BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 “外国人? 外国人じゃない?

第2回 不思議の国、ニッポン

第3回 せっかちのお国柄

“珍しき”仲にも礼儀あり
第4回
ここがいいよ、日本人!
サンコン 年に1回「サンコン・ツアー」ってあるんです。
「サンコンと一緒にアフリカへ行きましょう」
というの。
糸井 いろんなことしてますね。(笑)
サンコン そのツアーで、日本人のこと、
徹底的に研究しました。
日本人は海外行くとき、みんな必ず
小さな醤油パック持っていくのね。
それとカップヌードル。
糸井 僕も、甘納豆とせんべい、
醤油は絶対に持っていくもん。
あと、お茶。
サンコン ほんとにそう?
糸井 お茶のためのポットまで持っていきますよ。
韓国人もキムチないとダメなんですね。
あと、コチジャンとか。
糸井 やっぱり持っていくんだ。
韓国にも寿司屋があって、私も行きますけど、
韓国人に言うんですよ。
寿司は日本で食べてこそ、うまいんだって。
韓国もいい魚が獲れる。
だけどお寿司屋さんというのは、
ガラガラと戸を開けて暖簾をくぐると
板前さんがイキのいい声で
「いらっしゃいッ」って言う、
あれで「うまいな」という感じがするんだと。
ソウルでガラガラと戸を開けて
「アニハセヨー」とやられるとなんか……。
糸井 力が抜ける?
そう、違うんです。
魚とかシャリじゃなくて、ムードというのか。
糸井 ムードや環境も商品なんですね。
サンコン 日本人、ムードにこだわりますね。
それはいいことです。
僕、日本で勉強したのは「わび」と「さび」。
料理の見た目でも、季節の花とか、
必ず取り入れる。
桜の季節だったら、桜みたいな料理とか。
日本は北海道から沖縄まで
ゴマンと日本酒がありますよね。
そして升に塩をのせたりして飲むでしょう。
韓国人にそれを体験させると感動しますよ。
糸井 韓国の人も喜ぶ?
ええ。そんな飲み方は知らないし、
何しろ韓国じゃ、日本酒といえば
「正宗」だけだと思ってますから。
こんなに近いのに、知らないことが
多すぎますね。
糸井 そんなふうに外国の人に
もっと知らせたらいいことって何でしょう。
サンコン いっぱいあります。着物なんかいいですね。
男の人だったら、作務衣に下駄はいて、
コロンコロン。
「さすが日本男児だなぁ」と思うんですよ。
糸井 不思議なこと思いますね。(笑)
サンコン 日本で一番いいの、義理、人情。
それから演歌の心ね。
僕、青森の龍飛岬に行ったんですよ。
糸井 あ、歌がわかった。
「♪ごらん、あれが龍飛岬〜」ですね。
サンコン 津軽でカモメ見たり、それからリンゴ畑で
三味線弾いてもらったりしました。
寒さ、寂しさ、虚しさとか、
人の別れ、人の愛だとか、大好き。
日本人、ものすごく演歌の世界だと思いました。
日本の音楽では、和太鼓もいいですね。
佐渡に『鼓童(こどう)』という
和太鼓を演奏する人たちがいるでしょう。
『鼓童』の意味聞いたら、
お母さんのお腹にいるときから
聴いてる音なんだよって。鼓動の音。
糸井 お母さんの心臓の音ですね。
サンコン 日本海に行くと、波が岩にぶつかる。
その音も人間の心臓の音と同じなんだって。
そこから日本の音楽のリズムは来てる。
日本人、もともと自然の世界、見て、聞いて、
理解できたのね。
稲刈りの前、実った黄色い穂が風に揺れて、
サーッ、サーッっていうあの音とかね。
糸井 うんうん。
サンコン あれ、風と稲の会話なんだって。
それ聞いて感動しちゃった。
「そこまで感じてるんだ、日本人」って。
糸井 ただ、東京にいる限りは
そういうものに縁がないですけど。
サンコンさんがおっしゃってた
象徴的なものとして、今は廃れましたけど、
民謡が素晴らしいですね。
サンコン それから日本人て、
モノに「命」入れて感謝するのね。
御輿(みこし)でもそうでしょ。
僕たちモノと思ってるけど、
日本人にはモノじゃない、生きてるの。
成田山に行ったら、車にお祈りしててね。
糸井 ああ、お祓いしますね。
サンコン われわれにしたら、車はモノでしょ。
だけど日本人、生きてる人間が乗ったら、
そこにもう、命あるんですね。
糸井 サンコンさんは「大事にする心」に
日本の良さを感じてますね。
それと「静けさ」みたいなことですよね。
私もその通りだと思う。
電車に乗ってますと、一番声の大きいのが
中国人なんですよ。続いて韓国人。
日本人は一番声が小さい。
糸井 あ、そうですか。
大きな声出してるのが韓国人だと、
私、注意しますもんね。
糸井 しますか。(笑)
日本に来たら、日本のいいところを
学んで帰ってもらいたいから。
私は、日本が誇るものは、
秩序だとか礼儀だとか、
サンコンさんもおっしゃってた仁義だとか、
そういうものを含めての文化だと思います。
たとえば阪神・淡路大震災のとき、
みなさん助け合い、
秩序よくやってたじゃないですか。
あのとき、戦後、日本が経済復興して
今日までのし上がってきた底力を
見たような気がしました。
そういう日本の文化、
あるいは美徳というものは、
世界にもっとアピールするべきですよ。
サンコン アメリカナイズじゃないものね。
僕“寅さん”好きなんですよ。
ビデオ48巻、全部持ってる。
(携帯電話を取り出しながら)
ちょっと、これ聞いて。(着信音が流れる)
糸井 わぁ、寅さんのテーマだ。
サンコン 新しい電話に買い換えたいけど、
寅さんの音楽入ってないから、
5年間ずーっとこれ使ってる(笑)。
寅さん、風来坊だけど、心あるじゃない。
今の日本、不景気でみんな苦しいって言うけど、
お金はなくても、自分の中に寅さんみたいな
日本の心はあると思うの。
  (つづく)

第5回 違いを超えて

2004-05-23-SUN

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