おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson988
想いの居場所

あんまり深く考えず、

「もう歳だからソロソロ‥‥」

「若い人に譲ってあげたら」

などと、まわりにうながされて、
あるいは自分でそうするもんだと思い込んで、
何かを辞めてしまう、
ということはないだろうか?

手放す前にちょっとだけ考えてみてほしい、
“人生100年時代の自分の居場所”を。

とくに自分が100歳になったとき、

「おいしいね。」
「哀しいね。」
「嬉しいね。」

そんな想いを共有できる
自分の居場所はあるだろうか?

…………………………

86歳の母が、
パッチワーク教室通いを辞めるというのを、
とめて本当によかった。

「いけん、おかあちゃん、やめちゃあいけん!」

「長年続けてきた趣味をたった1つやめただけで、
ガクッとチカラを落としてしまった老人のことを
テレビでやってたよ。
持ち物を準備する、化粧する、
バス停まで歩く、帰って荷解きをする、
そういう前後の名もなき作業がごっそりなくなって、
すごい量の運動がなくなるって!」

「私やお姉ちゃんの子供のころの服の布や、
亡くなったおばあちゃんの着物の布や、
おかあちゃんの歴史と愛情がつまっとる、

パッチワークは、
おかあちゃんの心が表現できるものじゃろ!」

あのとき私は、必死に、泣きそうになって、
母をとめた。

(そのときのことはこちらをクリック
「もう歳だから、何かを諦めようとしている人へ」
「もう歳だから、何かを諦めようとしている人へ2」

あの日以来、母は、
電話をかけてくるたびに、
自分からイキイキとパッチワーク教室の
話をするようになった。

つい、おとといも、嬉しそうに、

「きょうは、ともだちが、お菓子を焼いてきてくれた。」

ともだち!

びっくりした。
母は、それまで1回も、「ともだち」といういう言い方を
したことが無かったからだ。
「パッチワーク教室の人」「私より若い人たち」
と、距離を置いた言い方しかしていなかった。

それだけではない。

「いまもパッチワークをしょうたんよ。
クリスマス用のこんなんを作りょうるんよ。」

と創意をあらわにするようになった。

あの日まで、「歳とって思うように作れない」
「おもしろくやれない」と言ってたのに、
人が変わったようだ。

「やめんでよかった。」

母はかみしめるように言う。

「やめよう思うとったけど、
アンタにやめちゃあいけん言われて」

と、そう言う母はとても嬉しそうだ。

コロナ禍で、肉親・親戚すら行き来がなくなったいま、
唯一の外出、唯一の仲間と触れ合う場が
パッチワーク教室だそうだ。

それだけでなくパッチワーク教室は、

おなじお菓子を食べて “おいしい” と、
作品がしあがって “嬉しい” と、
おたがいの作品を見て、“あなたらしい” と
数々の想いを理解・共有しあえる場、

母の「想いの居場所」なのだ。

そういう場を母から失わせないで本当によかった。
あとから考えたら、母をとめるチャンスは
たった1回、あの時ぎり。
とめなかったらと思うとぞっとする。
あの時とめなかったら、私は一生後悔しただろう。

「高齢でもだいじょうぶ! ここに居ていい。」

母は、だれかに切実に、そう言ってもらいたかったんだと、
いまならわかる。

母は、“気がね”をつのらせていた。

歳をとると、かつてのように人の役には立てなくなる。
それだけでも、肩身が狭い人もいる。

さらに、日常生活でも、
人に手伝ってもらったり助けてもらったりが増えてくる。
「受けるより与えるほうが幸い」なのだ。
母のように与えるほうに歓びを感じて生きてきた人は、
人に何かしてもらうたびに、
ますます肩身が狭くなる。

その場が大事だからこそ、

想いの居場所だからこそ、

「この先、歳とって、
場を濁すようなことがあってはならない。
まだ何も起こっていないうちに、きれいなうちに、
やめなければ」

と、母は勝手に “気がね” をつのらせて、
もう身の置き所がなくなる寸前だったのだ。

自分の気持ちよりも、人の気持ちを大切にする母らしい。

「自分はもう、ここに居ないほうが、
みんなにとって幸せなのではないか。」

そんなふうに思いつめた人には、だれかに
「ここに居ていい」と言われることがチカラになる。

「娘に、辞めないでと泣かんばかりにとめられた」
それは母にとって充分に「ここにいる理由」になったのだ。

理由ができて、肩身の狭さが取っ払われて、
母はいま、イキイキと場に身を置いている。

「人には行く場所と、帰る場所が要る。」

行く場所は、仕事、学校、ボランティア、趣味
目標にむかって仲間たちと励む場だ。

帰る場所は、家族、恋人、友人など、
素の自分のままでいても受けとめてくれる場だ。

家族は、行く場所にはなってあげられない。

86歳の母に行く場所があって、私も幸せだ。

人生100年時代、
100歳になった自分に行く場所と帰る場所はあるだろうか?

居場所というとハードルが高いが、
行く場所と、帰る場所、それぞれ、
まずはたった1人いればいいんだと思う。
たった1人いるだけで、まるで世界は違って見える。

「想いの居場所」

想いを共有できる場と人を見失わず、
大事に生きていきたい、と私は思う。

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中高生のための表現教室

伝わる・揺さぶる!文章を書く
インターネット時代、
自分の想いを文章で人や社会に伝え、
想いに沿った進路や人生を切り拓いていくチカラは、
中高生にとっても欠かせません。
自分の頭で考える力・書く力がつく!
感動のオンラインライブ授業です。

11月28日(土)13:00-17:00
オンラインライブ講座

お申込み・お問い合わせはこちら➡
https://t.co/mMx6uz0wbT?amp=1
主催:枚方市立中央図書館


【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
という志に共感しました。
2時間×12コマで、
文章表現の本格的な基礎づくりから始まって、
相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

………………………………………………………………………

「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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