポケットの中から100円を出しなさい」と言って
100円を出してもらって、
「今から15分あげるから、どこかに捨ててきなさい。
で、捨てた感想を述べなさい」って言ったんです。
捨てたとき、どういう気持ちだったかって聞くと、
誰もそんなことしたことないから、
「ちょっと気持ちよかった」とか
「ドキドキした」とか、
感想がとてもおもしろかったんです。
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ヨリス |
へえー。
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糸井 |
全部正解だと思ったんですけど、
不正解がぼくはいくつかあると思って。
あとで取れるように電話ボックスの中に置いたとか、
ジュースを買って飲んだとか、
それは捨てたとは言わないんじゃないかなと。
でも、たぶん、そっちのほうが
ジャーナリスティックな態度だったんだろうな(笑)。
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ヨリス |
そうかもしれないです(笑)。
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糸井 |
やっぱり、一番ステキなのは、
「気持ちよかった!」っていう。
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ヨリス |
なんでそんなに気持ちいいんですかね。
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糸井 |
やっぱり縛られてるからでしょうね。
なんだかわからないものに縛られてるんでしょうね。
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ヨリス |
ああー。
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糸井 |
それから、マイナスのことをするっていうことを
肯定するのは、知性がないとできない。
十代のころに不良がとても魅力的に見えるのも、
きっと、縛られてるものから
解き放たれている存在だからでしょう。
そういう人間理解をしといたほうが
いいですよね(笑)。
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ヨリス |
なるほど。
そういえば、日本に来るときの飛行機の中で、
自分の席の目の前についている、
映画を観たりゲームで遊べたりする機械が
壊れてたんですね。
あ、壊れてる、残念、と思ってたんですけど、
20分ぐらい経ったら、
「あ、選ばなくていいんだ。いやあ、これは楽だなあ」
って思いました(笑)。
今までは、飛行機に乗ったら
その機械でなにかを選ばなくてはいけない、と
無意識に縛られていたんですね。
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糸井 |
世の中そんなことだらけですね。
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ヨリス |
本当に、そう思います。
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糸井 |
おもしろいね。
そういう当たり前だと思っていたことが、
実は思い込みだったことに気づく想像力のことを、
昨日ぼくの知り合いがうまいこと言ってたんです。
「想像力の反射神経」って。
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ヨリス |
そう、ちょっとスポーツみたいですよね。
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糸井 |
ヨリスさんも、そうとう
「想像力の反射神経」がいいと思う。
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ヨリス |
ありがとうございます。
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糸井 |
いや、ありがとうございました。
ヨリスさんと知り合えて、うれしかったです。
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ヨリス |
本当に素晴らしかったです。
ありがとうございました。 |
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(糸井重里とヨリスさんの対談は
これでおわりです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。) |