BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 “外国人? 外国人じゃない?

第2回 不思議の国、ニッポン

“珍しき”仲にも礼儀あり
第3回
せっかちのお国柄
韓国の友達が日本に来たとき、
本場のたくわんを食べたいと言ってね。
糸井 たくわん、ですか。
日本人が韓国に行って、
本場のキムチ食べたいと言うのと同じです。
それで、たまたま立ち食いそば屋に入ったら、
そこにたくわんが置いてある。
で、彼はそばを頼んだ。
ところがたくわんは出てこない。
韓国では、何か頼むと
必ずキムチがついてくるんですよ。
糸井 出てきます、出てきます。
しかも食べ放題で、おかわりまでいっぱい。
それで店の人に聞いたんですって、
「そこのたくわん、もらえませんか」って。
すると、「いや、おにぎりを注文しないとダメ」
と言われてね。
これもさっきの内規って言うんですかね。(笑)
糸井 僕が店の人だったら、
「よし、これからはたくわん、
 タダにしてみよう」と思うな。
だって、商売の大ヒントだもの。
サンコン ギニアも何かごはんを頼むでしょ。
フルーツ、必ず一緒に出るの。
マンゴーとかバナナとか。セットなんです。
韓国でキムチがどっと出てくると、
日本の人は驚いて
「すいません、これ、頼んでないんですけど」
って。(笑)
サンコン 日本人、すぐ勘定のことにいっちゃうからね。
糸井 あ、日本にもあった。水とおしぼり。
これは頼んでないけど出てきますよ。
韓国は水、出さないんですよ。
飲用に適さないし、ミネラルウォーターは
輸入だから、コーヒーより高くつく。
そういうことを知らない日本人は、
「韓国はサービス悪いな」と思うんでしょうが。
サンコン 水、出ないから。
糸井 キムチは出るけど。(笑)
さっき、日本人はヒゲひとつでも
外見にこだわる、とサンコンさんが
おっしゃってましたね。
韓国では若い人でヒゲ生やしてる人、
あまりいないんです。
糸井 あ、そういえばそうですね。
生意気だって言われる。
「年寄りでもヒゲ生やしてないのに、
 この若造が!」と。
儒教の影響があって、
両親や目上の人の前では、
タバコも吸ってはいけない。
サンコン ギニアも同じ。
親とか年寄りの前では
とても丁寧にします。
コップも片手では持たない。
目上の人に対する尊敬の念が強いんですね。
ソウルの繁華街あたりで、
中年と若者が喧嘩してるでしょ。
殴り合いそうな雰囲気でも、
言い合いをよく聞いてると、おかしい。
日本だと「このヤロー」「クソジジイ!」
となるところが、韓国の若者は、
尊敬語で口喧嘩してる。
「おじさんが先に
 肩ぶつけてきたんじゃないですか」って。
そして結局、「生意気なやつだ」
というおじさんの言葉で、
若者が負けるようになってる(笑)。
だから、下手に喧嘩しないほうがいいぞ
となるんです。
サンコン そうそう。
ホームドラマもね、
息子・娘がグレたり親の言うこと聞かないと、
必ず「父、倒れる」の展開で、
子どもたちが反省してすべてが丸く収まる。
これがお定まり。親は子にとっては絶対で、
それだけ威厳があるということですね。
サンコン ギニアもまったくそう。
お父さん、すごく大事。お母さんも大事。
そしてお兄さん、お姉さんと喧嘩しても、
最後は弟が謝るの。
糸井 朝鮮半島まで流れてきたアフリカの文化は、
日本までは渡らなかったのか(笑)。
でも、日本でもかつてはそうでしたよ。
戦後からかな、親が自信をなくして
「ま、いいか」みたいになったのは……。
アメリカ民主主義の影響もあるかもしれない。
ただ、若くてもいい意見を持ってたら
年寄りを追い越していいし、
そこから新しい何かが
生まれることもあるでしょう。
人は平等、という意識は大事だと思いますけど、
私は、親子の関係は決して平等じゃない
と思うんです。
世の中には対等な関係もあり、
同時に上下関係もある。
そこらへんが最近の日本では
わけわからなくなって、親に対しても、
友だちと同じように、「ようよう」
なんて言葉づかいをする。
そんなことしたら、韓国では、
張り倒されてしまいますよ!
糸井 ピョンさん、今、声、裏返ってましたよ。
私も大学生の息子がたまーに、
そういう言葉づかいをすると
カチンとくるもんで。
