第2回
不思議の国、ニッポン |
糸井 |
日本って、こういうところが
不思議だなあと感じる部分はありますか。 |
サンコン |
あのね、最初に思ったことは、日本人、
外見に相当こだわってますね。
ヒゲ生やしたり、髪型が少し違うだけで、
ものすごく大きな違いみたいに言われる。 |
糸井 |
それ、他の国では感じない? |
サンコン |
全然感じない。 |
糸井 |
たしかに髪の長さとか、うるさく言いますね。
小さいムラ社会でみんなが同じように
暮らしてる、という気持ちが、
前提にあるんでしょう。 |
サンコン |
あと、日本は、アメリカの影響大きいね。 |
糸井 |
韓国もそうでしょう? |
辺 |
ええ。宗教的な影響もありますし、
朝鮮戦争に参戦した米軍は、
いわば恩人ということで、頭が上がらない。
日本の場合は、逆に占領されたという形で
頭が上がらないわけですが。
いずれにせよ、アメリカに影響を
受けてるという共通点はありますよね。 |
サンコン |
アフリカの男の子たちに聞くと、
たとえば六本木のディスコなんかに
行くでしょう。
日本の若い女の子たち、
アメリカ人とアフリカ人とでは、
コロッと態度変わるんだって。 |
糸井 |
ほお。 |
サンコン |
日本人の頭の中、
黒人はみんなアメリカ人なんです。
それで、アメリカの黒人たちはカッコいいって。 |
糸井 |
じゃあ、「ギニアだ」と言うと? |
サンコン |
女の子、ガッカリするんだよ。 |
糸井 |
不思議ですねえ。 |
サンコン |
だから日本人、外見にこだわってるなぁと
思うんですよ。 |
辺 |
外見と言うか、「体裁」でしょう。 |
サンコン |
そうそう。 |
辺 |
プレゼントするときも、
中身より包み紙にこだわったりね。(笑) |
サンコン |
ピョンさんの言うとおりよ。
僕も、すごくきれーに包んでる贈り物を
もらってね。相手の人、
「つまらないものですが」って。
えっ、日本人、つまらないもの
プレゼントするんだ!? と思った。 |
糸井 |
そりゃ驚きますよね。
「そんなものを、わざわざ渡しに来たのか」。 |
サンコン |
外側から見たら、
「これはすごいもんだ」と思っちゃうから。
で、開けて見たら……。 |
糸井 |
ほんとにつまらなかったりして。 |
サンコン |
言葉どおりだった。(笑) |
辺 |
要するに、プレゼンテーションなんですね。 |
サンコン |
そう。だから人の場合も
プレゼンテーションで、スーツとか髪型とか、
そういうことが大事になるの。
それから日本って、
世界で一番「見て見ぬふりの国」なんですよ。 |
糸井 |
世界で一番、ですか。 |
サンコン |
そう。日本人、見るのうまい。
でも見ていないことにする。それ世界一。 |
糸井 |
そのあたり、韓国ではどうですか。 |
辺 |
見て見ぬふりはできないですね。
逆に言うと、非常におせっかいなんですよ。
喧嘩があると、必ず誰かが止めに入りますしね。
日本では「君子危うきに近寄らず」
「火中の栗を拾わず」という言葉がありますね。
韓国人の場合、自分から火中の栗を
拾おうとする。そういう国民性はあります。 |
糸井 |
じゃあ、ピョンさんが日本人を見て、
イラ立つこともあるでしょう。 |
辺 |
それはありますよ。
電車に乗ってて、マナーの悪い若者がいますね。
たとえば向かいの席で女性が化粧をしてたり。
そういうときは見て見ぬふりをすれば
いいんだけど、やっぱり血が許さない。
僕らのDNAというのは、
まさに唐辛子とニンニクのカーッとする血でね。 |
糸井 |
熱い。(笑) |
辺 |
だからつい、ひとこと言ってしまう。
娘からは、「そのうちオヤジ狩りにあうよ」と
言われるんですが……。 |
サンコン |
それはね、僕、ソウルに行ったとき感じた。
ぜんぜん知らない人でも注意する。
絶対、放っておかないの。日本は違うね。
なのに日本人、見るのはすごく見てるんですよ。
鷺宮に住んで最初に電車に乗ったとき、
僕のそばからサーッとみんな逃げて、
誰も近くに座らない。
「えっ、なんで?」と思った。 |
辺 |
私たちは大陸だからかもしれませんが、
そういうことはないんです。
「3A」と言って、世界190ヵ国の中でも、
アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、
これは本来、非常に仲がいいはずなんですよ。 |
サンコン |
そうそう。「3A」、
僕たちも学校で教わりました。
一緒に大きい会議もやったりして、
みんなで手を合わせて発展しようと。
そういう感覚が非常に強いですね。 |
辺 |
だけど日本人は、「国際化」というのは、
欧米と仲良くすることだと思ってる。 |
糸井 |
サンコンさんはフランスにもいらしたけど、
フランスはどうですか? |
サンコン |
フランス、昔、いろいろな植民地もってて、
そういう国の人たち、たくさんフランスに来て、
いっぱいフランス人になった。
だからフランスは外国人がいても、
外国人て感じがないの。 |
糸井 |
サッカーの代表チーム見てても、
フランスとかオランダとか、
いろんな国の出身の人が混じってるんだよなぁ。 |
辺 |
日本のプロサッカーも、
ブラジルなどから帰化した選手が
入ってきてますね。 |
糸井 |
ええ。いいですね。 |
辺 |
僕もそれはすごくいいと思うんです。
ただ、名前まで漢字に変えなくてもいいのに。
「呂比須(ロペス)」とか。 |
糸井 |
決まりがまだ遅れてるんですか? |
辺 |
実際にはそんな法律はないんですよ。
いわゆる「内規」と言うのか、
日本の社会にはどうも、外の人間にはわからない
「そこだけのルール」がある気がします。
たとえば会社なら会社のルール、
相撲界なら相撲界だけのルールとか。
そこが外国人には、なかなかわからない。 |
糸井 |
でも、そうやって囲い込んで
利益を守ってきた人たちが、今、
うまくいってないですよね。
だから逆に、日本人が外国の人の目で
今の日本を見たら、いろんなことが
見えてくるんじゃないかと思うんです。
何人(なにじん)ということに関係なく、
自分たちが一番やりやすい方法、
楽しい方法を選んでやっていく時代が、
もう来てるんじゃないかって。 |
サンコン |
そうなんですよ。
僕、講演で稚内から石垣まで、
日本全国回ってるけど、必ず全部、
満席になるの。外国の目で何考えているか、
一般の人もすごくそれ聞きたいのね。
僕、講演のときいつも
ギニアの民族衣装着るんです。
ステージ降りたら、おばさんたちすごいよ。
みんな僕の衣装さわったり、なでたり。
「あら、こうなってるんだ。あら、あら」って。 |
辺 |
関心がある。 |
サンコン |
そう。その人たち、ホントのこと聞きたいなぁ、
実際に感じたいなぁって、あるのよ。
それで、「それ、いいんじゃない」
とお互いに話し合えればいい。
だけど日本人、いちばん好きな言葉は、
「でも、ここ日本だから」。(笑) |
|
(つづく) |