BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 “外国人? 外国人じゃない?

第2回 不思議の国、ニッポン

第3回 せっかちのお国柄

第4回 ここがいいよ、日本人!

“珍しき”仲にも礼儀あり
第5回
違いを超えて
糸井 いま話しているような交流、
若い子はスッといける気がするけど、
僕ら以上の年代って、
なんか肩肘張ってて難しいんだよなぁ。
違う文化と接するとき、
何が交流のきっかけになりますかね?
サンコン 僕はね、やっぱり歌。国境がないでしょ。
僕のカラオケの十八番、『浪花節だよ人生は』。
それから『矢切りの渡し』『花と竜』。マジ。
糸井 演歌、いってますねえ。実は演歌って、
韓国の人たちが得意なものですね。
歌、それから食べ物でしょうね。
小さいときに日本人の子とよく喧嘩をしてね。
向こうは私たちがキムチ食べてるもんだから、
「ニンニクくさい」と言うわけです。
そうするとこっちは「たくわんくさい」と返す。
いい喧嘩になるんですよ。
糸井 そういうふうに、お互い、まず言っちゃう。
そのうち時代は変わって、日本人は今、
キムチ大好きになりましたでしょう。
韓国人もたくわん大好きなんですよ。
時の流れの中で、
そういうふうに融け合うものでね。
身近という点でも、食べ物って大きいですよ。
理解のきっかけでしょ。
糸井 ベトナム料理店とか、今、日本で増えてるけど、
そうするとベトナムに
行ってみたくなるもんなぁ。
サンコン 違いはあっても同じ人間、
その違いをお互いに認めるのが大事です。
僕、日本に来て辛かったことあるんです。
テレビに出始めた頃、出演者たちが
「サンコン、今日、顔色悪いね」とか、
飲みに行くと、「何を飲んでも顔に出ないね」
とか言うの、冗談で。
だけどアフリカは肌とか顔色の話しない。
日本人は赤くなったり青くなったり
顔色変わるけど、
アフリカ人、顔の色に出ないから。
糸井 そうだよね。
サンコン 「やっぱり違うんだ、国が」と初めて認識した。
でもサンコン、怒っちゃいけない、
逆に取ったほうがいいと思って、
今度は自分のほうから言ったんですよ、
「今日ちょっと僕、顔色悪いなぁ」って。
そうやってギャグにして、
笑いで吹っ飛ばしちゃうの。
糸井 サンコンさんは、その考え方を
発明したわけですよね。
つまり、お互い違うだけだから、
本当に怒ったらおしまいだ、
仲良くなれるよう切り替えよう、と。
僕のホームページのキャッチフレーズは、
「オンリー・イズ・ノット・ロンリー」
というんです。
これ、英語の文法としては変らしいんだけどね。
たった一つであること、個性というのは
孤独ではない。みんな違うんだと認めたうえで、
わかり合うこと助け合うことが、
これからの時代だと思って……。
サンコン とってもいいキャッチフレーズ。
僕は講演のとき、
よく社会を5本の指にたとえるの。
自分の指、細いの太いの長いの、
みんな形違うじゃない。
だけど一本一本、全部大事なんですね。
離れているけど、それぞれに役目があって、
その役目はどれも非常に大きい。
糸井さんの言うように、
オンリーだけどロンリーじゃない。
糸井 だから、お互いの違いを
うーんと珍しがっていいんですよね。
相手を珍しいと思う場合、
相手にもこっちが珍しい。
日韓がサッカーの試合をやるでしょう。
テレビの前で私は韓国を応援する。
娘は日本を応援する。
アトランタ五輪の柔道で、
ヤワラちゃんが北朝鮮の選手に負けて
金メダルを逃したとき、私が喜ぶそばで、
娘はワーンと泣いてた。
糸井 面白いなぁ。
それで、いいんです。昔の親だったら、
娘に「おまえは唐辛子と
 ニンニクのDNAなんだから、
 韓国を応援しろ!」と言ったかもしれない。
だけど私は言いたくない。
逆に娘から「お父さん、日本を応援しなさい」
と強要されたくもない。そこは、
自分の気持ちに素直なのが一番ですから。
糸井 こうやってお互いに話してること自体が
楽しい……。
スポーツ、歌、それに人間同士の直の対話って、
どんな政治的外交よりも
強力だって気がするなぁ。
  (おわり)

2004-05-24-MON

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