だから息子も気をつけてますよ。
韓国で講演するとき、
私は日本を反面教師にしてほしいと言うんです。
家庭内の悲惨な事件が多発する今、
日本の悪いところは継承せず、
いいところだけ吸収するように。
日本も、韓国をそういうふうに見てもらえば
いいんじゃないですか。
糸井 性格の違う友から学べ、ですね。
子どもの頃、缶蹴りして遊びませんでした?
糸井 よくしましたよ。
「この指と〜まれ」と言うと、みんな、
われ先にとまりに来るじゃないですか。
ところが韓国人はね、
「この指とまれ」って声がかかると、
みんなが「俺の指にとまれ」と指立てる。(笑)
糸井 人の指にはとまらない。
小さいときからチームプレーが不得意ですね。
逆に日本は、集団性の強い民族で、
サッカーや野球でも、組織プレーがすごい。
そういうところは、韓国も学んだほうがいい。
ただ、そればっかりになっちゃうと、
スポーツも社会も面白くないんだけど……。
糸井 僕は、個人プレーがものすごく好きなんです。
だけど、「あいつがいたから、できたな」
というチームプレーもまた好きで。
つまり、自分に足りないところを
代わりに誰かがやってる、という面白さ。
これからの時代は、
一度個人プレーに走ったやつが
今度はチームプレーの面白さを得るとか、
チームプレーばかりしてきたやつが
個人プレーを学ぶとか、
そういう混ざり方をしていくんじゃないか。
日本人も、いろんな国のいいところを
どんどん真似て、選んでいくようになるのを
期待してるんです。
日本と韓国、こういう違いもあります。
日本人は人との関係で貸し借りを
つくらないようにするでしょう。
常にプラスマイナスゼロにしておきたい。
糸井さんからお歳暮をいただいて、
「これは3千円くらいだ」となると、
こっちもキッチリそれくらいのものを
お返しする。
糸井 はい。
ところが韓国は、貸し借りをつくってこそ、
初めて友人である、と。
サンコン ギニアもそうよ。韓国と同じ。
糸井 共通してるところ、多いですねえ。
サンコン 借りをつくっても、
その場ですぐに返さなくていいの。
あとで倍にして返すとかね。
これは是非、ギニアの場合も
聞きたいんですけど(笑)、
引っ越ししたとき、
日本ではタオルか石鹸持って、
向こう三軒両隣に「よろしくお願いします」と
挨拶に回りますね。
これ、「みなさん方の仲間に入れてください」
ということでしょう。
ところが韓国は逆で、近所のほうから
集まってくる。
「何か不自由なことはありませんか」って。
向こうから「仲間に入りなさい」と
言ってきてくれるんです。
サンコン ギニアもそうですよ。
糸井 もう文化の伝播は
朝鮮半島で止まっちゃった。(笑)
サンコン 新しい人来たら、近所の人、
みんなお手伝いに来るの。
米とかお酒持ってきて、
新しい人の家でごはんつくるんです。
糸井 それはギニアの都会でも田舎でも同じですか。
サンコン そう、「ようこそいらっしゃい」って。
糸井 へえー、じゃあ、ギニアのマンションでも
同じことが行なわれてるわけだ。
サンコン ギニア、マンションあんまりない
ですけど(笑)。
ギニアは本州と同じ大きさでね、人口800万。
隣は遠くても、助け合いはあるの。
ついでに言うと、さっきからサンコンさんは、
話しながら盛んに私の手に触れてるでしょ。
私もそうなんですよ。初対面の人であっても、
こう(サンコンさんの手に触れながら)触れる。
韓国人はどちらかと言うと
スキンシップ民族なんです。
これは相手に心を許してる証拠。
サンコン ほんと、韓国とアフリカ、似てるところ多いね。
僕、韓国料理大好きです。
辛いのもギニアと同じ。
料理と言えば、日本の懐石みたいに
一品一品持ってくるのは、
韓国の人間には耐えられなくてね。
韓国人は性急な民族で、
韓国語で「パリパリ」、
「早く早く」という意味の言葉が
よく使われます。
私も外食するとき、メニュー見て注文したあと、
必ずひとこと「早く持ってくるように!」
とつけ加えます。
糸井 それ、僕の韓国人の友だちも言ってる。(笑)

第4回 ここがいいよ、日本人!

第5回 違いを超えて

2004-05-20-THU

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