Lesson933
自分を出す
2019-07-31
「自分を変えなきゃ」、と思ってる人が多い。
悪いとこ直そうとか、
自己分析とか、自己改革とか、成長とか。
でも、その前に、
「自分を出す」
でいいのにな、と私は思う。
生の声をあげる、自分が想うようにやってみる。
分析もしなければ、変えもしない、
「素の自分を表現する」。
けっこう解放される、これ。
新米の頃は、私の未熟さもあって、
文章表現教育現場で、
「いちばん伝えたいひとつを、
ただ自分の中から出せばいいだけ、なのに、
いったい何をなさっているのだろう?」
と思うような、
かなり迷走する生徒さんもおられた。
いまはそうならないよう事前にナビゲートするので、
ほぼ全員、表現できるようになったのだが。
私がやっているのは、「表現」であって、
テーマが自分についてのときは、「自己表現」であって、
これは、自分探しとは違うし、
自己分析とも、自己PRとも違う。
カウンセリングとも全然ちがうし、
ましてや自己啓発とは別物だ。
誤解を恐れずに言えば、
「ただ出すだけ」なのだ、表現は。
もともと自分の中にある想いを、
「考える」ことで引き出し、ピタッ!とくる言葉にし、
スポーン!と外に出す。
ただそれだけで、超気持ちいい。
ただささやかな本心が出せた、それだけで、
心底解放され、しばらくイキイキできるほど嬉しい。
これが、「書く歓び」だ。
「ただ出すだけ?」
そう、表現の原点は、
表現したいものを外に表せた、という純粋な解放感。
基礎教育では、ここがとっても大切だ。
「自分は何が向いてるか、どうあるべきか」、
と探さない、分析もしない。
医療ではないのでカウンセリングのように治療もしない。
にもかかわらず、いざ文章を書く段になって、
自分と向き合ったとたん、無自覚に、
「内省する人」、
自分の悪い所にフォーカスしては、反省してしまう。
「自己改革しようとする人」、
書き上げる制限時間内にできるわけもないのに、
自分の悪いところを直そうとしていたり、
時間内に成長を遂げて、良い人間になろうとしていたり。
「改竄する人」、
こんなダメな自分を書くわけにいかないからと、
良い人に見えるような内容にすりかえ、虚勢をはる。
悪い所も表現では御宝なのにもったいない。
「忖度する人」、
自分の本心そっちのけで、
この場ではどんなことを書けば喜ばれるのかと、
まわりの顔色をうかがい、そこに奉仕しようとする。
そんな風に、書くシーンで気苦労をして
疲れてしまっている人も少なくないんじゃないだろうか。
そうじゃなく、伝えたいものを見つける! 出す!
自分を出すことを、
試したり、鍛えたり、たのしんだり、しないうちに、
いきなり就活で自己分析とか、自己PRとか、
かなりハードルの高い、ひねりのある書くことを求められ、
これが書くことかと辛くなってる人もいるんじゃないか。
ぜひ、それまでに「素の自分を出す」よろこびを。
自己満足でできる、人を傷つけない範囲の、
ちいさなよろこびからでいい。
1ミリずつ、コツコツ試して、味わって楽しんでほしい。
「ただ出すだけ」、それでどうこうしようとしない。
なのに人は、「書いた、出せた。」ことで、
わだかまりが昇華されて人間関係が改善したり、
考えが進化したり、自立心が芽生えたり、
自然に前に進んでいる。
成長しようと画策してもできなかった人が、
ただ表現する、それだけで無自覚に成長していく。
「自分を表現する」
これは、初歩的なようでいて、
いまを生きるおとなたちに、実は足りてない、
必要なことだと、私は思う。
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想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
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おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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