Lesson992
飲み食いをとられたら
コミュニケーションできませんか?
2021-01-20
「新年会がないから、
今年は、みんなに会えない。」
妙な言葉だ。
コロナ禍でこう言う切なさは、よくわかる。
でもここで負けてしまってはいけない。
宴会をとられたら、会えないのだろうか?
料亭をとられたら、会議はできないの?
ゴハンしながらでないと、じっくり話せない?
「飲み食い」と「コミュニケーション」が
がっつり結びついた習慣から、
私たちは自由にならないといけないのかもしれない。
「飲み食い」は、
料理人や生産者に敬意を持って、
黙っていただき、味を堪能する。
「人と人との交流」は、
たとえコロナ過で飲食を介せない期間でも、
色んなバリエーションで豊かに楽しめるように。
私たちは新しいやり方を
編み出すチカラを持っている。
…………………………………………………………
今年の正月は初めて実家に帰らなかった。
やってみると予想外に平気だった。
それどころか満たされた想いがある。
それは、
「伝えたいことが伝わったから。」
母に小包を贈った。
想いを込めた。
まず「想い出」をつめた。
母と行った富士山の目の前の温泉、
海が広がる絶景ホテル、
溜息が出るような秋のいちめんの紅葉‥‥
などなど、いままで家族で旅行してきて、
楽しかった「写真」をコラージュしたり、
大きくひきのばしたりして、まずつめた。
それから「美容」。
母が人生でいちばん肌がスベスベと
超気に入ってくれたシートパックもつめた。
そして美味しくてカラダにいい「おやつ」。
小腹がすいたとき、口さみしいとき、
小さなものを色とりどりに。「お年玉」的なものも。
言葉をそえて。
母から、
「元気が出たー!!!!!」
とすごく嬉しそうなはずんだ声で
電話がかかってきた。
あの旅行も、あの景色も、楽しかったねと。
いまお茶を入れて美味しいおやつをいただいて
なごんだんだと。
コロナがあけたら、また旅行いこうね、と。
まさにまさに、
いまコロナ禍で会えないけれど、
楽しかった日々を思い出して、
つらくなったら美味しいものでも食べてなごんで、
きっとまた会えるから、
その日を楽しみに元気でいてね、と。
伝えたかった想いはまんま、母に伝わった。
通じ合えたら人は満たされる。
大事なことは、伝えたい時、伝えたい人に、
まずしっかりと、
「想いを表現することだ。」
電話でも、小包でも、手紙でも、その合わせワザでも、
見えない想いをカタチに表せたら、
ただそれだけでも嬉しいものだ。
小包を、考えながら、工夫しながら
少しずつつくっていく時間は、私にとって、
まさに自分の想いをカタチに表す時間だった。
とても満たされた。
考えたら私たちは、
コミュニケーションと言えば、
「飲み食いしながらしゃべる」
そこに頼りきって来た。
家族や友人と親しむにも、
結婚を披露するにも、
同窓会、新人歓迎会、送別会も、
打ち合わせも、密談も、相談も、
そして、お葬式をする際にも。
飲み食いなら、どんな人とも、
よりラクに、よりはやく、うちとけやすい。
でも、いまコロナ過で、
飲み食いしながらしゃべるが思うようにできない時、
「食」と「コミュニケーション」を別々に楽しむ方法も
身に着けたい。
まず、「会話のない食事は寂しい」という先入観から
いったん自由になって、
「黙ってする食事は豊かだ。」
と仮定してみる。
ひとりひとりが孤独に食に向き合えば、
しゃべっていたときには気づけなかった、
食感や、歯ごたえ、香りに気づける。
味を堪能できる、季節感も楽しめる。
料理をつくった人の想いを理解したり、
食材の生産者を尊んだり、
自分を食育するいい時間だととらえてみる。
そしてコミュニケーションは、
「想いが通う(かよう)こと」を第一に考えたい。
飲み食いしながら4時間、5時間、しゃべったって、
想いがすれちがったまま、
お互い自分を偽ったままならストレスになる。
でも、電話の短いやりとりでも、
想いが通ったら、人は満たされる。
「スポーツ」をする人は、
例えば、サッカーをする学生に、
たびたび教えられるのは、
サッカーは言葉を超えた
コミュニケーションの手段でもあることだ。
海外で差別を受けた日本の学生が、
サッカーを通して、自分を表現し、仲間を理解し、
通じ合えて、のりこえた体験をよく耳にする。
サッカーをする人なら、たとえ「新年宴会」をとられても、
「初蹴り」で通じ合える。
「音楽」をやる人なら、
例えば、ピアノとギターを合わせることで、
想いを通わすことができる。
「ともに歩く」、
マスクをつけて、少し離れて、淡々と一緒に歩く。
ただそれだけでも、
相手の歩調を感じたり、相手の背中を見たり、
おなじ景色に立ち止まったり、
知らず知らずに歩調が合ってきたり、
無言だからこその、新たな気づきがきっとある。
そして私には、「文章表現」がある。
2020年を振り返ると、
オンライン授業で、その人、その人の、
人生に立脚した心底の想いに触れ、
深く心揺さぶられ、
そのオンラインの場にいるたくさんの人と通じ合えた。
幸せな、満たされた想いがまず蘇る。
そんなふうに人は、自分の「好き」に立脚して、
新しい人とのコミュニケーションの取り方を
編み出していける。
最初はうまくいかなくても、
それは習慣がないからだ。
コロナ禍があける頃には、また、
人と飲んだり食べたりしゃべったりできる。
さらに、その頃には、
新しいコミュニケーションのやり方も習慣づいて、
豊かに使い分けていけると私は思う。
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録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日〜)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
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相手に通じる文章になる!
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『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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